不安の中、海上警備行動＝「身辺に危険」「国際的に孤立」…－海自

　アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で、海上自衛隊の護衛艦が１４日、出港する。武器使用を拡大する新法制定を待たない海上警備行動の発令で、船体射撃や外国籍船の護衛も認められないままの派遣だ。「身辺に危険が及ぶ」「国際的に孤立しないか」。不安の声が漏れる中、海自は日本近海以外で初めて海警行動に当たる。
　海自第８護衛隊所属の「さざなみ」「さみだれ」の護衛艦２隻は呉基地（広島県）を出港後、２、３週間かけて現地に到着する。両艦には、それぞれ海自隊員約２００人と海上保安官４人ずつが乗艦。ジブチ港を中心にイエメンやオマーンの港も拠点としながら、商船や貨物船の護衛に当たる。
　護衛は、日本籍船か日本人が乗船する外国籍船などが対象。防衛省は国土交通省を通じて事業者から希望を聞き、海賊行為が頻発するアデン湾で、船団の前後を護衛艦が挟む形で航行する。海自幹部は「片道１日半から２日かかる。週に２往復が限度ではないか」と話す。
　海賊の監視、警戒の主体となるのは２隻に搭載された哨戒ヘリコプター計４機だ。特殊な訓練を受けた「特別警備隊」の隊員も乗り込み、海賊船が近づけば、護衛艦とともに警告射撃する。赤星慶治海上幕僚長は「海賊行為をやめさせるのが目的であり、高い射撃能力を活用したい」とする。
　海賊は自動小銃やロケット砲などで武装するが、海警行動で自衛官が武器を使用できるのは警告射撃のほか、警察官職務執行法に基づいた「正当防衛」と「緊急避難」に限られる。海賊が船に乗り込むなどした際、どの時点で撃つかは現場の自衛官の判断だ。迷った場合、危害が及ぶ可能性もある。
　政府がまとめた新法には、海賊の船体射撃も盛り込まれたが、現状では、襲われる外国籍船を見ても護衛できない。ある防衛省幹部は「『見殺しにした』との批判は、仮に海賊を撃ち殺した場合の批判よりも耐え難い。孤立するのは明らかだ」と漏らしている。（了）
赤星慶治（あかほし・けいじ）
（2009/03/13-04:13）

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