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Commons:2009.3.10 from田中良紹

記者の資格

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 この国では頭が悪くないと新聞やテレビの記者にはなれないのだろうか。 「政治の読み方」というコラムでも書いたが、権力者を取材する際、言った言葉を鵜呑みにするバカはいない。発言の裏にどういう意図が隠されているかを「読み解かなければ」記者をやる資格はない。

 権力闘争は情報戦である。敵を不利にし、味方を有利にする情報を振りまく事が最も重要である。そういう目で政治を読み解いていかなければ記者は仕事をした事にならない。権力者の言う事を右から左に伝えるだけならただの「御用聞き」だ。私が指摘したように、今回の麻生政権の仕掛けは「小沢代表を代表の座から引きずりおろす」事にある。引きずりおろす事さえ出来れば検察は事件の責任を問わない可能性がある。

 なぜなら相当に乱暴な論理で地検は捜査をしている。企業と企業の政治団体と実態は何も違わないのに、政治団体を企業と「認識」したかどうかで秘書を「逮捕」した。恐らく前例はない。また東北地方の建設工事に小沢代表が影響力を持っているかのようにメディアに書かせているが、野党に影響力などあるはずがない。もし野党が影響力を行使したら国土交通省はその時点で自民党から大目玉を食らう。そしてその時点で事件になっている。

 要するに地検がやっている事はナチス・ドイツのゲッベルスが得意とした「情報操作」である。かつて警察を取材していた頃、幹部から「検察はゲッベルスのやり方を習得した」と聞かされた事がある。警察の事件はマスコミも取材できる犯罪現場があるから「情報操作」は難しい。しかし検察の現場は「取調室」という密室しかない。誰も検察の発表の裏を取る事が出来ない。それを良い事にマスコミを使って「情報操作」をし、裁判の前に世論を誘導して裁判官が無罪の判決を出しにくい状況を作り出している。そういう話だった。警察と検察は仲間ではあるが、時には対立する事もある。その幹部は検察の捜査に批判的だった。

 今回もその情報操作にメディアは振り回されている。だからメディアは事件の本筋を追うよりも早くも「小沢代表の進退」に焦点を移した。それによってそこに権力の狙いがある事がはっきりした。地検もそうなってくれないと困る。小沢代表が辞任してくれれば事件の方も「幕引き」を図る事が出来るが、辞任してくれないと「幕引き」の仕様がなくなる。だから頼みの綱は民主党議員だ。民主党の中から小沢代表の足を引っ張る声が起こらないと困る。そのための「恐喝」と「買収」が水面下で行なわれているはずだ。政治を取材してきた私の経験では、こういうときには必ずそれが起きていた。それも分からないようでは記者として相当のボンクラだ。

 私がそう思ってみていると新聞記者出身の民主党議員と社会党出身の民主党議員が「小沢辞任」の旗を振り始めた。私の予想通りである。前者は新聞社のドンの影響下にある。後者は自民党と地下水脈でつながっていた旧社会党議員である。まさに権力の手先とは思わせないようにして利用できる格好の議員である。

 官房副長官の凡ミスで真相が公になりそうになった。慌てて二階経産相を人身御供にする事にした。献金を貰った議員は大勢いるが、決して最大派閥からは人身御供を出さない。最も小さな派閥が選ばれた。どうせこの派閥は次の選挙で二階氏以外は全員落選が予想されている。そして二階氏はこれで閣僚を辞任しても選挙に強いから必ず当選する。自民党には最小のマイナスで済む。

 この「二階辞任」が「小沢辞任」を迫る政府与党の切り札だ。「二階大臣が道義的責任を取って辞めたのに、小沢代表は道義的責任も取らないのか」とメディアに騒がせるのが、政府与党のシナリオだ。かつて「年金未納問題」で福田官房長官が辞任をし、それを待っていたかのようにテレビと新聞が菅代表に辞任を迫った事がある。そのシナリオの焼き直しだ。「毎度おなじみ」の変わり映えのしないシナリオなのだから、記者をやっていれば想像がつくだろう。

 そして権力の狙いは民主党代表に岡田克也氏を当てることだ。なぜなら官房副長官の手によって岡田氏のスキャンダルは既に仕込みが終ったからだ。最近自民党からは「小沢が辞めて岡田に代われば選挙は自民党に不利になる」という話が出ているらしい。誰に聞かせようとしているか。民主党議員に聞かせようとしている。それを聞けば自民党の思惑があからさまに見えてくるではないか。「自民党に不利になる」と言って「小沢おろし」を促進させようと言う事だ。

 岡田氏が代表になればスキャンダルは表面化しない。表面化させずに裏で「恐喝」する。「言う事を聞かなければ表に出すぞ」と言って脅す。これで霞が関は民主党に政権交代した後も民主党を手なずける事が出来る。自民党の政権復帰も3年以内には実現する。スキャンダルは岡田氏本人のものでなくても良い。家族、兄弟、親戚のスキャンダルでも「脅し」の効果はある。むしろその方が本人もつらい。権力者を操縦するため家族のスキャンダルが「脅し」の材料に使われた例を私はこれまで数々見てきた。

 本人が「脅し」に屈するのがいやで政権を投げ出す例もある。真相は未だに不明だが、細川総理の突然の辞任によって自民党は早期に政権復帰できた。岡田克也代表への流れを自民党も含めて作ろうとしているならば、まともな政治記者は過去の例に照らして想像力を働かせ、事態の推移を見守るものだ。

 ところで最近のテレビは「おバカ」のオンパレードになっているが、この前もひどい発言を聞いた。公明党の高木と言う議員が「疑惑の段階でも政治家は責任を取って辞任すべきだ」と驚くべき発言をしたが、誰も反応しなかった。検察捜査の段階での疑惑で問題を決してしまうなら、何のために裁判所があるのか。裁判制度をまるで否定する発言である。検察捜査は正しくない場合があるから裁判所があるのではないの。検察調書が裁判でひっくり返るのはよくある話ではないの。こんな発言をする人間が国会議員をやっていて、それが堂々とテレビに出てきて、誰もその発言を問題にしない。そんな国家とは何なの。

 また他では頭の悪そうなコメンテーターが「政治資金規正法はザル法だから」と発言していた。「ザル法」だと言っているのは誰なの。検察がそう言っているのではないの。検察が何故そう言うか考えた事があるの。検察は政治家を逮捕するのに、ある政治家は「摘発」するが、ある政治家は「お目こぼし」をしているから、「お目こぼし」を批判された時に「ザル法だから」と言い訳しているだけでないの。政治資金規正法のことも知らずに検察の言い分だけを信ずるバカが何故コメンテーターなの。

 こんなテレビを面白がる大人はどうでも良いが、子供たちまでバカになっていく事が怖いと思ってしまう毎日である。


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田中良紹
田中良紹
(ジャーナリスト)

1945年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同年(株)東京放送(TBS)入社。

ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。

1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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