1)第44回学生生活実態調査は、79大学生協が参加、19,057人から協力を得た。ただしここで紹介する数値は、経年での変化をより正確にするために、毎年指定している35大学生協で回収したものの平均値である。その回収調査票数は、9,999票(回収率:35.7%)となっている。
2)全体的に昨年の構成比と比べ、大きな差異がなく経年での比較にも耐え得る調査となった。
3)今年に限ったことではないが、専攻別の男女の構成比は、文科系4.3:5.7、理科系7.7:2.3、医歯薬系4.3:5.7となっており、文系と医歯薬系の特徴は女子の特徴の影響を受けやすく、反対に理科系の特徴は男子の特徴に影響を受けやすくなっている。
A.さらに仕送りは減り、生活の見通しは「苦しく」
〜〜〜下宿生の食費は、1977年以降最低に
1ヶ月の生活費
①自宅生
全国平均の自宅生の「収入合計」は62,900円で、07年から430円減。内訳は「こずかい(+580円)」、「奨学金(+780円)」の微増に対して、「アルバイト代」が1,100円減。
支出合計は59,980円で07年より990円増。「食費」、「書籍費」、「その他」、「貯金・繰越」は07年より増。中でも「貯金・繰越」は11,880円から14,580円へと2,700円も増えた。
②下宿生
「収入合計」は5,370円(4.0%)減。増加したのは「奨学金(+600円)」のみで、「仕送り(-2,350円)」、「アルバイト(-2,180円)」、「その他(-970円)」は減。
「支出合計」も1,520円減。増加費目は「貯金・繰越(+2,410円)」のみで、その他の全項目、「食費(-680円)」、「住居費(-1,400円)」、「交通費(-250円)」、「教養娯楽費(-360円)」、「書籍費(-110円)」「勉学費(-220円)」、「日常費(-190円)」、「電話代(-320円)」、「その他(-400円)」、が減っている。
①自宅生・下宿生とも収入が減っている。
②特に下宿生の収入が5.370円、4.0%と大幅に減っている。
③仕送り「0」の下宿生は、07年より0.4ポイント増え、8.3%となった。仕送り5万円未満は、2000年10.4%だったものが、05年に18.4%に、08年では20.7%と、初めて20%を超えた。
④下宿生の支出で、「貯金」を除き全ての項目で減っているのは、73年以降唯一。
⑤特に食費は、77年以降(76年が22,970円)で最低の金額に。
⑥「暮らし向き」の「今後の見通し」で、「苦しくなる」と答えた学生が、全体では32.2%となり07年より5.6ポイントも増加した。
⑦「日常気にかかっていること」でも「生活費やお金のこと」が07年より4.1ポイント増えて50.6%になった。
⑧今後、「節約や工夫をしたい支出費目」では、上位5項目のうち節約しにくい「交通費」を除き、「外食費」「衣料品代」「嗜好品」「飲酒代」が全てポイントを上げており、今後も切り詰めた生活を覚悟しているようである。
⑨今回初めて「経済格差を感じているか」の設問をしたが、「感じている」が46.0%であった。特に寮生では、60.0%と高かった。
B.いっきに広がった就職への不安
〜〜〜就職を予定している3年生の9割が不安を感じている
①「就職について不安を感じている」が71.3%から76.0%に。1年生が、67.7%から74.6%、2年生が75.7%から80.2%、3年生が80.7%から82.4%へ。元々就活に直面している3年生は不安が強かったが、1〜2年生にも急激に不安が広がっている。
また、理系が68.4%だったのが74.3%へ、医歯薬46.2%だったのが60.9%へと急増しており、本来就職に強いと思われている分野の学生たちにも広がっており、学年と専門を問わず就職への不安が学生全般へと広がっている。
②今年初めて学部修了後の進路を聞き、就職予定者(55.2%)と院進学予定者(26.8%)それぞれに就職への不安を聞いた。
就職予定者を「100」とした場合、「不安を感じている」は81.3%だが、就活開始の時期に当たる3年生では約9割(88.7%)が不安を感じている。同じく、「とても感じている」学生が、半数(46.7%)にも及ぶ。
③「日常気にかかっていること」で「就職のこと」が07年より3.4ポイント増えて44.5%になった。06年は35.0%だったので、2年間で10ポイントの上昇。
この点でも、1年生が、25.7%から29.0%、2年生が42.8%から47.7%、と1〜2年生に不安が広がっていることを裏付けている。
〜これから入学する方たちへ
A:先輩たちの1週間と1日は?
