新宿区内に100ヵ所以上存在? 「旅館業」登録は3ヵ所のみ
韓国人が経営する「民泊」と呼ばれる宿泊施設が増えている。マンションや一軒屋に間仕切りを施し、2段ベッドを数台設置しただけの簡素な施設だ。相場は1泊3000円前後。東京・新宿区など、便利な場所は、特に増加が目立つ。民泊の利用者は、ほとんど韓国人だ。短期滞在ビザ免除やウォン高で、長期滞在の韓国人旅行者は増えている。民泊は彼らにとってありがたい存在だ。だが、届出をせずに営業する民泊も少なくない。不法就労など、犯罪の温床になっているとの指摘もある。 (溝口恭平)
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韓国人向け生活情報誌には「民泊」の案内があふれている |
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不法就労などの温床に
韓国人をはじめ、外国人が多く住む東京・新宿区の大久保・百人町地区。新宿区の保健所に「旅館業」で登録されている大久保・百人町地区の宿泊施設は、約70カ所に上る。「旅館業」の登録は、不特定多数から代金を受け取って宿泊させる施設に義務付けられている。民泊も例外ではない。
大久保・百人町地区内で、看板などから所在が確認できた民泊は14カ所。そのうち旅館業として登録している民泊は、3カ所に過ぎなかった。
「消防法や各種安全条例に適っていない施設がある恐れはある」と、新宿区保健所衛生課環境衛生係の守尾輝彦係長は言う。保健所としては、「まず許可を取ってもらうこと、それがだめならやめてもらうしかない」という姿勢だ。実際、消防法の基準を満たすための改装に、莫大な費用がかかると分かった民泊経営者の中には、民泊をたたんでしまう人もいた。
新宿区の警察関係者によると、05年3月の時点で、84軒の民泊が区内にあったという。その多くは看板を掲げておらず、届け出もなかった。現在、新宿区内の民泊は、100カ所以上になると見られている。
「知らない人がたくさん出入りしていて不気味だ」近隣住民の苦情は少なくない。インターネットで予約してきた韓国人観光客が、ネット上で見た写真と実際の宿泊施設が違っていたとして、民泊経営者とトラブルを起こした例もあった。
保健所に登録をしていない民泊は、税務署からも目を付けられている。事業登録がないので、脱税し放題だからだ。
ある入管関係者は、民泊が韓国人犯罪者の拠点になっている可能性を指摘する。
入管と警察が、過去2年間で立ち入り捜査を行った民泊は、10数カ所にのぼる。捜査で見つかった不法滞在者は3、4人だけだったという。ただ、問題は不法就労者だ。
「来日90日以内の韓国人観光客は、在留資格で見ればまったく問題ない。ただ、民泊の宿泊客のなかには、歌舞伎町の飲食店などで働いている不法就労者が紛れ込んでいるようだ」
この入管関係者は、韓国人武装スリ団が、民泊を拠点にしている可能性にも言及した。
新宿区保健所の守尾係長は「宿泊料の高いホテルから、安い民泊まで、宿泊施設にバリエーションがあるのはいいことだ」と、民泊の存在自体は歓迎している。
「互いの国の名所・旧跡を楽しんでもらうために作られたノービザ協定を、悪用する人がいるのは事実」
守尾係長は、民泊が旅館業の登録をすることを期待している。事業の申請・登録を行い、宿泊客が観光以外の目的で来日していないかにも気を配る。民泊側の変化が求められている。
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