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中国:チベット動乱50年 権限の大半、首相に ダライ・ラマが公言

 【ダラムサラ(インド北部)栗田慎一】チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世(73)の亡命につながった「チベット動乱」から10日で50年となった。この日、ダライ・ラマ14世は、ダラムサラで記者会見し、同席したサムドン・リンポチェ亡命政府首相(70)を「私よりも権限を持つ政治指導者だ」と紹介し、政治的権限の大半を委譲したことを明らかにした。完全な引退はないものの、今後は首相が中国側との交渉などを取り仕切るものとみられる。

 会見は終始、ダライ・ラマがリンポチェ首相に助言を求める形で進み、首相が答える場面もあった。

 暗礁に乗り上げている中国との直接協議について、「(チベット側の自治構想を記した)『覚書』案の返答を待っている」と述べ、中国側が協議再開を提案すべきだと主張。「中国が超大国を目指すのならば、人口や経済、軍事だけでなく、道徳的責任を果たすことが必要だ」と語り、チベット問題の解決が名実ともに中国を超大国にすると述べた。

 また「(中国政府が)私を分離・独立主義者のようにみるのは大間違いだ」と指摘し、今後も亡命政府は高度な自治を求める「中道路線を貫いていく」と明言した。

 ダライ・ラマは50年を振り返り、「(亡命を選んだ)決断に間違いはなかった。インドはチベット難民に教育、医療など多岐にわたって最大限の支援を与えた」と感謝。「もし(高度な自治が実現した後に)中国とインドが戦争をしたら、チベット人はインド軍を攻撃できない」と笑わせた。

 一方、「今後も台湾を訪問するのか」との質問には、「訪問は重大な決断が求められる」と明言を避けた。ダライ・ラマは01年まで計2回台湾を訪ね、中国側が猛反発した経緯があり、中国を刺激する発言を控えて対話継続の意思を示したものとみられる。

 会見に先立ち、ダライ・ラマ寺院で「チベットの再興」を願う記念式典があり、約5000人が参加。式典でダライ・ラマは「チベットの苦難はまだまだ続く」と覚悟を求める一方、「しかしこの50年で世界はチベット問題に理解を深めてくれた。非暴力を貫けば、チベットの正義は証明される」と訴えた。

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 ■ことば

 ◇チベット亡命政府の中道路線

 チベットの独立を求めず、「高度な自治」の実現を求める穏健な立場。チベット人と中国人が平等で平和的に共存する社会を目指す。08年11月にあった亡命チベット人諸組織の代表者会議で行われた投票でも、約7割が中道路線の継続を支持した。一方、独立を求める急進的な青年組織の一部には中道路線への不満もくすぶる。

毎日新聞 2009年3月11日 東京朝刊

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