2009年 03月 13日
アルルの男・ヒロシです。 これから、このブログも政治・経済にとどまらず、カルチャーの面からアメリカを取り上げていきたいと思います。カルチャーといっても、背景には政治思想があるわけですから、全く関係のない話ではないわけです。 今回は、アメリカの有名なアニメ番組「サウス・パーク」の最新シリーズ(第13シーズン)から、その第1話になった、エピソードを取り上げていきます。 サウスパークは、トレイ・パーカーとマット・ストーンという二人のコロラド州出身のクリエーターが、アメリカのその時々の政治や経済、カルチャーの話題を織り交ぜながら、時に政治批評的に、時に「スカトロジー」の切り口で現代アメリカを批評するアニメです。 日本では、「切り絵風の絵柄のかわいいキャラが、きわどいことを言うアニメ」というとてつもない売り出され方をしたのですが、政治的アニメという分野が存在しない日本ではやむを得なかったことでしょう。そして、日本ではDVDも途中でリリースが中止になりました。 この二人のクリエーターは、自分たちで政治的にはリバータリアンを名乗っています。もっとも、アウトロー的な映画俳優のクリント・イーストウッドのような「全米ライフル協会」(NRA)と結びついている、リバータリアニズムではなく、サブカルチャー的、あるいは、若者文化の中のリバータリアンであって、政治的にもシリアスなものではありません。ましてや、「リバタリアン」を名乗るだけの権力側のシカゴ学派とは全く無縁です。ただ、メディアでは、サウスは、リバータリアン系の雑誌『リーズン』に何度か特集されたことがあります。 あのマイケル・ムーアのアニメ版とでも言えばいいでしょう。 South Park Libertarians Trey Parker and Matt Stone on liberals, conservatives, censorship, and religion. Nick Gillespie and Jesse Walker | December 2006 Print Edition http://www.reason.com/news/show/116787.html トレイ・パーカーの方はコロラド州のリバータリアン党員だそうですから、政治的には、「政府の干渉」(特に検閲、放送禁止用語)「既成の大企業の作った秩序」に対しては批判的で風刺的な描き方をします。でも、反ブッシュというわけでもなく、ブッシュに呼ばれればパーティに顔を出す、位のことはやるようです。(ブッシュをコメディの主役にした「ザッツ・マイ・ブッシュ」という番組を911事件の直前まで制作していました) オバマは主要な演説をコロラド州でやることが多い、景気刺激法案もわざわざコロラドでやったんです。サウスパークの舞台は州都デンバーの近くにある山間の「サウスパーク」という街。アメリカの東部エスタブリッシュメントにとっては、アリゾナやルイジアナと並んでポピュリスト多発発生地帯と認識されているはずです。ある種の「アンタイ・インテレクチャル」(反知識人主義)が根強いところですが、カリフォルニアにも多少近いので、リベラルな気風もあるというところでしょう。 サウスのクリエーターの二人は、教条的な保守を批判しますが、一方でリベラルのやる行為に対して皮肉やちゃかし行います。 要するに政治的な偽善が「大嫌い」な二人なのです。 以前は、「アル・ゴアの地球温暖化論への皮肉」、「911陰謀説のやや肯定的評価と行き過ぎた陰謀説への傾斜への批判」などを取り上げて話題になりました。つい最近では、オバマ当選にわくアメリカ人の熱狂ぶりを徹底的に皮肉ったストーリーもありました。 そのほか、新興宗教(サイエントロジー)への批判や、宗教右派のパット・ロバートソンの番組の偽善への批判などもあった。レギュラー登場人物として、サダム・フセインが登場するアニメは他にはないでしょう。 サウスパークは、クリエーターの意向で全世界に向けて、無料で全エピソードを無料配信する方針でヴァイアコム社(と傘下のコメディ・セントラル)が専用サイトを作っています。 今回の最新エピソードでは、いきなり文化的にアメリカの政治思想がわかっていないと理解しにくい、宗教右派への皮肉、批判でした。あくまで風刺として世相を描くのであって、糾弾するとかそういうものはありません。 今回のエピソードのテーマは、ディズニーが仕掛けた、アイドルグループ(ボーイ・バンド)の一つ、ジョナス・ブラザーズに対する皮肉。このバンドは最近、訪日を果たしたそうです。アメリカでは若い少女の間で大人気だそうです。 The Ring(1301) http://www.southparkstudios.com/episodes/220683/ このバンドは、ディズニー・チャンネル所属なのですが、局側の方針で、「純潔リング」(a purity ring)を指にしてステージにあがるらしい。ウィキによると、ジョナスのメンバーの家はみんなペンテコステ派の中のAssemblies of God (貧乏白人の宗教。ザ・シークレットもこの系統のビジネス) の牧師なんだそうです。 純潔リングというのは、完全にクリスチャンの文化的な象徴であって、「結婚するまでセックスはしません」という誓いのリングです。アメリカでは敬虔なキリスト教徒たちが、こういう「純潔リング」をするんだ、ということはアメリカの新聞で書かれているのを読んだことがあります。 