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2009-03-03 国籍法が改正されましたが問題山積みです

今年1月1日に改正国籍法が施行されました。法務省HPにもアップされています。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji163.html

JFCネットワークでは今回の国籍法改正により日本国籍取得が可能となったケースの国籍取得の手続きを進めています。しかし、各法務局の現場の対応はまだまだ統一されなく、「偽造認知防止」が先にありで不愉快な対応がしばしばです。法務省はあくまでも「偽造が疑わしい場合に限り資料を求める」と言っていますが、法務局の現場ではすべての書類が揃わないと受理できないために、「念には念を入れて」書類を揃える傾向になっています。そのため、こちらにしてみれば不要だと思われる書類までも求められることもあり、本人たちの申請に過度な負担がいかないように面倒でも1件1件細かくチェックし必要となれば弁護士さんに協力を求め法務局や法務省への確認をしています。提出書類は以下の通りです。

<提出書類>

1 認知した父の戸籍及び除籍謄本又は全部事項証明書

※任意認知の場合は、父の出生時から遡ったものですが、裁判認知の場合には、子どもの出生時からのものでOK(法務省に確認済)。

2 国籍の取得をしようとする者の出生を証する書面

※日本で生まれている場合には、大使館が発行したReport of Birth&日本語訳および出生届の記載事項証明書(但し、役所は外国籍の場合には10年を超えると処分するので各市町村役場に確認する必要があります。市町村役場によっては10年を超えても保管している所もあります)

フィリピンで生まれている場合には、NSOから発行されたCertification of Live Birth(出生証明書)&日本語訳

3 認知に至った経緯等を記載した父母の申述書

※裁判認知の場合には必要ありません。また、DNA鑑定などを行っている場合にも父の申述書がなくても大丈夫です。任意認知でしかも父からの協力が求められない場合、母親からの「理由書」を提出します。

4 母が国籍の取得をしようとする者を懐胎した時期に係る父母の渡航履歴を証する書面

※母が子どもを懐胎した当時の旅券を持っていればいいのですがそれがなければ法務省で「個人情報開示請求」をすることになります。これは本人しかできません。http://www.moj.go.jp/DISCLOSE/disclose05-05.html

※父からの協力を求められなければ「理由書」を提出します。

5 子どもの懐胎した時期からの父の附票または住民票

※父からの協力が求められなければ「理由書」を提出します。

6 母の外国人登録原票記載事項証明書(上陸年月日の入っているもの、登録時からの居住暦が記載されているもの)

特に問題だと思うのは準正ケースに対しての取り扱い。先日、某法務局へ準正子(15歳本人申請)の手続きに行ってきましたが「改正後の施行規則で定める書類を添付しなければ受付できない」と言われました。ケースとしては任意認知。両親は離婚。母子は短期滞在の在留資格で変更申請中(母、定住者へ、子は日本人の配偶者等へ)です。改正前の運用に従えばその場で受け付けてもらえるだけの書類をバッチリ準備して行きました。

具体的には、父の出生時からの全戸籍謄本、父及び母の申述書、渡航記録、父の全住民票又は戸籍の附票、母の全ての居住歴が記載された外国人登録原票記載事項証明書、などです。

「なぜ準正子に対してまで偽装認知防止のための書類を要求するのか」と尋ねたところ、「本省から認知子も準正子も添付書類について同じ扱いをするように」との指示が来ているので、窓口では異なる扱いをすることはできない、との返答でした(窓口の担当者も、準正子にこれらの書類を要求することは不合理だと思っているが、上の指示なのでいらないとは言えない、とのことでした)。

そもそもこのケースは、法改正前に出生し、法改正前に認知され、結婚しているケースです。改正前であれば問題なく受理されていたはずの書類では受け付けてもらえなくなってしまったのです。準正子にとっては、今回の法改正により非常に国籍取得のハードルが高くなってしまいました!! 

これを弁護士さんに報告をして法務省民事局民事第1課に電話をして頂きました。以下にその報告をします。

****************** 00:53

準正子の取り扱いについて確認したところ、やはり「準正子、認知子を区別せず改正された施行規則で定める書類の提出を求めている」との回答でした。理由を尋ねたところ、「提出書類について準正子と認知子とを区別することは憲法上問題がある、と考えている」とのことでした(「憲法上問題がある、ということで今回の法改正がされたので」という返答だったかも知れません)。

 全く笑止千万な話です。裁判及び法改正の過程を通じ、「準正子について父子関係の真否の確認なしに国籍を与えることには問題がある」という意見はただの一度も出ていないはずです。裁判を経て法改正をした結果、準正子の国籍取得のハードルが高くなってしまうのはどう考えても理不尽な話です。

 付帯決議に照らしてみても全く整合性がありませんし、法改正に反対し、厳格な運用を求めて付帯決議を提案した議員の方々も、このような事態を予想も希望もしていなかったと思います。

 このケースの当事者(母子)は昨年8月に短期滞在のビザで来日し、その後子は「日本人の配偶者等」、母は「定住者」への変更申請をしていますが、半年近く経過した現在も結果が出ておらず、働くことのできない母親は複数の友人から多額の借金をしており、その生活も人間関係も相当危険な状態になっています。私個人としては裁判をやってでも、という気持ちはありますが、おそらく本人は時間的に耐えられないだろうと思われます。

 個別のケースの救済としてというよりも、このような運用を改善しなければならないと思います。

弁護士 近藤博徳