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性教育めぐる都議の視察「不当な支配」 東京地裁認定

2009年3月13日3時5分

写真:判決後、「勝訴」の旗を掲げて記者会見する原告の教諭たち=12日午後5時、東京・霞が関、中田徹撮影判決後、「勝訴」の旗を掲げて記者会見する原告の教諭たち=12日午後5時、東京・霞が関、中田徹撮影

 東京都内の養護学校の元教諭らが都議3人と都などに損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(矢尾渉裁判長)は12日、慰謝料計210万円の支払いを3都議と都に命じる判決を言い渡した。03年に学校を視察した都議らが性教育を実践していた教諭を非難したことが教育への「不当な支配」にあたると指摘。都教委が教諭らを厳重注意したことも裁量権の乱用と判断した。

 「不当な支配」は教育基本法で禁じられており、教育現場への介入をめぐって不当な支配があったと認める司法判断は極めて異例。

 訴えていたのは、日野市にある都立七生(ななお)養護学校=現七生特別支援学校=に視察当時勤務し、03年9月以降に都教委から「厳重注意」を受けた教諭や保護者ら31人。田代博嗣、土屋敬之、古賀俊昭の3都議と都などに計約3千万円の慰謝料などを求めていた。

 判決は、都議らが同校を視察した際の発言について「一方的な批判で侮辱」と認定。「単なる議論の範囲だ」とする都議側の主張を退けた。

 そのうえで「学校の性教育に介入、干渉するもので、教育の自主性を阻害してゆがめる危険のある行為だ」として「不当な支配」にあたると判断。同行した都教委職員が都議を制止しなかったことも「不当な支配」から教育を保護するよう定めた改正前の教育基本法の教育条件整備義務に反して違法だと述べた。

 同校では、知的障害がある子どもは体の部位の認識が難しいために人形などを使った性教育をしてきたが、都教委側は「学習指導要領に反する」として教諭らを厳重注意とした。判決は「同要領に反し、同校の児童生徒の発達段階を踏まえないものであることが明らかだったとはいえない」として「著しく妥当性を欠き、裁量権の乱用だ」と結論づけた。(向井宏樹)

     ◇

 ■不当な支配 旧教育基本法は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」と定めていた。教育現場の自主性を保ち、権力の介入を防ぐための規定とされたが、行政側の行為がどこまで許されるのかは教科書検定訴訟や卒業式での日の丸掲揚・君が代斉唱をめぐる訴訟などで繰り返し争われてきた。06年の同法改正では「不当な支配に服することなく」の表現は残ったものの、直後に続く文言は「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」と改められた。行政側の権限が旧法より強められたとみる識者は多いが、判例はまだ確立されていない。

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