ロングインタビュー  品川ヒロシ

漫才コンビ“品川庄司”の品川ヒロシが、36歳にして長編映画監督デビューを果たした。しかも自作の小説『ドロップ』を原作に、脚本まで担当して。

「吉本興業に入る前から、お笑いをやりたいと思う一方で、映画を撮りたいという夢があったんです。ビートたけしさんが、両方やられて大成功しているので、自分もできたらいいなあと漠然と思っていました。身もふたもないんですが、クランクインから編集、試写会まで、毎日毎日ずっと楽しかったですね」

ただ、畑違いとなる映画監督進出については、周囲から反対の声も少なからず上がったという。

「マネージャーから話をもらったときも、『自分で書いた小説の監督だから、もしコケたら言い訳きかないよ』ってクギを刺されました。でも、絶対にやろうと。まず原作をもとに脚本を書いてプロデューサーや関係者にプロの目で判断してもらい、そこで初めてゴーサインをもらいました」

『ドロップ』は、不良に憧れ、全寮制の私立中学から東京狛江市の公立中学に転校してきた主人公が、転校先の学校や近隣他校の不良たちと、クリスマスも大晦日も関係なくケンカにあけくれ、恋愛をし、友情を育んでいく青春ストーリーだ。主人公が転入する中学3年の15歳から始まり、高校を1年で中退して町を出る16歳で物語は終わる。

フィクションは含まれているものの、映画も原作となる小説も、大筋は品川自身の実体験がもとになっている。品川本人も名門私立中学から狛江市の公立中学に転入し、高校も1年で中退しているのだ。

「『ビー・バップ・ハイスクール』に憧れて転校したんですよ。どうしても不良になりたくて。『かっこいいからバンド組もうぜ』っていうのと、そんなに変わらないノリでしたね」

リーゼント、短ラン、ボンタン。ガンの飛ばしあい…。加藤ヒロシと中間トオルら不良たちが騒ぎを繰り広げる、きうちかずひろの『ビー・バップ・ハイスクール』といえば、80年代の中学生の誰もがかぶれたヤンキー漫画のバイブルだ。だが、自主的に転校までして不良になろうという中学生は、正直いないのではないだろうか。

「浅はかなんですよ。そのまま私立中学に通い続ければ、中高一貫校だったから少なくとも高校は卒業できたのに公立中に転校しちゃうし、あげくの果てには高校も中退しちゃうし」

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