ローマでの国際捕鯨委員会(IWC)中間会合は正常化への結論を持ち越した。捕鯨支持国と反捕鯨国の溝は深いが、妥協案を基に六月のポルトガル総会に向け議論をしっかりと詰めてほしい。
捕鯨問題ほど各国の国民感情を刺激するテーマはない。日本の場合、欧米諸国の鯨類保護一辺倒で妥協の余地のない不寛容さと、調査捕鯨への環境団体による危険な妨害行為にいら立ちが募っている。
会合では事前にホガースIWC議長による「妥協案」が各国に提示されていた。
内容は(1)日本の沿岸小型捕鯨を五年間、日帰り操業などを条件に認める(2)南極海での調査捕鯨は捕獲頭数を毎年20%削減して五年後にゼロとするか、捕獲頭数を大幅に削減して継続−が柱だった。
これにはオーストラリアや米、英などの反捕鯨国が「日本に譲歩しすぎだ」と強く反対した。
捕鯨国の日本は太地(和歌山県)、和田(千葉県)、網走(北海道)、鮎川(宮城県)の沿岸捕鯨の再開は当然で、調査捕鯨全廃も受け入れられないと主張。結局、物別れのまま閉幕した。
両陣営の対立は一九七二年、国連人間環境会議での商業捕鯨の十年間の一時停止(モラトリアム)決議にさかのぼる。捕鯨の全面禁止が強まりIWCは八二年に商業捕鯨の停止を決定。日本は八七年を限りに撤退した。
もっともIWCは商業捕鯨再開を視野に、鯨類資源の評価と適正な捕獲枠を算定するしくみを作ることになり改訂管理制度(RMS)ができた。しかし反捕鯨国の強い抵抗で同制度は見送られた。
両陣営の対立の根は長く深い。だがIWCは鯨類資源の適切な管理に責任を持つ存在だ。双方が譲歩して正常化する潮時である。
反捕鯨国は日本の沿岸捕鯨を認めるべきだ。これはアラスカやグリーンランドなど小規模の先住民生存捕鯨と同じ生業だからだ。
また調査捕鯨は未解明な鯨類の生態などを調べる重要な手段である。最近、豪タスマニア島沖の島でクジラやイルカが浜辺に打ち上げられたとの報道が相次いでいる。反捕鯨国自らが調査することを勧めたい。
日本はこの際、南極海での調査捕鯨の規模を縮小すべきだろう。
会合では悪質な妨害行為を続けるシー・シェパードへの非難声明を今回も採択した。当然の決定だが船籍国や入港地などの当該国は責任をもって取り締まるべきだ。
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