活況を取り戻した世界のオフィス家具市場
欧州最大の国際オフィス見本市「orgatec(オルガテック)2006」が、10月24日から28日までドイツ・ケルンで開催された。2年に1度、世界のオフィストレンドを占う貴重なイベントとして、世界中から多くの来場者が訪れるビックイベントの様子を現地取材した。
1.景気上昇機運による積極的な展示
会場から見たケルン市街。ライン川越しに、
ケルンのランドマークである大聖堂が見える
観光名所であるケルンの大聖堂から15分程歩いてライン川を渡ると、オルガテックの会場であるケルンメッセがある。会場に入ると、世界最大級を誇るオフィス家具イベントのスケールの大きさにまず驚く。40カ国678社が出展した今回は、5日間で122カ国約5万7千人の来場者があり、前回よりも約5%増加。ここ数年低迷していた欧州の景気が、今年から本格的な回復機運となり、オフィス家具業界も元気を取り戻しているようだ。オルガテックは専門家の来場者のうち9割以上が購買責任者とあって、この成長に乗り遅れまいとする各メーカーの熱気が伝わってきた。
会場であるケルンメッセの正面入口
展示会場は、すべてのブースを見て廻るには数日掛かるほど広大だ(総展示面積13万平方メートル)。ブースのデザインも実に多彩。世界のオフィス市場のスケールの大きさや奥深さが実感させられる。
欧米では、オフィスの質が企業の信頼性に大きく影響するため、企業はオフィスへの投資を積極的に行う。日本のオフィスは、限られたスペースを効率的に活用することに重点が置かれがちであるが、欧米では、ゆったりとしたスペースで働きやすいのは当たり前。より付加価値のある環境づくりに向けて、各社が新しい考え方を競って提案している。
カラフルなアドバルーンでひときわ目を引く
Interstuhl社(ドイツ)のブース
モチベーションを引き出す場の演出に
力を注ぐsedus社(ドイツ)のブース
カラフルな演出で来場者を引きつける
張地メーカーの展示ブース
ミラチェア、セラチェアなどのメッシュ系チェアで
さらなる攻勢を掛けるHerman Miller社(アメリカ)
インパクトのある赤いブースの中に展示された、
シンプルな家具が印象的なUNIFOR社(イタリア)
趣向を凝らした展示で、連日、大勢の
来場者が詰めかけたvitra社(ドイツ)
2.オフィスはクローズ化とオープン化の2方向へ
オープン化からクローズ化まで、
完成度の高いワークステーションを提案する
Herman Miller社(アメリカ)
展示全体の傾向としては、クローズ化とオープン化の方向性で各社独自の提案がみられた。個室やブースで、パーソナル環境をクローズ化させる欧米型をより進化させたもの。一方、日本のようにユニバーサルプランやフリーアドレスなどを取り入れて空間のオープン化を進めたもの。さらに、ガラスなどを使い、クローズとオープンを巧みにミックスしたものなど、世界の多様なニーズに対応すべく各メーカーが多彩な製品でアピールしていた。
また、コミュニケーションのスタイルも実に多彩な提案があり、偶発的な立ち話から腰を据えた会議まで、幅広いコミュニケーションスタイルに合わせた家具が発表されていた。単にテーブルとチェアがあるだけでは、効果的な対話を生まれない。コミュニケーションを活発化させる仕掛けをいかに取り込んだオフィス環境にしていくべきかが、各メ??カーのプレゼンテーションの見せ場になっている。
ワーカーの「心」と「からだ」に配慮しつつ、やる気を引き出して仕事の生産性を向上させるワークプレイスに向けて、世界のオフィス市場は次の時代に向けて勢いを増しているように感じられた。
KONIG+NEURATH社(ドイツ)は、
オープン化を進めたオフィスの中に
クローズ化された半個室環境を実現させる
コンセプトモデルを発表
パネルで囲まれた個人ブースを離席時に閉じることで、
個人データなどのセキュリティ対策になる
簡易な腰掛けによる
カジュアルミーティングを
提案するbene社(オーストリア)
イタリアの建築デザイン界の巨匠
アントニオ・チッテリオ氏が率いるCITTERIO社(イタリア)。
シンプルなガラス張りの個室が異彩を放っている
『ORGATEC(オルガテック)』とは……
ドイツのケルンメッセで2年に1度開催されるオルガテックは、オフィス家具・周辺設備、ワークプレイスのファシリティ・マネジメントをテーマするオフィスの専門メッセ。米国シカゴで開催される「ネオコン」と並び、世界最大級のオフィスイベントとして約700社が出展。各社は新作発表の絶好の舞台として、多彩な展示を繰り広げる。世界中から専門バイヤーをはじめ建築家、インテリアデザイナーなどが集結し熱気に包まれる。 |