きょうのコラム「時鐘」 2009年3月11日

 宿敵韓国との戦いで盛り上がる野球の国・地域別対抗戦、WBCは、手かせ足かせのある大会である。投手に球数制限があり、好投するエースでも途中で降板する

われらが松井選手の姿がないのも寂しい。前年けがをした選手は、所属球団が出場を断れる。大事な背番号55に、球団が無理をさせるはずがない。投手の球数制限も、同じ理由である。米大リーグと選手会が始めた大会は、新たな金もうけのオープン戦のようなもの。肝心なのは大リーグ本番であり、その前のけがや故障は禁物である

政治の舞台では、失点や失策があっても与野党の「エース」が続投する。自軍からは危ぶむ声も出るが、降板しない。相手も甘い球を狙うが、互いにこのまま総選挙までの続投を望んでいるように映る。肝心なのは総選挙であり、その損得勘定で動く

似たような戦いだが、野球と政治はまるで違う。日の丸戦士は、国の誇りをかけて世界一を目指し、ファンの期待も熱い

胸にバッジを着けた日の丸議員は、世界一早い経済危機の克服を口にする。が、もう大きく遅れを取ってしまい、周囲に失望の声が満ちる。