日本でもアイドル・グループがファンの女の子を食っちゃったというような話はありますが、ディズニーは保守派の家庭向けに、「そういうことはないですよ。安心してくださいね」とアピールをやっているわけです。それをトレイとマットは、偽善だとして批判している。 また、それでもっとすごいのは、アニメに出てくる「ディズニー・チャンネル」の社長が、もろ「ミッキー・マウス」なんですね。確か、ミッキーは著作権切れだったはずですから、登場させてどのように描いても問題ないのでしょうが、かなり挑戦的です。これは、日本でとんねるずの石橋がディズニーランドでミッキーを捕まえて、「中の人でてこい」とやったりするのと同じですね。石橋はこれで浦安に出入り禁止になったらしいが、アメリカのサウスのクリエーター二人は、そういうことも気にしない。しかし、ミッキーが子供に対してキックを加えたり、ゴジラみたいに町を破壊するというのはなかなか凄い。アメリカでも他のアニメでは描かれない野ではないかと思います。(ザ・シンプソンズでもここまでやらないだろう) ともかく、このエピソードをみた後で、ジョナス・ブラザーズの実際のムービークリップをみてみると、かなり忠実に再現されていることがわかります。アメリカでは、ジョナスというのはこういう風に馬鹿にされているのかということがわかるし、ディズニーってのはみんなから嫌われているんだなともわかる。 アメリカのカルチャーを手っ取り早く知りたければ、サウスパークをみましょう。 動画は無料で配信されています。(英語もそんなに難しくないし) 以上、サウス普及運動でした。また不定期にやります。 'South Park' saves the Jonas Brothers' souls Mar 11, 2009, 11:04 PM | by Ken Tucker Categories: cartoons, last night, Television http://watching-tv.ew.com/2009/03/south-park-jona.html 公式サイト http://www.southparkstudios.com/ 2009年 03月 12日
例えば、オバマとヒラリーは去年のビルダーバーグの席でこう通告されていたりして・・・。 (妄想開始) (注) ジョーダンについては上の動画のコメント欄の評価が秀逸。 Contrary to the previous comment VJ Jr is not a loser. He was at the helm of the Civil Rights Movement for many years and nearly died in the process. He understands seasons and he stepped aside in a timely fashion to render his skills to another equally important sector of our lives. He has reached the pinnacle of both civil rights and corporate America. He ought to be respected and acknowledged for his efforts. Not many people of colour in his age bracket can point to such dual success. === ※この本のいくつかにビルダーバーグに初めて参加したときの記述あり。 だれか、この妄想を漫画にしてみませんか? 2009年 03月 12日
アルルの男・ヒロシです。 本日、現在進行中の『オバマを動かす○○人』(仮題)の打ち合わせに出版社に行ってきました。 オバマの就任式のあと、かなり情勢が動いたので加筆しないといけないのと、現在の進行からして、3月末までに一旦原稿を完成させてゲラ出しをしないといけないね、という話になりました。 小沢一郎の「完全勝利」でどうやら今回の国策捜査は終わりそうな雰囲気になってきましたね。「週刊文春」にしろ「週刊新潮」にしても、頭は二階さんの方のパー券問題(これも問題かどうかは微妙ですが)でした。新聞報道もゼネコンがどのように献金したか問題ばかりが浮上している。つまり、特捜部がまだ事件を固めていないという事だと思う。岩手4区の高橋嘉信氏も自民の公認をはずれるという報道まである。 ===== 「西松建設前社長が小沢氏からの便宜供与を否定」(世田谷通信) 西松建設の違法献金事件に関して、西松建設の国沢幹雄前社長が、民主党の小沢一郎代表側からの便宜供与はなかったと証言していることが分かった。東京地検特捜部は、西松建設による小沢氏側への献金は公共工事などの見返りを目的としたものとして捜査しているが、国沢前社長は「公共工事が欲しかったので(小沢氏側への)献金を続けていたが、まったく工事を回してもらえないため、このまま献金を続けていても無駄だと思い、2つの政治団体を解散するに至った」と証言した。この証言は、小沢氏の影響力が強いと言われている東北地方での公共工事が、西松建設側にほとんど斡旋されていなかった事実とも合致している。小沢代表は11日の党本部での会談で「何としてでも衆院選で勝つ。俺は何も悪いことはしていない。いずれ真実が明らかになれば国民も理解してくれるはずだ」と語った。