警察や金融機関が警戒を強める中で、県警が把握した県内での1、2月の振り込め詐欺被害が14件と前年同時期から倍増。被害額は約3・5倍の1842万8900円に上った。これから定額給付金の支給につけ込んだ新手の詐欺も予想され、県警などは注意を呼びかけている。【坂本太郎】
●架空請求で
14件の被害のうち、ATM(現金自動受払機)から振り込んだのが9件で、窓口からは3件、エクスパックを使ったものが2件だった。
「お金が戻ってくる」などとだましてATMを操作させる還付金詐欺はゼロ(前年同時期3件)だったが、架空請求は8件(同1件)と大幅に増えた。そのうち3件は有料サイトへ接続したとして代金を請求されるケース。また4件は送られてきたはがきに覚えがないと思いながらも、現金を振り込んでしまったという。被害総額は前年同時期の2万円に対し、1000万円に上っている。
オレオレ詐欺は2件(前年同時期ゼロ)で、いずれも身内を装い仕事上でのトラブルがあったといってだます手口だった。
●制止聞かず
各金融機関は振り込みに訪れた人に確認をするなど対策に力を入れている。
秋田銀行牛島支店の窓口に1月9日、女性(64)が「約200万円分の小切手を受け取るため、手数料5000円の為替をどうやって送ることができるか」と相談に来た。対応した同行員の菅野歩美さん(25)は「明らかにあやしい」と感じ、すぐ上司に相談。駆けつけた警察官によって女性は被害を免れた。
県警も各署に金融機関からの振り込め詐欺問い合わせ専用電話を設置。2月13日の年金支給日には「集中警戒日」として延べ298人、車両112台を使いATM設置場所での警戒を強化するなどした。
その一方で、行員が制止しても「孫に送るからいいんだ」などと頑として聞き入れずに結局被害に遭うケースもあった。
対策室の担当者は「振り込め詐欺の存在は知っていても、自分が被害に遭うとは思っていない人もいるのでは。被害状況を分析して、予防に努めたい」と話した。
●給付金装う?
さらに県警は自治体が申請書発送を始めたり準備をしている定額給付金に絡む詐欺が「新たな手口として十分に考えられる」と警戒を見せる。
各自治体に対し、広報に「支給のためにATMに行ってもらうことはない」ことなどを記載するよう要請。県民に対しても「『窓口が大変込み合っているのでATMに行ってください』といってだまそうとするケースが予想される。十分気を付けてほしい」と注意を呼びかけている。
毎日新聞 2009年3月10日 地方版