冬ごもりしていた虫が動きだすという「啓蟄(けいちつ)」も過ぎ、どことなく自然界に活力を感じるようになった。学校では卒業式が本格化し、巣立ちの季節を迎えた。
社会全体に躍動感が生まれてきたものの、経済活動は低迷が続く。世界的な景気悪化を受け、日本では「巣ごもり消費」と呼ばれる傾向が強まっている。
節約志向の高まりを反映し、外出を控えて家の中で楽しめる薄型テレビやゲーム機などが売り上げを伸ばしている。同じような動きとして、衣服や靴などの修理サービス業が活況を見せる。古着のリサイクル店もにぎわっているという。
倹約しながら、それなりに生活を楽しもうとする国民意識の表れだろう。こうした行動が定着するのか。再び景気が回復すれば、かつてのような消費社会に戻るのか。
見方は分かれようが、巣ごもり状態の消費を刺激すべく、定額給付金の支給が始まった。休日に上限千円で高速道路が乗り放題となる措置も近くスタートする。これで一気に経済が活気づくとは思えないが、対応次第で効果は大きく違ってこよう。
特に高速道路料金の大幅な値下げは、巣ごもり気味の人たちの背中を押すだろう。観光地に求められるのは、つつましい消費行動にマッチした戦略である。知恵と工夫の競い合いを期待するとしよう。