きょうのコラム「時鐘」 2009年3月10日

 「時の人」となった政府高官こと漆間官房副長官は元々、拉致問題では記憶に残る警察庁長官だった

06年秋のことである。曽我ひとみさん拉致事件で北朝鮮の女工作員に逮捕状が出た。発生から27年たった事件に突然、それも通称名「キム」で国際手配したのである。拉致の解決に意欲を示す安倍内閣スタート早々で、六カ国協議再開直前のタイミングだった

漆間警察庁長官の「今年は勝負に出なければならない」とのコメントが印象深かった。拉致問題が政治利用されたとまでは言わないが、当時の記事に「政府の意向で急展開」とあったのを思い出す

が、今回の漆間発言問題は語るに落ちた。「自民党に検察の捜査は波及しない」と言及したと伝わった直後に「自民党有力議員」へ波及する見通しになったからだ。漆間副長官自ら、情報を持っていないことを証明したようなものだ

要は、政権中枢にいる者は言動を慎み、恣意的な情報操作で権力側にだけ都合のいい状況を作らないことだろう。われわれも「政府高官」や「有力議員」といった、うさん臭い表現に振り回されないよう注意したい。