【事務所報告】桜井淳所長の最近の講演内容-モンテカルロ研究の現状と課題-
テーマ:ブログ【講演要旨】米ロスアラモス国立研究所は、連続エネルギーモンテカルロ計算コードの開発に着手してから半世紀弱になり、その間にかかったあらゆる費用を合計すると、数十億円にも達しますが、それでもなお完成しておらず、MCNP version 6の公開も大幅に遅れており、これまでの公表資料から判断すれば、version 6に追加される新機能は、①50GeVまでの陽子輸送計算、②いわゆる"フロリダ大学方式"の自動分散低減計算、③それから、非公式ではあるが、私と開発リーダーの間の私信では、中性子断面積の共分散を取り入れた総合的誤差評価とされており、それぞれの歴史的意味は、①が世界のモンテカルロ計算の多種類粒子化と高エネルギー化、②が長い間の念願であった誰にでも確実に的確なウェイト下限値が設定できる遮蔽体物質深層透過計算の救世主的機能と解釈できますが、②と③が実用化されれば、世界において、まだ、どこも成功していない、本当の意味でのモンテカルロ計算の普及を決定的なものにする"ロスアラモス革命"が達成されることになりますが、②も③も単純ではなく、version 6でどこまで解決され、version 7に何が残されているのか、大変興味ある問題ですが、日本では、原子力施設の許認可において、モンテカルロ安全評価法の採用は、臨界安全解析では、トラック競技にたとえれば、すでに、第四コーナーに達しており、遮蔽安全解析では、大幅に遅れ、原子力機構-加速器機構共同建設の陽子加速器研究複合施設J-PARCにおいて初めて採用されたに過ぎず、トラック競技にたとえれば、まだまだ、第一コーナーにおり、これからといった状況にあり、私は、数年以内に第四コーナーまで持って行きたいと考え、まず、申請側と審査側が審査の共通認識を持てるような標準的なハンドブック(『モンテカルロ計算ハンドブック』、日本原子力学会、2006)の作成や申請側と審査側に携える専門家の養成(各種モンテカルロセミナー開催、なお、日本のモンテカルロ教育の現状については、『炉物理の研究』、日本原子力学会、No.61,(March, 2008)参照)を行っており、モンテカルロ安全評価法が原子力施設の標準的手法に位置づけられるためには、まだまだ、先が長く、もっと、努力しなければならないと痛感しており、日本原子力学会「最適モンテカルロ計算法」研究専門委員会の委員各位には、がんばっていただきたいと期待しています。
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