① 通学時間 下宿生の通学時間は約15分であり経年での変化はないが、自宅生の通学時間が片道71.9分と、ここ10年間は長くなってきている。往復では2時間24分かけている。
② 登校日数とコマ数 登校日数は平均で4.6日であるが、1~2年生は5日前後、3~4年生は4日前後となっている。特に1年生は、登校日数5~6日が、82.3%占めている。登校した日の出席コマ数は平均で2.6だが、1年生は3.1コマ、学年が高くなるにつれて少なくなり4年生では1.2コマとなっている。専門別では、医歯薬系が3.1コマと多い。が高い。
③ 登下校時間 登校時間は、「8時~」が37.1%と一番多く、次に「10時~」の26.5%となっている。以前と比較すると「9時~」が減り、その分「8時~」にシフトしている。特に1年生は、55.5%が「8時~」に登校している。下校時間では、「16時~」が23.9%と一番多く、次に「18時~」の20.5%となっている。19時以降下校する学生は、平均で21.2%だが、3年生では33.9%と高くなっている。
④ 滞校時間 平均で7.5時間となっており、1年生が約8時間、3~4年生が約7時間となっている。専門別では、文系の7時間に対して医歯薬系が8.3時間と長い。
⑤ アルバイト日数と時間 今年初めて、アルバイトの勤務日数・勤務時間・時間帯を調査しました。勤務日数は、1週間に2日ないし3日が多く、平均では2.7日となった。また、時間については4〜5時間が多く、平均では4.7時間となった。また、アルバイト開始時間では、18:00〜21:00が約半数(47.3%)をしめている。*詳しくは「アルバイト」のところで詳述。
◎ 以上を参考にそして、05年に行った調査数字も参考に、「自宅生でアルバイトをする平均的な1日」は下記のようになった。なお、下宿生は通学時間が15分となるが、他の時間については、自宅生と下宿生の差は現在の項目では出ていない。
B:大学への満足度は?
① 大学を選んだ理由 今通学している大学を選んだ理由の、第一位は「学びたい専門分野があった」45.6%、第二位「自分の学力(偏差値)に合っている」32.0%、第3位「通学に便利」15.5%と続く。「学びたい専門分野があった」は医歯薬系で高く55.5%。設置者別に見て差が大きいものは「自分の学力・・・」(国立39.9%、私立21.8%)、「有名だから」(国立8.6%、私立17.7%)、「学費が安かったから」(国立10.4%、私立3.2%)、「附属高校から」(国立0.0%、私立7.7%)がある。
② 第一志望か、そうでなかったか 今通学している大学が、第一志望だった学生は60.1%で、07年よりも2.8ポイント減っている。無回答者の増がありつつもここ2年間は減少傾向となっている。
③ 授業に関しての満足度 授業に関しての満足度は、総体的に上昇傾向にあり、それぞれ60〜80%の範囲で満足している。07年を上回った項目は「専門的な知識が得られる」「先生が授業に熱心」の2項目であった。ただし、「授業全般への満足」は、4年前と比べ11.4ポイント上回ってはいるが、なお55.0%に止まっている。
④ 人間関係の満足度 人間関係では全ての項目で上昇している。友人や先輩後輩の学生同士の関係では、「まあ」も含め「不満」を訴えているのは20%前後である。それに対して、改善されているとはいえ、先生や職員との関係では、「不満」を訴えている学生は40%前後となっている。
⑤ 大学への満足度 今の大学に入ったことに満足している学生は、81.0%となっており04年以降確実に、満足度を上げている。特に「満足」と言い切っている学生が、04年の31.9%から38.6%へと増えているのが目立つ。また卒業する4年生で高くなっており、大学の努力が反映していると思われる。
⑥ 第一希望である学生とそうでない学生の評価 やはり、全般的に第一志望ではない学生の方が、相対的には大学への評価は否定的な傾向になった。しかし、「大学が好き」83.8%、「学生生活が充実している」83.1%など決して低い評価ではない。また学年が上がるに連れ評価は上がり、「充実している」では、「第一志望の学生」は1年生の時に88.3%が4年生で88.1%と下がっているのに比べ、「ではない学生」は82.7%から87.5%と逆にあげており、ほとんど差がなくなっている。他の項目でも「ではない学生」は、1年生時には低い満足度が4年生で高くなっている。やはり大事なのは、入学後の前向きな姿勢である。
C:アルバイトの実態は?
