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Commons:2009.3.10 from山口一臣

「小沢辞めろ」コールはマスコミの怠慢

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週明けの新聞各紙の世論調査で、
民主党の小沢一郎代表は辞めるべきだ、という意見が半数を超えていた。
さらに、小沢氏の記者会見の説明が、
「納得できない」
という意見が8割前後にのぼっていた。

これを受けて、民主党の党内までが揺れ始めたという。
曰く「小沢氏の秘書が起訴されたら、辞任は避けられないだろう」などなど…。

小沢氏の肩を持つわけではないが、
日本人はもっと冷静になったほうがいい。
一般ピープルならまだしも、いやしくも立法府の構成員である国会議員までが、
「起訴されたら……」とは、
この人たちは刑事罰の仕組みや刑事訴訟法の精神を理解していないのだろうか。

近く裁判員制度が始まり、
誰もが裁判員に選ばれる可能性があるのであえて言うが、
小沢氏が民主党の代表を辞めたら、
日本の民主主義は、ハッキリ言っておしまいだ。

知っている人にはまったく釈迦に説法だが、まず、
「逮捕された人=犯人」ではない。

刑事捜査原則は任意である。
証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合に限って、
被疑者の身柄を拘束できる。これが逮捕だ。

しかし、この段階では、
被疑者は捜査当局が罪を犯したと疑っているに存在に過ぎない。
逮捕された人、イコール犯人ではない。
新聞などでよく「捜査当局の調べによると……」と書かれているが、
あれもすべてが事実であるとは限らない。
あくまでも、警察や検察など当局がそう思っているという程度の話なのだ。

さらに言えば、起訴された被告人というのも、
検察官が処罰に値すると思っている人に過ぎない。
裁判で有罪が確定するまでの間は、いわゆる「無罪推定」なのである。

法廷で検察官が縷々述べる被告人の罪状も、
あくまでも検察側の「主張」であって事実ではない。
捜査員も検察官も人間だから、思いこみや間違いもある。
感情的になって、何かをやってしまうことだってある。
そのこと自体は非難できない。人間だから当たり前だ。

つまり、何が言いたいのかとい言えば、
「秘書が起訴されたら、小沢氏は辞めるべきだ」
という論調が、いかに非合理かということだ。

小沢氏は例の会見で、「(秘書が)起訴されることはないと信じている」
と、なんともノー天気なことを言っていたが、これはあり得ない。
検察が捜査した事件なのだから、
検察はメンツに掛けても必ず起訴する。
秘書が起訴をされたら、小沢氏は、
「法廷で潔白を証明するよう(秘書は)努力するでしょう」
と、淡々と述べればよいのだ。
起訴の段階では「無罪」なのだから、堂々としていればいい。

こんな当たり前のことを説明しなければならないのは、
やはり、これまで日本のマスコミが、

逮捕=犯人
起訴=有罪

というような報道をしてきたからだ、と自戒を込めてつくづく思う。

お恥ずかしい話だが、ぼくの駆け出しのころ、
警察・検察のやっていることはすべて正義で、
周辺から漏れてくる情報はまったく事実だと思っていた。
でも、この仕事を20年以上もやってると、
警察も検察も人間の集まりだとつくづく思うようになる。

恣意的な捜査はもちろんあるし、証拠のでっち上げだってやる。
ズサンな捜査、思いこみ捜査、ウソやデタラメだってある。
そのくせやりにくい相手は取り締まらなかったりする。
そんなことも、ごく普通にある。
だから、ぼくは納税者の視点での監視が必要だと思うのだ。

その捜査、本当に税金をかける価値があるのか? と。

人事異動が近いから、ちょいちょいと被疑者をつかまえて、
異動前にとっとと起訴してしまえば手柄になる。
そう思っていたら、相手が思わぬ反発をしてきたので「けしからん」。
マスコミを通じて、どんどん悪性情報を流してしまえ。
検察を批判するような男を総理にしていはいけない!

そんな気持ちがどこかで働いていなかったか?

誤解しないで欲しいのは、検察官だって人間だから、
出世欲もあれば性欲、物欲もある。
だから、いろんな感情があって仕方ないのだ。
それ自体を否定しているわけではない。

ただ、そういうことがあることを知っておくべきだと言いたいのだ。
それから、マスコミで働く一員として、
こういうことをきちんと伝えていけなければならないと思う。
今回の事件を通じて、また改めて反省した。

検察は必ずしも正義ではない。
検察の言い分は「主張」であって事実ではない。
逮捕・起訴された人はイコール犯人ではない。
この当たり前の前提での報道を心がけないといけない。
それが、どれだけキチッとできているかが問われている。

釈迦に説法でした、すんません……。


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山口一臣
山口一臣
(『週刊朝日』編集長)

1961年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ゴルフダイジェスト社勤務を経て、89年朝日新聞社入社。高校時代から愛読していた『朝日ジャーナル』編集部に配属され、あこがれの「ファディッシュ考現学」(田中康夫)を担当するも3年で休刊の憂き目に。『週刊朝日』へ異動し、事件&事件の日々を送る。その後、何を血迷ったのか広島の公教育問題で日教組を徹底批判し、「朝日なのに産経と論調が同じ」と物議をかもす。9.11テロ直後のニューヨーク、パキスタンを取材。米軍によるアフガニスタン市民への誤爆を伝えまくる。デスク時代に北朝鮮拉致被害者関連の記事で下手を打ち、『週刊文春』に叩かれ、副編集長を解任、更迭される(停職10日の処分付き)。その後、広報部へ配属されるが約半年でお払い箱。百科編集部で子ども向け週刊科学誌『かがくる』の創刊などに携わり、05年5月から再び副編集長、同年11月から、『週刊朝日』第41代編集長に。85年にわたる『週刊朝日』の歴史で中途採用者が編集長になるのは、これが初めて。

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