|
☆★☆★2009年03月10日付 |
|
定額給付金について麻生首相は当初「高額所得者は辞退すべき」との発言についで「さもしい」と表現、最後は「自分も受け取る」と態度をころころと変えたが、共同通信社の世論調査では「首相は受け取るべきでない」が半数に達した▼給付のための予算も通過、早くも給付した自治体もある。そうなればこの「臨時ボーナス」を受けて当然と変化するのが人情というもので、小欄で書き続けてきた「壮大なムダ」という主張は、いまや袋だたきの目に遭いかねない▼首相も受け取るのだから、それは誰もが受給すべきだろう。でもやはり高額所得者や政治家は例外で、やはり辞退すべきと小欄は考える。二兆円もの金が国庫から消えるのは見るにしのびず、その目減りをいくらかでも減らした方がいいと考えるのは「さもしい」だろうか▼もし自民党が立場上、受給を「党意」とするならば、一度受け取ってそれを一括しかるべき基金に寄付すればいい。これが「食わねど高楊枝」の矜恃というものであろう。高額所得者も同様辞退か寄付という太っ腹を見せてほしいもの。こちらはむろん、善意に期待してのこと▼景気刺激目的というこの給付金案が浮上した時は反対が多数を占めた(世論調査では)が、給付が決定して以後「いただけるものはいただく」という変化を見せたことは想像に難くない。しかしそれとは別に、いやしくも一国の宰相が給付申請書にサインする姿など見たくないというのは素朴で健全な国民感情だろう。 |
|
☆★☆★2009年03月08日付 |
|
ヤブを突いたら、ヘビが出てきた。一匹だけかと思ったらその後ぞろぞろと何匹も顔を出したのには驚いた。ある程度予想はしていたが「やっぱり」と思うのは、このヤブが金に飢えたヘビたちのたまり場として知られていたからだろう▼民主党・小沢代表の公設秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕されて西松建設の迂回献金が白日の下にさらされたが、なんのことはない。自民党からも森喜朗元首相、二階俊博経済産業相、尾身幸次元財務相などが献金を受けていたのだった▼「違法性はないが、道義的にみて返却する」と森、二階両氏は弁解するが、どういう団体から献金されているかをチェックせずに「知らなかった。返却する」では「すまんで済むなら警察いらぬ」のデンである。自民党は「好球必打」のタイミングを逸した。民主党追及に迫力を欠いたのは、あまりヤブを突かぬ方がいいという判断があったからか▼献金額に差はあるが、違法性を認識をしていなかったという点ではみな同じで、検察は公平に捜査を進めるべきだろう。いつものことながら「それにしても」と感じるのはパーティー券というあやしげな紙切れである。たとえば二階氏の政治団体の場合、西松建設のダミー団体に八百万円以上の券を買ってもらっている。見返りなしにこんなムダ金を使うわけがない▼合法だとしても、これは「たかり行為」とどう違う?規正法は徹底的に洗い直しが必要だ。腐臭を放ち続けるからハゲタカやハイエナが寄ってくるのである。 |
|
☆★☆★2009年03月07日付 |
|
五日開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)で、温家宝首相は8%成長の実現に向けた政策メニューを発表した。世界同時不況で中国も大打撃を受けたことはまぎれもないが、それでもこの強気はどこから来るのか?▼同国の国民総生産(GDP)は昨年まで二ケタを維持していたが、経済危機が深刻化した以後は6%台に落ち込んだ。それでもマイナスに転じたわが国から見れば羨ましいような数字だが、「世界の工場」として成長したその根っこが揺らいで果たしてこの回復はあり得るのか、疑問なしとしない▼GDPにおける輸出の割合が四割を占める外需頼みの国だから、日本以上に経済危機の影響は大きいが、十三億人もいる巨大市場であり、内需転換という切り口の発展可能性は各国から比べてはるかに高い。だが、国民がそれだけ余裕を持っているかどうかは別次元の話▼富の分配が不公平で所得格差の大きい同国では、確かに富裕層こそ内需拡大の対象になり得ても、その日の生活にすら困窮している国民が多数存在する。先日も、農村から都会に出稼ぎに来ているいわゆる農民工が、職を失ってやむなく帰郷する様子をテレビで映しだしていたが、そんな中の数人が窮状を訴えている姿を見て、暗澹たる気持ちにさせられた▼暴論かもしれないが、富裕層には「贅沢税」を課し、さらに搾取を禁じて富の均等化を図るのが内需拡大の秘訣で、それが共産主義本来のありようというものであろう。8%という数字の根拠は案外そんなところにある? |
|
☆★☆★2009年03月06日付 |
|
