きょうの社説 2009年3月10日

◎北朝鮮の対決姿勢 冷静で確実な対応をしたい
 核開発疑惑が持たれたままの北朝鮮が一月から長距離弾道ミサイルの発射準備を進めて いるといわれる。北朝鮮は「人工衛星」をにおわせているが、人工衛星であろうと弾道ミサイルであろうと、その打ち上げ実験は核弾頭の運搬手段の向上を意図するものとみなさねばならず、日米韓が国連安保理決議一七一八号違反だと批判するのは間違っていない。

 日本が自国の領土や領海への影響が考えられる場合、迎撃するとの構えを明確にしたこ とに対して、北朝鮮は「迎撃行為は戦争」を意味すると主張し、迎撃に反撃するだけでなく、日米韓の「本拠地への正義の報復打撃戦を開始する」と反応した。

 北朝鮮の態度の背景にあるものを見抜いた冷静な対応や、迎撃しなければならない事態 が生じた場合は確実に撃ち落とすことが求められる。

 これに先立ち、北朝鮮は韓国の李明博政権が経済交流などに核問題や人権問題を絡ませ る対北政策「非核・開放3000」を掲げていることに反発して政治的、軍事的な対決状態の解消に向けた南北間の「すべての合意事項は無効化された」としており、今度は日米韓に向けて威嚇的な態度を取ったものである。

 北朝鮮が得意とする、いわゆる「瀬戸際外交」であり、対話路線を表明したオバマ米政 権への揺さぶりでもあろう。が、日米韓はこうした威嚇に屈することなく、一致して冷静かつ確実な対応を貫き、発射断念に追い込みたい。

 安保理決議一七一八号は、ミサイルであろうと人工衛星であろうと、北朝鮮の打ち上げ を国際社会の平和と安全への脅威とみなしている。一九九〇年代前半に核疑惑が露見した北朝鮮が核不拡散条約(NPT)から脱退したため、安保理でなされた一連の決議や安保理議長声明を踏まえて二〇〇六年に行われたものだ。

 日米韓はこの決議に基づき、北朝鮮に自制を促しているが、中国とロシアは北朝鮮のミ サイル発射の動きを憂慮しているものの、人工衛星の発射なら「北朝鮮にも権利はある」との認識で、制裁適用には慎重といわれるのが残念だ。

◎高岡を「歴史都市」に 加賀藩の厚み発信できる
 橘慶一郎高岡市長が市議会三月定例会で、国の「歴史都市」認定をめざす考えを明らか にしたことは、第一号として選ばれた金沢市とともに、北陸に広がる加賀藩の遺産の厚みをあらためて発信することにつながる。国宝瑞龍寺や重要伝統的建造物群保存地区の山町筋、あるいは御車山(みくるまやま)祭といった貴重な文化遺産を抱える高岡市も、認定される資格は十分あるだろう。今年の開町四百年を契機に、市民総がかりの運動として取り組み、金沢との「歴史都市そろい踏み」を実現したい。

 高岡市では「歴史都市」を申請するいわば足場固めに、文化庁の委託事業として今年度 から二〇一〇年度まで、市内の文化遺産の総合調査を実施し「歴史文化基本構想」の策定を進めている。認定への最終段階である「歴史的風致維持向上計画」の提出まで、まだ時間も必要だろうが、一歩ずつ課題を乗り越えていきたい。

 高岡では、歴史都市認定をめざすのと合わせて、鋳物の町の風情を色濃く残した金屋町 の重要伝建地区選定に向けた取り組みや、国史跡をめざす高岡城跡の調査も、多彩な伝統を持つ重層的な町の価値を高める上で、間断なく前に進めなくてはならないだろう。

 金沢市は認定を受け、新年度に国の財政支援制度を活用しながら、東山や主計町などを 無電柱化モデル地区として市内の無電柱化計画に面的広がりを持たせる整備を加速する。高岡市も市内の文化遺産や歴史景観の整備をスピードアップする意味で、「歴史都市」として国の支援を受けられる利点は計り知れない。

 野田山前田家墓所(金沢市)と前田利長墓所(高岡市)が国史跡に一括指定され、加賀 藩の歴史を軸にした両市の広域連携の機運が、これまで以上に高まっている。加賀藩の医家に生まれた金沢、高岡ゆかりの化学者、高峰譲吉博士を主人公に映画が制作されることも、両市民が「共通の偉人」を持つ意識の醸成につながろう。

 高岡市は、歴史都市認定に向け「先輩」である金沢市のノウハウも吸収しながら、二人 三脚で北陸の加賀藩文化を高めていきたい。