一方、西松建設による裏金疑惑や違法献金容疑を報じられている自民党の二階俊博経済産業相や森喜朗元首相の地元である近畿地方や北陸地方では、数十億円単位の公共工事が西松建設へと優先的に流されていた事実が判明しており、今後の捜査の方向性が注目される。(2009年3月11日) http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2009/03/post-bc77.html ===== 文春の記事で上杉隆さんの記事があった。上杉さんは、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者だけあって、工作員のような記事を多数書いている。歳川隆雄さんとか、春名幹男さんとかの記事と違って、謀略色満載で読むとイライラする。 ところで、オバマ政権の外交・安全保障チームと経済チームは、前々回の投稿で書いたように、一体化・統合連携化の道を歩み、1947年以来の国家安全保障法いらいの全面的改組になるわけです。その中で、国家の諜報機関を司る、国家情報官のデニス・ブレアの下で調査報告レポートの管理を行うポストである、NIC(ナショナル・インテリジェンス・カウンシル)のチェアマンの指名人事で、「イスラエル・ロビー」の横やりが入ったようです。 このNIC議長に指名されたのは、Charles W. Freeman, Jr. という人物で、父ブッシュ政権でサウジ大使をつとめた人物。Freemanは、イラク・スタディ・グループにも参加していた人物だ。父ブッシュ人脈ということは、スコウクロフトらに連なる「リアリスト」。そして、NSCのトップであるジェイムズ・ジョーンズの方もリアリスト。つまり、これはイスラエル・ロビー=ネオコンとのガチンコ勝負なわけです。 結局、Freemanは辞退に追い込まれました。 Intelligence Pick Blames 'Israel Lobby' For Withdrawal By Walter Pincus Washington Post Staff Writer Thursday, March 12, 2009; A01 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/03/11/AR2009031104308_pf.html しかし、ネオコン=イスラエル・ロビーというのは、局所的タカ派(イスラエル問題を最重要視)するのであって、リアリストは、別にハト派じゃない。強いて言えば、「慎重に戦争準備を始めるタイプ」かな。ジョーンズの安全保障機構のオーバーホールを見ていると、「アメリカは明らかにアフガニスタン以後の戦争準備を始めたな。大国のゲームを意識しているな」とわかります。 NSC強化論というテーマは、きわめて重要です。イスラエル問題だけにこだわらないリアリストは、ネオコンの路線を徹底的に排除して、アメリカが「まともな戦争」が出来るように計画を立てていく。ネオコンのPNACは詰まるところ、イスラエルの安全保障を守るために、イランとイラクをつぶせというものでしたが、ジョーンズら安全保障関係者が超党派であつまる、超党派グループ(Project On National Security Refrom)は、詰まるところ、「アメリカの世界戦争計画」まで視野に入れて安全保障を考えているわけです。 ヒラリー・クリントンがやや孤立しているように見えるのもそのためです。イスラエル・ロビー排除でジェイムズ・ジョーンズが、ジョージ・ミッチェル(中東特使)だけではなく、リチャード・”ビルダーバーグ”・ホルブルック(アフパク特使)まで取り込んでいるかもしれない。そうすると、デニス・ロス程度を顧問に迎えたヒラリーは、ジョーンズの言うことを聞かなくてはならなくなる。 結局、オバマ政権の外交政策は、ほとんど表に姿を見せない、ジェイムズ・ジョーンズが決めているのだろう。ジョーンズは、キッシンジャー以来の強力な安保補佐官と言われている。雰囲気としてはアイゼンハワーという感じですかね、軍服を着た写真も多いし。 オバマは、「ケニヤ出身のかっこいいアンちゃん」として、ヒラリーは、「女性の国務長官」として、 ソフトパワーとして利用されているだけなんじゃないか。 むろん、ロビー側の攻勢がおとなしく見えるのは、イスラエル国内でネタニヤフ新政権がまだ発足しないから、イスラエルそのものの意向がアメリカに伝わらないだけかもしれない。しかし、ミアシャイマーとウォルトの本が登場して以来、「レッドライン」(この場合はイラン空爆)を超える前にはかなりの「バーゲン模索」が行うように方針が変わったようだ。 ジョーンズ戦略の観点では、グリーン・ニューディールもあくまで軍事政策となっているはずだ。そう考えていくと、すべてが解けます。 だから、話は少し変わりますが、北朝鮮のミサイルを打ち落とすって宣言している日本政府は馬鹿です。馬鹿野郎です。 「列国の陰謀」がすでに始まっているのに、日本の安全保障政策ではまったくそういう発想が出来ていない。 北朝鮮のミサイル発射は、国際機関(国際民間航空機関、国際海事機関など)にも通告してある行為です。だから、問題はない、と無視するのがベストの選択なのです。迎撃してもどうせ当たりませんよ。そうしたら、日本は北に宣戦布告することになります。馬鹿ですね。 日本保守の皆さんは都合のいいときだけ、国連決議を持ち出さないでほしいもんです。日本の愛国派は「正しさ」だけで動くけど、はっきりいって馬鹿です。狸です。吉田狸を見習ってほしいものです。 そういえば、いつの間にカストロさんって野球評論家になったんだろう? カストロ前議長が絶賛 原監督の采配は批判 2009.3.12 00:08 http://www.sanspo.com/baseball/news/090312/bsr0903120008000-n1.htm 2009年 03月 12日
