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“高橋名人”という社会現象――高橋利幸氏、ファミコンブームを振り返る(前編) (1/5)
日本デジタルゲーム学会は、東京大学で公開講座「名人の目から見たファミコンブーム」を開催。ファミコンブームの主役となった“高橋名人”こと高橋利幸氏(ハドソン)が、ブームについて振り返った。その内容を詳細にお伝えする。
[堀内彰宏,Business Media 誠]
日本デジタルゲーム学会は3月6日、東京・文京区の東京大学福武ラーニングシアターで公開講座「名人の目から見たファミコンブーム」を開催した。講座ではハドソンの高橋名人こと高橋利幸氏が講師として登壇、ブームを仕掛ける側から見たファミコンブームについて語った。
1983年7月15日に任天堂が発売したファミリーコンピュータ(ファミコン)。『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』など魅力的なソフトが数多く登場、テレビゲームは瞬く間に新たな娯楽として社会に根付いた。そのファミコンブームを支えた企業の一角がハドソンだ。全国でゲーム大会を開いたり、漫画雑誌やテレビ番組とのコラボレーションを進めることでブームを盛り上げた。その活動の中心的な役割を務めていたのが高橋氏だ。
高橋氏は現在もハドソンの宣伝部に勤務、ブログ「16連射のつぶやき」やYouTubeなどを通して活発な宣伝活動を行っている。「ファミコンブームを詳細に振り返るのは初めて」という高橋氏。その内容を詳しくお伝えしよう。
きっかけはMZ-80B
高橋 私は1959年に、札幌市の琴似(ことに)というところで生まれました。大学に進学したものの、面白くなかったので3カ月で中退しました。そして、スーパーマーケットの青果部で4年ほど働いていました。
(ゲームの世界に入るきっかけは)青果部で主任に昇格して、仕入れと出荷を担当する時に伝票を整理するために、たまたま入ったマイコンショップでシャープのMZ-80Bを27万8000円で買ったことです。世の中、マイコンマイコンと騒がれていた時期です。(MZ-80Bに加えて)フロッピーディスクドライブ29万8000円、メモリーもGメモリーを増やすのに4万円ちょっと、ドットプリンタを10万円、合計70万円くらいをローンで購入しました。私の中古のクルマが45万円の時です。
クルマより高いパソコンを買ったのですが、操作方法が分からなくて使えませんでした(笑)。今はカードでローンを組むと銀行から自動的に引き落とされますが、昔は毎月振り込み用紙が送られてきます。そこに返済金額が書き込まれているのを見て、この金額をあと30回払わないといけないと思うとですね、「パソコンに積もったほこりを払おうかな」という気になったのです。
ほこりを払って、BASIC※のコマンドを30個くらい覚えたところで、カルチャーセンターの講師になりました。相手が初心者なのでそれでもいいわけです。コマンドを5個か10個くらい教えて、私も自分が知っているコマンドの数を増やながら教えていくわけです。教えているといろんな質問を受けます、「先生、ここはどうするんですか?」「このコマンドはどうやって使うんですか?」。自分も分からない時にはすぐ「それはいい質問ですね。じゃあ、ここで私が答えるのも簡単ですから、皆さん来週までに考えてきてください」と言って、私も一生懸命調べる。人に教えるということは、自分のためにもなるんですね。何か詐欺みたいな事をしていましたが、それからハドソンの面接を受けると入れてくれることになりました、それが1982年8月のことです。
任天堂さんがファミコンを発売したのは1983年7月15日です。その当時、ハドソンでは札幌のCQハドソンという店でアマチュア無線機器の販売もしていたのですが、売り上げの8割くらいはパソコン用ゲームソフトの製作販売、それからシャープのMZ-80シリーズの「Hu-BASIC(ヒューベーシック)」というOSの製作販売でした。
ハドソンは1983年5月くらいまで、毎月20タイトルくらいの新しいソフトを出していて、秋葉原などのパソコンショップに行くと、ハドソンのソフトで飽和状態でした。昔は今と違って(ソフトに互換性がなく)1機種1本でしたから、例えばMZ-80BとMZ-2000とX1とPC-8800とPC-6001と機種が違えばソフトのプログラムも違っていたのです。
1983年4月にディズニーランドがオープンになって、社員みんなで遊びに行って、作ったソフトが『デゼニランド』というゲームです。英語でコマンドを入力していって進むアドベンチャーゲームだったのですが、それまでは1タイトルでヒットしても売り上げ本数は1万本くらいだったのが、そのソフトだけで5万本くらい売れたんです。その経験からハドソンでは「数多く出すよりも、スペシャルなソフトを出していこう」という考えでソフト開発をする事に方針変換されました。
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