携帯電話やパソコンが普及し、それがインターネットに接続することによって音楽や映像などのコンテンツの流通のあり方が大きく変わってきた。そこでは、著作権の管理についても新しい仕組みが必要となるはずだ。
例えば音楽のネット配信を行う場合、配信業者は楽曲を識別する記号を調べ、その楽曲を管理する団体を特定して報告書を作成するなど、面倒な手続きが必要となる。
著作物にまつわる権利関係の情報を集めてデータベースをつくり、各種の手続きも行えるようにしたら便利だ。手間とコストが節約できれば、コンテンツ配信ビジネスの拡大に役立つはずだ。
そうした役割を果たす機関として著作権情報集中処理機構(CDC)が設立された。音楽配信事業者や著作権管理を行っている団体などを母体に、政府の支援も受けて、1年ほどかけてデータベースをつくり、来春のサービス開始を予定している。
著作権管理のあり方をめぐっては、公正取引委員会が先月末、日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し、独占禁止法にもとづく排除命令を出した。
JASRACが放送局と結んでいる楽曲使用料についての契約が、他の著作権管理業者の新規参入を阻んでいるというのが理由だ。
放送局は音楽放送事業にまつわる収入の一定割合を支払えば、JASRACが管理する楽曲を自由に使える。そうした契約が、他の著作権管理業者を市場から排除する結果につながっているとして公取委は、楽曲使用料の徴収方法を改めるよう求めた。
包括契約ではなく、放送局が使用した楽曲ごとに使用料を個別に徴収する方式にすべきだろう。しかし、現実にはそれを実現する基盤がない。CDCがサービスを開始すれば、放送での楽曲使用料の問題も解決に向かうはずだ。
一方、テレビ番組をインターネットを通じて海外に転送するサービスについて知的財産高等裁判所は今年1月、初めて適法の判断を示した。
裁判では、インターネットに接続した子機を使って、国内に設置した親機を操作し、録画した番組を海外で楽しめるというサービスの適否を争った。
地裁段階では、親機が業者により一括管理されていることから、業者を複製の主体と認定し違法と判断した。しかし、知財高裁は著作権法で認めている私的複製にあたると認定した。
情報技術の発展は、違法コピーの横行など著作権に対する脅威とみられてきた。しかし、後ろ向きの対応だけでは、時代に取り残されてしまうのも事実だ。
インターネットの登場を想定していない著作権法の改定も含めて、柔軟な対応が必要だ。
毎日新聞 2009年3月11日 東京朝刊