①現在アルバイトをしている人は64.7%。自宅生71.4%、下宿生58.1%、寮生62.2%と自宅生の就労率が高く、性別では男子60.2%に対し女子70.6%と女子が高い。また学部別でも文系69.0%、理系60.6%、医歯薬60.5%と差がある。
②1週間の勤務日数は3日19.4%、2日19.1%、1日と4日11.2%の順に多く、1日の勤務時間は5時間が14.2%、4時間14.1%が多い。驚くことに、7時間以上も10.4%いる。
③時給(複数のアルバイトをしている場合は最も勤務時間の長いものについて回答)は地域毎に傾向が違うが、全国平均額は1,071円。800円台18.2%と、900円台11.8%に多く分布している。時給の平均額が最も高い地域は、1都3県の1,135円で、金額帯は900円台が18.9%と最も高い。時給873円で最も低い九州を始め、北海道、中国四国では700円台が20%以上で最も多く分布している。
④08年は自宅生も下宿生もアルバイトでの収入を減らした。この減らした要因は、「時給の減」ではなく、「半年間のアルバイトの経験」及び「月々のアルバイト」双方の減によるものと推測できる。減収が激しい下宿生の「半年間のアルバイトの経験あり」は07年73.8%だったものが70.2%に、「月々のアルバイト」も60.1%が57.9%に減っている。特に1年生での就労率が72.2%から66.9%へと5.3ポイントと大きく低下している。アルバイトを自粛しているのか就労機会が減っているのかは定かではない。
⑤アルバイト収入の用途は、「衣類・バック」「生活のゆとり」「生活費の維持」「旅行・レジャー」「サークル費用」の順で高い。男女差がくっきり出ており、女子では「衣類・バック」「旅行・レジャー」が高く、男子では「生活のゆとり」「生活費の維持」が高い。
(1)食生活に関して
①大学生協も活動を進めている「朝食の摂取率」は、平均では70.3%であったが、自宅外生に限るとなお約6割に留まる。特に男子は56.0%と低い。
②「食生活で困っていること」(いくつでも選択)では、「栄養のバランスがとれない・偏食がある」41.6%が最も多く、「食費の負担が大きい」31.9%、「カロリーや糖分が気になる」26.4%、「食べ過ぎる」25.9%、「食事の準備や片づけが面倒」25.4%が続く。「特にない」は自宅生21.9%、下宿生6.8%と差が大きい。
下宿生の53.7%は「栄養のバランスが取れない・偏食がある」、45.4%は「食事の準備・片づけが面倒」と答えている。また「食べ過ぎる」や「カロリーや糖分が気になる」については男女差が大きい。
「食品の安全性に不安がある」という人は全体で11.8%に留まり、自宅生(11.2%)と下宿生(12.6%)に意識の差は見られない。
③この面で「大学生協に希望すること」(1位の項目)で、1〜3位までが、「〜を安く提供して欲しい」が占め、「〜を安く」計が55.2%となり、価格への希望がやはり強い。ただし、「新鮮な食材」「無添加のもの」「原産国表示」など安全・安心に関わるものを一位にあげた人の合計も21.1%となり、5人に1人となっている。
(2)パソコン関係
①パソコンを保有している人は97.4%、そのうち「自分専用のパソコンを保有している」人は82.4%で増加している。
②自分専用のパソコンを保有している人を100とすると、「大学合格前」に購入した人は16.7%、「大学合格から入学式まで」が50.0%だが、下宿生については60.3%が「大学合格から入学式まで」に購入している。また1、2年生は「大学合格前」に購入した人がそれぞれ18.7%と18.1%で、3、4年生より高い傾向にある。
③パソコンソフトの操作に関しては、「インターネット」は88.1%、「ワープロソフト」は66.1%が「入学前から十分に操作できた」と答えており、これらのソフトを「入学前から十分に操作できた」と答えた人に学部毎の差は見られない。学部での差が大きいものとしては「表計算ソフト」で、理系で現在操作できる人の割合が高い。
④どのソフトについても学年が低い方が「入学前に十分操作できた」の比率が高いが、特に高校入学時から教科『情報』を修得してきた3年生と、そうではない4年生の差が大きく「インターネット」で6.9ポイント、「ワープロ」9.5ポイント、「表計算」7.6ポイントの差がある。
(3)ポイントサービスについて
①買い物やサービスを利用する際に加算されるポイントサービスを集めている人は75.3%で、男子69.2%、女子83.1%と女子が多い。
②店舗を選択する際にポイントを「意識することが多い」「時々意識する」と答えた人も男子の50.6%に対し、女子は60.9%と、ポイントサービスについて積極的である。
③集めているポイントの発行元は、「衣料品店」33.4%、「家電量販店」33.1%、「レンタルビデオ店」30.0%、「スーパー」29.1%の順に多い。住まいの差が大きいものは「スーパー」で、自宅生14.0%(集めている人を100として19.0%)に対し下宿生44.1%(同57.2%)、男女差が大きいものは「衣料品店」が男子21.7%(集めている人を100として31.4%)、女子48.6%(同58.5%)、「スーパー」が男子24.6%(同35.5%)、女子35.0%(同42.1%)、「家電量販店」は女子25.0%(同30.0%)に対し男子39.4%(同56.9%)と高い。
⑤ポイントを集める理由としては「割引になるから」56.1%、「よく利用する店だから」42.1%が多いが、「なんとなく」という人も11.8%いる。
(4)物価高騰の影響に関して
①08年秋の時点で、物価高騰による影響を「切実に感じている」人は16.2%(自宅生13.9%、下宿生18.4%)、「ある程度感じている」53.2%(自宅生51.8%、下宿生54.7%)で、双方を足すと約7割(69.4%)の学生が影響を感じていた。やはり、下宿生の比率が高くなっている。
②特に影響を感じているものとして「食料品代」39.2%、「ガソリン代」14.4%、「学内外の飲食代」14.1%の順に高く、特に下宿生、寮生にとって「食料品代」の高騰は生活への影響が大きい。自宅生では「ガソリン代」(18.6%)や「学内外の飲食代」(17.5%)を挙げる人が目立つ。