2009年3月7日11時53分
中央郵便局を一部保存したJPタワー(仮称)の完成予想図=日本郵政提供
銀行倶楽部(東京銀行協会ビルヂング)
日本工業倶楽部
大手町野村ビル
鳩山総務大臣の発言以降、注目を集める東京中央郵便局の建て替え問題。一部を残して高層化するのか、全面保存するのか。6日の都市計画決定に至るまでの間、日本郵政側の完成予想図も繰り返しメディアに登場している。こうした保存法は前例も多いが、古い建物にタワーを載せたような姿に、違和感を抱いている人もいるのではないだろうか。(大西若人)
日本郵政は今回の計画で、同社が設置した「歴史検討委員会」の議論を尊重したという。その報告書には「歴史継承手法」として、全体保存と部分保存の両論が併記されている。
全体保存を主張する委員が多かったとされるが、鈴木博之・東京大教授(建築史)もその一人。「今の計画案では解体したのも同じ」と断じる。吉田鉄郎の設計で1931年に完成した郵便局は、日本の戦前のモダニズム建築の先駆とされ、文化庁も重要文化財級の価値を認めている。
鈴木さんは、「周囲の古いビルは8階建てぐらいが多いが、余裕をもって天井を高くとり5階建て。モノを動かすという機能を吟味したシステム全体が、外観にも表れている。これこそパブリックなデザイン」と評価する。だから内部を一部しか残さない今の案では意味がない、という。
こうした、一部を保存・復元し上部に高層棟を配する、という方法について、中川理・京都工芸繊維大教授(近代建築史)は「日本火災横浜ビル(89年完成)あたりが早い例ではないか」と話す。中央郵便局の近くにも、銀行倶楽部(東京銀行協会ビルヂング、93年)や大手町野村ビル(94年)、日本工業倶楽部(03年)などの例がある。
ある程度の部分を残し登録文化財であり続ける工業倶楽部のようなケースがある一方、外壁の一部だけを残し、高層ビルの下層に薄皮のように張り付けた「腰巻き保存」(中川さん)のようなケースも。解体して建て替える歌舞伎座も、予想図を見る限り、似たデザインになっている。「欧米ではほとんど見たことがない」と中川さん。