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続・誤報だらけの地球温暖化情報 (上)

ここが聞きたい!地球温暖化情報の素朴な疑問

伊須田史子(2008-02-06 11:40)
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 IPCC(=気候変動に関する政府間パネル)が2007年11月に公表した第4次評価報告書・統合報告書について、たとえば世界自然保護基金(WWF)ジャパンの気候変動担当オフィサーは、「温暖化の進行とその影響に加え、解決策をコストと併せて明示した。報告書をまとめた科学者は、やるべきことをすべて果たした」と賛辞を惜しみません。「(今度は)解決策を手にした政策決定者が実行に移す番だ」と述べています。〔参照:ITPro 「IPCCが統合報告書、科学の成果を政治は生かせるか」

 地球温暖化防止に向けての行動を政府レベルで行なう時が来た、というわけです。

 このITProの記事では潘基文・国連事務総長も同じように、「科学者は仕事を成し遂げた。政治の指導者にも仕事、つまり(2013年以降の次期枠組みに関する)交渉をバリで始め、2009年までに決着を付けることを求める」と述べています。

 一方、地球温暖化の事実を冷静に見つめながら、「地球温暖化狂想曲」、つまり地球温暖化に関する「誤報」に警鐘を鳴らす科学者たちもいます。今回、米国・フェアバンクスのアラスカ大地球物理研究所と国際北極圏研究センター(IARC)の前所長で、同大の名誉教授である地球物理学者の赤祖父俊一氏に再度メールによるインタビューを行ない、地球温暖化情報に関する素朴な疑問を率直にぶつけてみました。

「温暖化の原因は人為起源の温暖化ガス増である可能性がかなり高い」という、IPCCによって投げられた「賽」

地球温暖化情報のどこがどの程度「誤報」なのか

───炭酸ガス由来による温室効果以上に、水蒸気由来の温室効果が問題なのではないのか、太陽活動周期の影響の方が大きいのではないか、海面上昇は主に海水の体積膨張に起因するのではないか、という意見があります。

 温暖化の95%は、水蒸気によります。

 IPCC は、水蒸気は増加せず、炭酸ガスが増加しているので、気温上昇はそれによるとしています。海水温は、表面(300m)と海底では逆に変化している可能性があり、表面温度だけで体積膨張の計算はできません。IPCCは太陽の変化の影響は少ないとしていますが、我々は再検討する予定です。

───気象庁によるIPCCの報告書には「過去半世紀の温暖化の世界的なパターンを、外部放射強制力なしで説明できる可能性は極めて低く(5%以下)、また既知の自然起源の外部放射強制力のみによる可能性もかなり低い。温暖化は、海洋及び大気の両方で現れ、しかも、自然起源の外部放射強制力因子が寒冷化を引き起こしたかもしれないときに起きた」とありますが、どう思われますか? 〔参照:気象庁「IPCC第四次評価報告書 第9章 気候変化の理解と要因評価」(PDF)

 コンピュータは既知の自然変動を計算できますが、原因不明の小氷河期や多くの過去の気候変動の研究はできません。コンピュータは原因の物理過程が分かれば、それを数式にして解くだけです。

 また当然ですが、コンピュータで研究できない、数十年の準周期の自然変動もまた多数存在します。

 一方でIPCCは、既知のすべての自然変動を入力せずにコンピュータを走らせ、その結果を自然変動(5%)としていますが、これは全くの誤りです。

───「人間の産業活動等による影響、つまり実際に(産業活動等由来の)炭酸ガス等による温室効果率は、実は0.6-0.5=0.1度/100年程度」という算出は分かりましたが、京都大学防災研究所の報告にある、1975年以来の「著しい昇温傾向」というのはどんな影響によるものなのでしょうか?〔参照:京都大学防災研究所「20世紀における長期気候変動の要因推定」(PDF)

 実は、1910/20年から1945年に現在の温暖化率とほとんど同じ温暖化がありましたが、その原因は不明です。IPCCは「原因不明」を理由に、この温暖化をまったく無視しています。実際この期間、米国では現在よりも温暖でした。

 ところで「著しい」というのは、何と比較して「著しい」のでしょうか? これは「最近は著しい」という印象を与えようとするミスリードです。もし「著しい」というのであれば、過去1000年スパン、1万年スパン、そして10万年スパンで現在より「著しい」温暖化がありました。これも無視されています。

 IPCCは、過去数十年の変化は特別であると主張していますが、それは全くの誤りです。IPCCには、過去の気候には感心の薄い大気物理学者、コンピュータ専門家が多いのです。

赤祖父氏の論文より。直近140年の変動は、小氷期からの回復フェーズと思われる線形を解析すると、自然変動による温度上昇は約0.5℃/100年となる

  ◇

 実は、最初に引用したITProの記事の中でさえ「報告書が例示する最も厳しい削減シナリオ─2015年を境に世界でCO2の排出を減らし、 2050年には2000年のCO2排出実績の半分以下から15%程度にまで減らしても、気温は2℃以上、上昇する」、「なおかつ最大で世界のGDP(国内総生産)の5.5%を対策に投じることになると(する)試算」もある、と述べられていることは注目に値します。

 お気付きの通り、この2℃という数字はEUが今回規制の目標値としている数値であり、本来であれば「世界のGDPの1%か20%か」というのがスターン・レビューの意義だったはずです。〔参照:地球環境研究センター「気温上昇抑制の目標」
nikkei BPnet「世界のGDPの1%か20%か-スターン・レビュー」

 これはどういうことでしょうか。今回の規制が仮に順風満帆で大団円を見たとしても、結局40年後には気温が2℃以上上がってしまうかもしれず、「世界のGDPの1%」を費やしたことは、とどのつまり無駄に終わってしまうという最悪のシナリオもある、ということです。

 IPCCは各国政府に対し、地球温暖化を食い止めるには、思い切った削減の見込める対策に早急に手を付けなくてはならないという厳しいメッセージを突き付けました。

 では、わたしたちが地球温暖化防止のために今しようとしていることは、勝算の見込める方策なのでしょうか、それとも焼け石に水的施策に過ぎないのでしょうか。

 次回(下)では、自然変動としての温暖化が進む中、わたしたちは本当は何をすべきなのかを、赤祖父氏に聞いてみたいと思います。



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