子どもの頃から大人になるまで「勉強しないと後で後悔するぞ」と父親から口酸っぱく言われ続けてきたが、本来が怠け者だから、馬耳東風で聞き流してきた。しかしいま大いに後悔している▼それは系統立てて学んだことがなにもないというさびしさである。いうなれば間口は狭くても奥行きのある領域を一心不乱に勉強すれば、一つの「専門」が形成されるようになるのだろうがそんな「得意」が何もないというのは、老後の充実に門を閉ざしてしまうだけ▼学問でなくてもいい。趣味の分野でも同様だろう。趣味だけは色々と持っているがいずれも中途半端で、間口だけは広いがまったく奥行きのない店のようなもの。これでは商品も並べられない▼怠惰の弁解は「時間がない」「ゆとりがない」が通り相場で、晩酌を楽しむ時間はたっぷりあるが、なぜか勉強する時間だけはない。そんな不精と怠惰の積み重ねが「後悔」という結果になって表れる。父親の意見に対し「親の十八子は知らぬ」とまぜっかえしてきたトガか▼中国前漢の思想書「淮南子」の「説山訓」という巻に「学ぶこと暇あらずと謂う者は学ぶこと能わず」とあるそうだ。江戸中期の国文学者本居宣長が「をりをりに遊ぶいとまはある人のいとまなしとてふみよまぬかな」と詠んだのも、弁解ばかりしている怠け者を皮肉ったものだろう。まさに「後生畏るべし」ならぬ「先生畏るべし」で、これからの親たるもの本居先生に学ぶべし─と口をぬぐって言う。 |
|
☆★☆★2009年03月05日付 |
|
小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が、政治資金規正法違反容疑で逮捕された。準大手ゼネコン・西松建設から違法な政治献金がなされていたというもので、同社の裏金をめぐる事件を捜査していた東京地検特捜部によって疑惑が浮かんだ▼小沢代表は会見の中で違法性の認識を否定、さらに「やましいことはしていない」として辞任しないことを明らかにした。だが、規正法の解釈をめぐる「見解の相違」だけでは逮捕者まで出ないはず。火の気があったかなかったかは今後を見守るしかない▼政治には金がかかる。そのため議員たちは資金集めに必死だ。たとえばパーティ券。これが一枚一万円から二万円ほどが相場。それを売りさばいて数百万円から千数百万円を集めるというのだから、合法的にしても、買わされる方はうんざりするだろう。そして政治献金。大物になればなるほど献金額も大きくなるのが通例▼元々ザル法といわれる規正法だが、かってのような悪質事案は少なくなった。しかしあの手この手を使って法網をくぐり抜ける知恵は「進化」する。小沢代表は「秘書が、秘書が」と転嫁こそしなかったが、やはり「李下に冠を正さず」の姿勢を貫くべきだった▼この事件は民主党にとって政権交代の好球を捕逸する形となり、自民党にとっては敵失にニンマリという図となった。金は力もつけるが、力も殺ぐ諸刃の剣だと痛感する。 |
|
☆★☆★2009年03月04日付 |
|
平山健一前岩手大学学長が先日大船渡市で行った講演の中で「われわれはモノづくり日本の一翼を担うつもりで工業科学技術開発に努めてきたが、最近の製造業の不振を見ると残念としかいいようがない」と唇をかんだ姿が心を打った▼しかし同大学が実際にその一翼を担ってわが国のモノづくりに貢献してきたことは事実であり、現在同氏が主導する産学官一体となった産業振興の実は確実に挙がっている。製造業の不振は確かに目を覆うばかりだが、しかしそれは実体経済より投資バブルが暴走した結果であって、モノづくりそのものの責任ではない▼食料自給率の向上と雇用の創出の両面から第一次産業の見直しが盛んとなり、本県でも県はじめ農林水産業関係団体がこれを追い風にしようとしているのは歓迎すべきことだが、同時にモノづくり業界も元気を出してほしいものである。円高の影響をもろに受けている貿易だが、輸出総額は国内総生産の15%を占めるだけという▼残る85%は数字上少なくとも内製・内需であり、円高差益を享受している部分は大きい。ということは、世間が騒ぐほど国内産業が打撃を受けているわけではないということだ。輸出にしても在庫調整が進んで増産に転じた動きが日々伝わってくる▼為替の変動に左右されないような「どこにもない、高くても売れる」モノを作ることがこれからのテーマになるだろう。平山氏の落胆はしかし杞憂に終わるはずで、心を打ったのは、そこに学者の良心を感じたからだ。 |
|
☆★☆★2009年03月3日付 |
|
組織の統制が乱れるとはこういうことだなと実例を見せられる思いをするのが麻のように乱れつつある自民党の現状だ。公然と首相批判をする幹部あり若手あり、すぐ退陣せよと迫る元幹部、元首相候補あり▼それは党方針に文句を言わせないよりはよっぽど健全で、民主的(いや自民的か)というものだが、建設的意見で百花斉放、百家争鳴するのと違い「選挙を(有利に)戦えない」というのが主な理由では、国民より党利が優先というようなものだろう▼勇将の下に弱卒なしというが、どんな組織も勇将だけがいるとは限らない。いや弱将を補佐して善戦する強卒がいるからこそ、世はバランスがとれているといえよう。「一将功なりて万骨枯る」組織では継続できない▼そんな内部批判を先頭に立って展開しているご仁を見ると、ついその来歴というより過去の行動、発言と照らしてしまう。そして発言の源泉を推測してしまうのである。少なくとも「こんな首相では一緒に戦えない」というからには、自分にそれ以上の器量があると自覚しているのであろう▼しかし一旦首相として認めた以上、それは認めた側にも責任というものがあり、足りないところはカバーしてやるのが組織運営の基本というものであろう。テレビの前で愚痴る前に、首相に対して直言、諌言し、改めさせるべきところは改めさせるのが臣≠ニしての務めだろう。「戦わずして勝つ」べきが、内情をさらして負けるようにし向けている。そんな印象を否めない。 |
