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若田さんシャトル、打ち上げ16日以降に延期

2009年3月12日13時45分

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 【ケネディ宇宙センター(米フロリダ州)=勝田敏彦、田中康晴】米航空宇宙局(NASA)は11日午後(日本時間12日未明)、スペースシャトル・ディスカバリーの打ち上げを15日(同16日)以降に延期すると発表した。これまでに燃料系の弁の問題で約1カ月延期されているが、また燃料系で別の問題が起きた。綱渡りになりつつある日程の中、若田光一さん(45)の日本人初の長期滞在はどうなるか。

 NASAの発表によると、11日夜の打ち上げをめざして昼から燃料の液体水素を外部燃料タンクに注入していた。液体水素は気化すると危険なため、外部燃料タンクから発射台経由で水素ガスを逃がし、地上で燃やすためのパイプが接続されている。その接続部分で水素ガスの漏れが見つかった。

 これまで、関連の弁の開閉で解消してきたが、今回はうまく効かなかったため、打ち上げ約7時間前の午後2時半に急きょ延期を決めた。

 漏れは地上側の接続部分で起きたことまではほぼ判明しているが、詳しい原因はわかっていない。NASAは燃料をいったん抜いて接続部分を調べ、必要なら機器の修理や部品の交換などを検討するが、調査結果が出る予定の13日までは判断は難しい状況だ。

 漏れ自体はときどき起きているため、NASAは問題解決は可能と考えているが、原因次第では再延期の可能性もゼロではない。

    ◇

 シャトルの打ち上げ日程はいろいろな制約がある。

 今回は、打ち上げ可能なのはとりあえず「17日まで」だ。26日に打ち上げ予定のロシア・ソユーズ宇宙船が国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングする前に、先行するディスカバリーがISSから分離するという条件があるからだ。

 17日までに打ち上げられないと、ディスカバリーの打ち上げはソユーズ後の4月上旬になってしまう。

 NASAは今回の延期で、ディスカバリーの飛行期間を短縮し、船外活動の一部も中止し、なんとか「後回し」は避けようと考えている。だが、15日以降は天候もやや悪化する予報もあり、「ソユーズ前」は微妙な情勢だ。

 そうなると、若田さんの宇宙長期滞在が短くなる可能性がある。若田さんは本来、3カ月の長期滞在を予定している。ディスカバリーはもともと2月12日の打ち上げ予定ですでに1カ月遅れている。たまたま、若田さんを迎えに行くシャトル・エンデバーの打ち上げが5月から6月に遅れそうなので、3カ月間の滞在は確保される見通しだった。だが、「後回し」が起きると2カ月程度になってしまう。

 さらに今回の延期に伴って、若田さんの仕事が増える可能性もある。中止になった船外活動の一部を、ISSに滞在することになる若田さんらが担わなければならないからだ。宇宙航空研究開発機構は「1カ月以上あればISSの運用を習得でき、得られるものは大きい」という。だが、期間を要する実験などができなくなる恐れがあると気をもむ。

 最近の打ち上げ大幅延期としては、07年12月の予定が08年2月になったアトランティスがある。外部燃料タンクの燃料残量センサーの異常だったが、設計の古さが指摘された。老朽化などからスペースシャトルは10年5月の打ち上げを最後に退役を予定している。NASAは「設計は60年代のアポロ時代のもの。安定した技術だが、新しい技術も必要。シャトルを10年に退役させる理由はそんなところにもある」と説明している。

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