「代表を辞めた方がよい」との回答が61・1%に上った。共同通信社が七、八両日に実施した全国電話世論調査で、民主党の小沢一郎代表に対する厳しい結果が出た。小沢氏はきちんと受け止めなければならない。
西松建設の巨額献金事件に絡み、小沢氏の公設第一秘書が政治資金規正法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。小沢氏は秘書逮捕後の記者会見で「何らやましいことはない」と潔白を強調し、代表を辞任しない意向を表明した。さらに「衆院選が取りざたされている時期の異例な捜査だ」と検察当局との全面対決姿勢を打ち出した。
世論調査では代表続投支持は28・9%にとどまった。小沢氏の説明を78・4%が「納得できなかった」と答え、大多数は不信感を持っていることが分かった。「納得できた」はわずか12・4%だった。
記者会見で小沢氏は、献金が「何らかの形で私や私の秘書が相手方に対して便宜を供与したとか、あるいは利益を与える行為を伴っていた事実は全くない」と言い切った。一方で、具体的な献金の流れは「秘書を信頼し任せてあるので、一つ一つのことは分からない」と肝心な点をあいまいにした。世論調査が、小沢氏の説明を納得しないと批判するのは当然だ。
捜査の進展に伴い、西松建設と小沢氏側の密接な関係が次々に伝えられる。小沢氏が潔白に対する説得力のある説明をできないようでは辞任論はますます高まろう。
世論調査では政権の枠組みについて「民主党中心の政権」が望ましいとの回答が43・5%と、先月十七、十八両日の前回調査に比べて9・9ポイントも減った。麻生太郎首相と小沢氏の「どちらが首相にふさわしいか」は、小沢氏が33・6%と、前回比12・8ポイント減だ。有権者は、次期衆院選で小沢民主党への政権交代の期待を裏切られ、失望が広がったとみられよう。
巨額献金事件をめぐっては、小沢氏側だけでなく自民党側にも疑惑が浮上した。ところが、元警察庁長官の漆間巌官房副長官が自民党議員への波及を否定したとされ、公平、中立の検察と政府の関係に疑念を抱かせる。政府高官としてあってはならないことだ。
世論調査結果でくみ取るべきは、不透明な政治とカネへの国民の批判の高まりである。政治不信を取り除く国会の自浄努力が求められるのに、検察の捜査の行方をかたずをのんで見守っている状況は許されない。
オバマ米政権が発足して初めての米ロ外相会談がジュネーブで開かれ、第一次戦略兵器削減条約(START1)の後継となる新たな核軍縮条約締結について、年内合意を目指す方針で一致した。
クリントン米国務長官とロシアのラブロフ外相は、ブッシュ前米政権下で冷却化した米ロ関係を「リセット」すると表明した。関係修復へ向け新たな一歩を踏み出した意義は大きい。
米ロ関係は、ロシアが神経をとがらせる北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大や欧州でのミサイル防衛(MD)計画などで対立、昨夏はグルジア紛争も加わり、冷戦後最悪といわれるほど亀裂が深まった。
「核兵器のない世界」を目指すと訴えるオバマ政権にとって、アフガニスタンの安定化やイラン、北朝鮮の核問題への対処などはいずれもロシアの協力が不可欠だ。年内合意で一致した核軍縮交渉は、信頼関係を構築する試金石ともなろう。
米ロ両国は、戦略核弾頭の総数を六千個以下にするなどのSTART1の削減義務を既に達成しているというが、条約は今年十二月五日で失効する。これを踏まえ、検証・査察措置を含め一層の核削減を追求するのが新条約の狙いだ。世界の核の大半を保有する米ロ両国の交渉の行方は、世界的な核軍縮の流れや、核拡散防止条約(NPT)体制の方向性をも決定づける歴史的な重みを持とう。
ただMD計画などの難題解決が交渉の足かせとなる懸念もあり、信頼醸成への道のりは平たんとはいえまい。四月にはロンドンでオバマ、メドベージェフ両大統領の初の首脳会談も開かれる。新条約へのハードルは高いが、超大国の責任を自覚し、核軍縮の停滞打破へ向け大胆かつ着実に踏み出してほしい。
(2009年3月10日掲載)