私はあれから、自分の仕事に熱中した。
でも、翔と瑠美のことだけは、忘れられなかった。
忘れなきゃいけないと思っても、なぜか、忘れられない。
二人は、きっと仲良しなんだよね。
また、二人は、復活してくれるんだよね。
そんなキモチで、今日も、お店に出ている。
私は、しばらく、あの店に通うのはやめると決めてた。
でもやっぱりふとした瞬間に通いたいなとか思ってしまう。
現実逃避だ、って分かっていても。。。
たまに、翔みたいなダンサーっぽい服装の男の子を店で見かけたりすると、意識してしまうのはなぜなんだろう。
翔は本当に、誰にでも優しいんだろうなぁ。
あれからもう、1週間以上過ぎてる。
でも私はカフェで働くのが一番いい。
夜の街のことは、諦めようと思ってた。
でもあなたは、又私を夜の街に連れ出すのかな。
そのたびに私は甘いカクテルで酔わされる。
カクテルは自分の店で作って出すだけで精一杯。
翔もきっと忙しいんだ。
忙しいんだったらいいんだけど。
あれからメールのやり取りはしているが、お互い逢っていない。
向こうも気を遣ってくれているのかもしれないけど、何だか悲しすぎる。
でも、迎えに来るのも限界があるのよ、きっと。
だからまた落ち着いたら、翔に逢いに行こう、そう決めてた。
最近は朝から夕方までびっちり働くので、本当に大変。
こんなとき、翔がそばにいてくれたらと思ったりする。
でも、やっぱり瑠美さんとのことが気になって仕方がない。
こんなとき思うのは、どうして、こんなに自分は臆病者なんだろう、内弁慶なんだろうって。
もっと、華やかになりたい。
翔からみた私は、地味に違いない。。。。
悲しいことだけど、事実なのかもしれない。
でも一応、рヘしたりしているけどね。
翔は、商売が繁盛してるみたい。
それだけで私は嬉しかった。
翔はダンサーの道があってるって思った。
あの店には、翔がいなきゃやってけないんだから。。。
そんなこんなで、注文をとったり、ドリンクを作ったり、デザートを作ったり。本当にフロアリーダーって忙しいんですよ。
私の夢は、きっと翔もそうなんだろうけど、自分の店を持つことなんです。
私は、日替わりで、フロアに入らせてもらったり、キッチンで働いてたり。
最近は、キッチンの人が増えたからほとんど、フロアばっかりなんですけどね。
まさか、私にとって忘れられない出来事があるなんて思いませんでした。
本当に、この日が来るなんて。。。信じられませんでした。
私はもう、翔とは別れよう、瑠美さんとやってってもらおう、って思ったんです。
翔は私といると苦しい思いをするんじゃないかって。
学生時代に付き合っていた人も、自分勝手だった。
自分のペースに人を持ち込むというか、引っ張り込むというか。
翔は、まったく逆で、ちゃんとあわせてくれる。
ちゃらちゃらしてる風にしか見えなかったけど、凄く気遣ってくれる。
だから悲しい。
不安で仕方ない。
今日はもうちょっとでお昼ご飯なのです。
お昼ごはんは、毎回自分の家で作ってきます。
まかないでもいいんですけどね。
お昼時だから、キッチンは忙しいから。
今日のお弁当は、こないだあの店で食べたロコモコ。
この店でもやってますから、食べに来てください♪
でもこの店ではプレートで出します。
あの店では一品料理だったけど。
自分でロコモコなんてなかなか時間がないと作れないのだけど、
やっぱり自分に余裕がほしかったので、
こういうの作っちゃいました。
「瞳ちゃん、ケーキ作ってきたからこれ食べなよ。最近疲れてるでしょ?何かあった?」
同僚が、心配してくれた。
フロアの子なんだけどね。
毎回毎回、何か作って持ってきてくれる。
時間がないのに、お菓子だけは毎回作ってくる。
私もその子にロコモコを分ける。
てか私も腹ッぺらしだから、かなりたくさん作っちゃうからね。
「ねぇ、瞳ちゃんが休んでる間にね、何かここら辺で有名な男の子が来たんだよ。瞳ちゃんは見た事ないかもしれないけど、超かっこいいの!今日も来るかもしれないよ!なんか女の子たちが騒いでるんだよ!」
そう、昨日一昨日休んだんだ。
でも翔には逢わなかった。
メールとか電話はしょっちゅうしてるんだけど。
でもそんな、別に、そんな有名な子なんて、いくらでもいるじゃん、女の子は確かにそういう子には騒ぎ立てたりするんだよね。
とうとう君もそうなっちゃったか。
まぁいい、同僚だから許す。
私は至って平静を装ったけど、内心焦ってた。
誰?それって。
妙な胸騒ぎを覚えた。
翔は、客相手にそんな騒がないし、温厚だよ。
それに、翔が一人で来るわけないしな。
何かの間違いだと思う。
絶対ありえないと思う。
うん。思った。
たく世の中の女どもは・・・
なんて私まで男みたいなことを思ってしまう。
でも、実を言うと、あんまり翔には店に来てもらいたくないと思った。
やっぱり、こないだのこともあったし、私、本当にもしそういうことがあると、この店やめてしまうかもしれないし。
妙子の言ったとおり、疲れてるんだ、最近は。
本当は翔に逢えないのはつらいんだから。。。
隣で妙子がにやにやしていた。
「ねぇ、瞳ちゃんいい人できたんじゃないの?このぉこのぉ」
「違うって・・・ただ単に疲れてるだけだから・・・最近この店、本当に流行り過ぎてないかな・・・本当、妙子の言うとおり、女性客が増えちゃったんじゃないの・・・?おかしいよ・・・そんな男の子が来る前は、こんな賑わってなくて、ゆったりお茶楽しんでる人とか多かったのに。」
「まぁいいじゃん、楽しいよ、それはそれで。働き甲斐があるじゃん。本当は嬉しいくせに、何そんなに冷静でいられるんでショーね♪羨ましいですこと♪もう1時間とか2時間くらいとかしたら、男の子がふうわり風に乗ってあらわれるんじゃないの?彗星の如くさッ♪まぁ、ショーだと思って楽しめばいいんだよ♪」
ショー??????ありえない。
この子本当おかしい。
「てかその男の子は絶対女の子目当てに来てるんだよ、きっとそうだって♪だからこの店流行ってるんだよ、間違いないって♪とうとう彼女ほしくなっちゃったのかな?!瞳もそろそろ好きな人ほしいんじゃないのかな?でもその男の子は誰にでも優しいから気をつけたほうがいいよ♪」
あああ、店中が誰がその男の子を接客するかになっちゃった・・・
てか、本当に、そいつ一体何者???
店に迷惑なことをしたら、絶対に、店から追い出してやるからな。
今に見てろよ。
何が女の子に大人気だよ。
ふざけんじゃねぇよ。
自分以外の人間をなめくさってるくせにえらそうになぁ。。。
そんなやつに彼女なんかできやしねぇ。
とっとと帰らせちまえ。笑
なんていうのは冗談だけど、店の妨害だけはしないでほしいなぁ。。。
と思いますよね。
翔みたいに堅実ならいいんだけど。。。
休み時間中に、ちょっとだけその人の写メを見せてもらったんだけど、女の子が集まりすぎて、誰が誰だかわからない。・・・一体本当に何者なんだろう?
昼休みが終わって、私はもとさやに戻った。
とにかく、その時はその時。
落ち着いて対応すること、それだけだ。・・・・・