|
☆★☆★2009年03月01日付 |
|
今日からついに三月。ついにと大仰になるのも、待ちに待った春の序章が奏でられる喜びがそうさせるのだろう。いくら名のみでも春という文字は気持ちまで明るくする▼その三月を寿ぐ最大のイベントは、なんといっても待望の三陸縦貫自動車道高田道路(通岡峠区間)の開通だろう。月半ばの十五日に開通式が行われ、午後二時から一般車両の通行ができるようになる。従来八分かかっていた通岡峠区間が三分に短縮されるだけでなく、冬季における運転の不安、渋滞などから解放される喜びは大きい▼解放といっても安全運転をおそろかにしてはいけないが、あのヘアピンカーブを通るたび感じてきた圧迫感、そして実際に交通事故の多さなどを考えると、まさに解放という気分になるのである▼さてこの開通によって何が変わるかといえば、陸前高田市の人口が増加するだろうということである。氷上山麓に広がる広大な土地が住宅地として再認識され、日照、眺望に恵まれた場所が文字通り脚光を浴びるのではないかと予想されるからである▼虫食い開発を防ぐためにも市が自家菜園付きの宅地分譲でも打ち出し、全国にPRすれば移住者が増えることはまちがいない。なぜ全国かといえば、圏域内で居住者が移動するだけでは気仙全体の人口増につながらないからだ。以上は小欄の勝手な予測だが、いずれ地理的距離が縮まれば心理的距離も縮まり「気仙は一つ」の思いも強まることにつながろう。 |
|
☆★☆★2009年02月28日付 |
|
好調時のトヨタが二兆円の利益を出したことにも驚いたが、米ゼネラル・モーターズ(GM)の最終赤字が三兆円の赤字というのにもまた驚かされる。これによって米政府の救済方針がどう変化するのか他人事ながら気になるところだ▼あの恐竜たちがこの世から姿を消すなど常識では考えられぬことである。その絶滅については巨大隕石が地球に衝突したためとの学説もあるが、いずれ「絶対的存在」だった超大型動物が絶滅する原因が確実にあったのだから、生きとし生けるものに絶対はあり得ないのだろう▼企業という生きものにも、生きものである以上絶対はない。米国の主要産業である自動車業界がこんな苦境に陥るなど、恐竜の絶滅同様考えられないことだった。しかしそれが現実となり、ビッグスリーといわれる三大メーカーがいずれも経営危機に直面して政府に公的資金を仰ぐハメとなった▼GMはすでに政府からつなぎ融資を受けているが、さらにそれを上回る追加融資を求めている。雇用継続のため支援を決めた政府だが、三兆円もの赤字を出した体質を「点滴」で回復させられるか、世論の抵抗もあって大統領としても頭が痛いはず▼米自動車産業界が時代の先を読めなかった結果のこの例を参考にすると、「危険分散」という危機管理法がいかに重要であるかを知らされる。インドでは二十万円の車が今春発売される。こんな潮流があるのだから、わが業界は米国を他山の石として同じ轍を踏まないよう注意が必要だろう。 |
|
☆★☆★2009年02月27日付 |
|
中国の三国時代、漢の劉邦に包囲された楚の項羽が、周囲に広がる楚の歌を聞いて、それが劉邦の一計によるものとは知らず、楚人はついに敵に従ったかと嘆いた故事が「四面楚歌」だが、今の麻生内閣も項羽の心境だろう▼世論調査によると内閣支持率は11%台と凋落の一途で、十人中九人から不信任されたようなものだから「あなたとは違うんです」と捨てぜりふでも吐いて投げ出してもおかしくない▼身内からまで「麻生さんでは選挙を戦えない」と見放され、元首相からは「笑っちゃう」とヤユされる状況は、一枚岩が粘板岩に変じていくような格好だ。自民党という舟には同じ仲間だけが乗っていると思っていたら、いまや「呉越同舟」状態▼まさに綱渡り的政権運営だが、しかし小欄は麻生さんを見直しつつある。それは「打たれ強い」ということであり、少なくとも安倍さん、福田さんにはなかった強靱さだ。これはリーダーに不可欠の資質であり、最後まで試合を捨てず大逆転するチームの粘り腰みたいなものだろう▼批判する学者たちを「曲学阿世の徒」と切って捨て、野党議員にバカヤローと発言して解散に追い込まれた祖父・故吉田茂首相のDNAを受け継いだか、鼻っ柱だけは強い▼落ちる所まで落ちたのだから、ここは開き直って「臥薪嘗胆」し、景気回復と信頼回復に努めることが支持率回復の要諦だろう。業績が上がれば株価も上がる。まず株価ありきでないのはむろんだ。 |
|