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きょうの社説 2009年3月11日
◎北陸の「消費不況」 不況下の節約はほどほどに
日銀金沢支店がまとめた三月の北陸の金融経済月報は、目を覆いたくなるような数字が
並んだ。製造業の生産は医薬品を除いて大幅に減少し、設備投資も下げ止まる気配が見えない。主力の電気機械や一般機械などは、海外需要が回復しない限り、短期間で上向く可能性は低いだろう。個人消費については「雇用・所得環境が一段と厳しさを増している中で、広範に弱まっ ている」と記述され、生産や設備投資の大きな落ち込みに比べて、あまり目立たない。それでも、GDP(国内総生産)の約六割を占める個人消費の落ち込みは、わずかでも景気への影響が極めて大きい。地方経済の落ち込みを抜き差しならぬ状況に追い込むのは、じわじわと進行する「消費不況」なのである。 景気が悪くなると、家庭も企業もわれもわれもと節約に夢中になり、出費を削ろうとす る。生活防衛を優先させたくなる気持ちは分からぬでもないが、社会全体が節約一辺倒になれば景気を一層悪くしてしまう。言うはやすく、行うは難しかもしれないが、国民一人一人が地域経済の活性化も重要だという共通意識を持ち、節約はほどほどにして消費を増やすよう心掛けたい。 これから支給される定額給付金は、消費の落ち込みに歯止めをかけ、地域経済を上向か せるチャンスである。特に不況下では、お金を使うことが景気対策になると割り切って、たとえば省エネタイプの家電製品や地上デジタル放送対応の薄型テレビ、洋服、家具、装飾品など、欲しかったものを買うお金の一部に定額給付金を充ててほしい。買いたいものが特にないというのであれば、スポーツクラブやカルチャー教室に通ったり、演劇や音楽会に足を運ぶなど、自分に投資してみてはどうか。 内閣府の景気ウォッチャー調査では、街角の景気実感は、落ちるところまで落ちたあと 、直近の数字が二カ月連続でアップしている。定額給付金に加えて、四月からハイブリッド車購入の優遇税制や住宅ローン減税が実施され、一足早く高速道路料金の割引も始まる。冷え切った国民の消費マインドを温め直す絶好の機会である。
◎コンテンツ見本市 広げたい北陸の可能性
石川県や中部経済産業局による「石川コンテンツマーケット」が十五日に金沢市の県地
場産業振興センターで開催される。映像やコンピューターグラフィックス(CG)、ゲームなどコンテンツ(情報の内容)作品制作者の登竜門と位置づけられる見本市で、今年は石川だけでなく北陸三県に出品を呼びかけたところ、昨年の二倍以上の四十五団体が出展するという。コンテンツ産業は首都圏に集中しているが、デジタル通信技術の進化で、北陸も映像コンテンツなどの制作・発信拠点になる可能性は広がっており、金沢での見本市が一つの起爆剤になることを望みたい。経済産業省はコンテンツ産業を今後の経済成長戦略、知的財産戦略の柱の一つにしてお り、現在約十四兆円の市場規模を二〇一五年までに十九兆円規模に拡大することをめざしている。その適地はいまや首都圏に限らず、ブロードバンド(高速・大容量通信)化によって地方でもコンテンツ産業の全国展開が十分可能になっており、アニメ業界などでは、より良い制作環境を求めて地方にスタジオを設置する動きも目立つ。 北陸の好例として、南砺市城端に拠点を置いて人気アニメ作品を送り出している映像制 作会社「ピーエーワークス」を挙げることができる。アニメ作品の人気につれて、その舞台である城端を訪れる若者らが増加し、地域全体に活力をもたらしているのである。ピーエーワークスの活動は、コンテンツ産業における地方の時代の先取りと言え、地方の方がむしろアニメーターという制作者の育成に適していることを示してもいる。 地域独自の資源を生かしたコンテンツ産業の創出も地方だからこそ可能である。伝統産 業などの映像化でコンテンツ企業と地場産業の双方に利益をもたらそうという石川県の取り組みは一つの有力な方法である。人材育成も課題であるが、米アカデミー賞を受賞した滝田洋二郎氏ら北陸出身の映画監督の活躍や、このところ活発な郷土ゆかりの映画、アニメ制作は、コンテンツ制作をめざす若者らの良い刺激になろう。
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