「脳卒中対策基本法」制定を―日本脳卒中協会
日本脳卒中協会の山口武典理事長は3月8日、横浜市内で開かれた参加型イベント「NO梗塞アカデミー」(主催・同協会、サノフィ・アベンティス日本法人)で、脳卒中を予防したり、後遺症を減らしたりするための「脳卒中対策基本法」(仮称)の制定を呼び掛けた。山口理事長はあいさつで、「がん対策基本法はあるのに、脳卒中に関する法律はない。厚生労働省管轄の病院と総務省管轄の救急隊が連携を取り合って、スムースな救助活動をするために、一刻も早い法整備が必要」と指摘。その上で、「要綱案はできているので、国会が正常に動くようになったら、議員立法での制定を目指したい」と意欲を示した。
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同協会は現状の問題点として、▽脳卒中に関する知識は、医療者と市民の活動に頼るしかない▽(発症した場合に)どこの病院に行けばよいか、判断がつきにくい▽119番で救急隊員を呼んでも、脳卒中かどうか判断できない▽救急隊を呼んでも、(病院との連携がうまくいっていないため)専門病院に運んでもらえる保証がない▽受診が遅れると、治る可能性が低くなってしまう―などを指摘。また、山口理事長によると、「3年前に国内でも使えるようになった血栓溶解薬(t-PA)は効果が大きいが、発症から3時間以内に投与しないと、副作用の恐れがある」という。
同協会は基本法の制定によって、政府、地方自治体、医療保険者、医療従事者らが協力して予防事業などを進められるようになるとしている。具体的には、▽「脳卒中を発症したら直ちに受診」を国民に徹底周知▽119番すれば、24時間全国どこでも、専門病院に搬送してもらえる仕組みを整備▽急性期から維持期(慢性期)まで途切れることなく最新の医療、リハビリ、療養支援を受ける仕組みを、全国的に整備▽脳卒中の後遺症と共に生きる患者と家族の、生活の質の向上と社会参加を支援―などを目指していく。
山口理事長は、会場に集まった脳梗塞患者とその家族らに、「国を挙げて脳卒中の予防と後遺症のリハビリに取り組むためにも、一刻も早い法整備が必要」と呼び掛けた。
【t-PA】
2005年10月から医療保険が適用された。t-PA治療によって、障害が残らない患者は1.5倍になるといわれている。しかし、同治療は発症3時間以内に行うことが望ましいとされている。病院到着後、準備に1時間近くかかるため、発症2時間以内には同治療を実施できる医療機関に到着している必要があり、現状で同治療を受けているのは脳梗塞患者の約2%にとどまっている。
更新:2009/03/10 15:56 キャリアブレイン
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