Special Report The World's Billionaires Edited by Luisa Kroll, Matthew Miller and Tatiana Serafin, 03.11.09, 06:00 PM EDT http://www.forbes.com/2009/03/11/worlds-richest-people-billionaires-2009-billionaires_land.html http://www.forbes.com/lists/2009/10/billionaires-2009-richest-people_The-Worlds-Billionaires_Rank.html 詳細分析は後ほど。 特に損したヤツが気になるよね。 2009年 03月 12日
アルルの男・ヒロシです。 オバマのナショナル・セキュリティ・アドバイザーのジェイムズ・ジョーンズの仕切っている、超党派の安保改革の話は、ファクタにしか載っていないんですが、ワシントンポストが取り上げて、話題になっています。 これは、私も最近まで気がつかなかったんですけど、オバマであれ、マケインであれ実行されたであろう、オーバーホールですね。CIA長官を、国家情報官の下に配置していますが、この情報官となったデニス・ブレアも超党派会議のメンバーです。 結局、ジョーンズが理事長を務めた「アトランティック・カウンシル」や、情報機関が関わった「2025年レポート」、ミシェル・フロノイとカート・キャンベルのCNASの一連のレポート、ポデスタのエコ・ニューディールなどの戦略文書、CSISのナイ=アーミテージの「スマート・パワー」論文は、この超党派チームの740ページの研究報告書にて統合されているわけですね。 この流れで、国内の治安も強化されますが、オバマが気になることを繰り返し、選挙中に言っていました。 (貼り付け開始) "We cannot continue to rely on our military in order to achieve the national security objectives that we've set. We've got to have a civilian national security force that's just as powerful, just as strong, just as well-funded." July 20, 2008 Obama's Civilian National Security Force http://www.americanthinker.com/2008/07/obamas_civilian_national_secur.html (貼り付け終わり) これってカルーイ徴兵制になっていますよね。 オバマの首席補佐官のエマニュエルも「三ヶ月くらいは訓練してもらうのもいいかもね」とインタビューで語っているのを動画で私は見ました。 このシビリアン・ナショナル・セキュリティ・フォースは、ミニットマンやミリシアの思想を持っているリバータリアンからは徹底的に批判されてます。 銀行家と軍人官僚の支配するオバマ政権のいうことは従ってられない、と。 そんな中、リバータリアン系のサイトでは、各州の「主権確認」(ソブランティ)の声明が相次いで出されているという情報が流れています。アメリカって、合州国なんですよね。本多勝一がいうように。そのうち、アメリカ自体が分裂するかもしれない、という示唆です。「メキシコの台頭」をストラットフォーのフリードマンは唱えていますが、これもその観点で眺めるべきでしょう。 このシビリアン・フォースなんですが、最悪の場合、メキシコとの国境警備とか、アフガニスタンの民生支援に回されるんじゃないか、と私は疑っています。メキシコとの麻薬戦争がやけにアメリカ国内で盛り上がっている雰囲気ですし、オバマはメキシコ麻薬担当官を設置すると声明していました。 結局、不況の際の人減らしじゃないんだろうか。日本の満州開拓みたいな。 やはり、社会批評家の堀井憲一郎のいう「若者殺し」の時代に再び突入しつつあるのかもしれない。 世界的に、暴動が起きると言うことは、FTなどでも言われているわけだし。 うーむ。やはり「エピソード3」は政治的に相当重要な映画なんだなあ。 Obama's NSC Will Get New Power Directive Expands Makeup and Role Of Security Body http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/02/07/AR2009020702076.html |
アバウト
新刊『世界を動かす人脈』は、『ニューズ・ウィーク』などで紹介の書籍Superclassも取り上げた、話題のビルダーバーグ会議の歴史、グローバル・エリートの生態を日本語で体系的・系統的に書いた本です。 by japanhandlers2005 リンク集
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