世界をリードする欧米メーカーと世界進出を狙う日本メーカー
欧州最大の国際オフィス見本市「orgatec(オルガテック)2006」の現地レポートの3回目。世界40カ国のオフィス家具が勢揃いするオルガテックでは、どんな展示が行われていたのか。イトーキブースの話題も含めて、気になるオルガテックの注目ポイントに迫った。
1.40カ国による国際性豊かな展示
vitra社は、新作チェアからベストセラーチェアまで
数多くのチェアを展示
オルガテック2006の出展者は、40カ国678社に上った。国内(ドイツ)企業は277社、外国からは401社が出展し、国際性に富んだイベントとなった。外国勢では、イタリア・スペインをはじめ、東欧・イギリス・アメリカ・日本・中国・韓国・南アメリカなどが出展した。
300社近くが出展した地元ドイツ企業では、vitra社、Interstuhl社、sedus社、bene社、Wilkhahn社、THONET社などのメーカーが各社独自の演出を行い、先進の製品ラインナップで関心を集めていた。また、東欧や北欧のメーカーは、職人的な伝統が息づくシンプルな家具デザインで、質の高さを巧みに表現していたのも興味深かった。
アメリカからは、HAWORTH社、Herman Miller社などが大々的な展示を行っていたのに対し、最大手のSteelcase社が出展していなかったのが意外であった。
個性的なチェアデザインで勝負する
Chair Baltic社(ラトビア)
曲木家具で有名なTHONET社(ドイツ)の新作ロビー家具
Interstuhl社(ドイツ)のテントのようなユニークな個室
2.医学的に推奨されている天板昇降デスク
KONIG+NEURATH社の天板昇降デスク。
天板を上げ、立って仕事をするのが
欧州ではポピュラーな光景
全体として印象的だったのが、デスクの天板昇降(上下)機構を備えた製品が当たり前のようにラインナップされていることだ。日本では体格差や車いす対応としてデスク天板が上下する製品が出始めているが、欧米ではすでに一般的になっている。電動や手動で天板が簡単に、しかも大幅に上下するデスクが、多くのブースで見られた。
これは、ある程度の時間座ったら、立って仕事をするのが健康に良いと医学的に推奨されているためだという。エグゼクティブ用デスクやグループテーブルでも、天板が上下する製品が多数あり、天板を上げて立ったまま商談を行う光景が会場でも見られた。
立ち作業にすぐに切り替えができる
天板昇降デスク(GUBI社)
電動で天板を上げた状態
sedus社(ドイツ)は、ワンタッチで取り外しできる
樹脂一体成型のテーブル脚をアピール
また、欧州企業はエコロジー提案にも積極的である。単一素材のテーブル脚をワンタッチで取り外しできるものや、新しい一体成型の樹脂パーツを開発するなど、リサイクル先進国ならではの試みが興味深い。
日本は経済大国であるが、オフィスに対する考え方は世界とはまだまだ開きがある。しかし、今回、日本メーカーから数社が出展し、その距離が縮まっているのも事実だと実感できた。約700社の出展メーカーが競い合うオルガテックは、日本メーカーにとっても大きな刺激になったであろう。
3.日本に先駆けて新製品を発表したイトーキブース
白と黒でシンプルにデザインされたイトーキブース。
新製品の「スピーナチェア」に注目が集まった
イトーキは、前回(2004年)に続き、オルガテックに出展した。「ワーキングダイナミズム」をコンセプトに、前回よりもブーススペースを拡大。初日に行ったプレス発表では、新製品の「スピーナチェア」と「シンタシリーズ」を日本に先駆けて先行発表し、多くのプレスや来場者の注目を集めた。
そのほかにも「インターリンク」、「アクセス」、「タシット」、「バイオテーブル4」、「リリッシュテーブル」などを展示し、先進のイトーキ製品を世界にアピールした。
日本でヒット製品となっている
「インターリンク」を世界に向けて発表
特に、「スピーナチェア」に対する注目度が大変高く、評判を聞きつけて訪れる人が連日押しかけた。会場では、スピーナチェアの新しい座り心地を確かめる来場者が順番待ちをするほど。イトーキ製品のレベルの高さを世界に示すための大きなきっかけとなる盛況ぶりであった。
世界的なプロダクトデザイナー、エリック・チャン氏
による「シンタシリーズ」のプレゼンテーション
来場者に樽酒を振る舞い、
日本メーカーとしてのイトーキをアピール
「スピーナチェア」には、常に人が集まり、
新しい座り心地を試した来場者に好評であった
「タシット」と「バイオテーブル4」の
展示コーナー
「タシット」の座り心地を楽しむ
来場者の姿が多く見られた
『ORGATEC(オルガテック)』とは……
ドイツのケルンメッセで2年に1度開催されるオルガテックは、オフィス家具・周辺設備、ワークプレイスのファシリティ・マネジメントをテーマするオフィスの専門メッセ。米国シカゴで開催される「ネオコン」と並び、世界最大級のオフィスイベントとして約700社が出展。各社は新作発表の絶好の舞台として、多彩な展示を繰り広げる。世界中から専門バイヤーをはじめ建築家、インテリアデザイナーなどが集結し熱気に包まれる。 |