3月10日のながさきニュース
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長崎新聞
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「記者は間違い認めること重要」 ジャーナリスト・上杉氏の講演要旨
| 記者クラブ問題などを論じた上杉隆氏=7日、長崎市興善町の市立図書館 |
長崎新聞労組が七日開いた「3・1市民集会」で、ジャーナリストの上杉隆氏が「崩壊する政治とメディア」をテーマに講演。記者クラブが抱える問題やメディア・リテラシー(読解能力)の在り方について提言した。
(違法献金事件で公設秘書が逮捕された)小沢一郎民主党代表の記者会見に出席した。民主党は記者クラブを開放しており、私のようなフリーも入れる。私は「政治団体から政治資金管理団体に入金するときにチェックしないのか」と質問した。小沢代表は「ノーチェックです」と答えた。少なくとも会計責任者がチェックするのは当たり前の業務。続けて疑問点を聞こうとしたが、ほかの質問者が「政局はどうなりますか」などと話をずらしてしまった。
永田町を取材している記者クラブの記者は、政治資金規正法に関してよく理解していなかった。「政局は」などと、どうでもいい質問は誰にでもできる。本来、聞くべき質問を聞かないで続いてきたのが日本の記者クラブ制度かなと思う。さらに、自民党の記者会見にはフリーや雑誌が入れず、厳しい質問が出ることはない。日本の政治や行政の問題は、記者クラブの機能不全が最大の理由ではないか。
米国の大統領選は、大統領を目指す政治家がテレビや新聞に二年間にわたって批判にさらされることで磨かれ、記者自身も厳しい質問をするために勉強し、磨かれる。互いが切磋琢磨(せっさたくま)しつつ、メディアを通じ、国民には政治教育にもなっている。
(辞任のきっかけとなった)中川昭一前財務相の記者会見を、当初の報道では、どのメディアも「もうろう会見」などと表記し「お酒」という言葉を使わなかった。後に同行記者団も一緒に酒を飲んでいた事実が分かった。知っていて書かなかったのは読者や視聴者にうそをついており、海外だったら全員解雇になっていると思う。
海外のジャーナリストには考えられない「メモ合わせ」(政治家のぶら下がり取材などで他社の記者同士がメモ内容を確認すること)もしている。政治とメディアが互いに健全な緊張関係を築けない不幸が、社会全体にまん延しているのではないか。
海外のメディアで制度として良いのは「訂正欄」。日本と違い、記事の訂正が毎日、目立つように載っている。重要なのは間違いを犯さないことではなく、間違いが起きたらすぐに認めること。昨秋展開された「解散報道」も間違いだったが訂正されていない。
訂正する新聞に触れていると「そもそも新聞は間違いを犯す」と子どものころからリテラシーができるようになる。新聞に過度に期待せず、自分で情報を検証できる。「間違いは悪」と無謬(むびゅう)主義に陥っていては、間違いが起きると逆に極端なメディア不信につながりかねない。
署名記事を書き、間違いを間違いと認める当たり前のことをやればメディアは復活する。政治とメディアに緊張関係が生まれ、政治教育、メディア教育を含めたリテラシー、考える力がどんどん国民にも高まるだろう。
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