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カルデロン家、父を強制収容 「恣意的干渉」と弁護士

荒木祥2009/03/10
 日本政府に在留特別許可を求める署名が2万筆を超え、埼玉県蕨市の市議会意見書採択などがありながら、入国管理局などが3人そろっての在留を頑なに拒むカルデロン家。3月9日、夫妻らは東京入国管理局に出頭し、あらためて3人そろっての在留を求めたところ、父・アラン・クルズさんは入管に強制収容された。支援者は最悪の事態に備えて救援基金を発足、記者会見での報告などを要約してお伝えする。
関東地方 司法 NA
カルデロン家、父を強制収容 「恣意的干渉」と弁護士 | <center>入管出頭直前、報道陣に胸中を語る、父・アラン・クルズさん(どちらも9日、筆者撮影)</center>
入管出頭直前、報道陣に胸中を語る、父・アラン・クルズさん(どちらも9日、筆者撮影)
 3月9日、東京入管に出頭した夫妻は、娘・のり子さんの意向も踏まえ「娘一人を残すことは親としてできない」など、あらためて3人そろっての在留特別許可を求めた。しかし、入管は夫妻に自主的な退去を迫り、応じた場合にのみ、のり子さんに在留特別許可を与え、夫妻には学校の入学式などの際にごくごく限った短期間の入国を認める、という方針を変えなかった。

 結果、母・サラさんにのみ16日までの仮放免が出され、父・アラン・クルズさんは入管に強制収容された。入管は、一家らの出そうとした「願い」と「再審情願申立書」の受理を拒否、中学校もまだ三学期だというのに、3月13日までに一家への態度表明を迫っている。

 一家そろっての退去も、父母のみの退去も、依然として一家には受け入れがたい選択肢だ。同様のケースは例えば、すでに1987年、オーストラリア政府が国連か規約人権委員会から「自由権規約(第17条)に反し、家族への干渉」などと批判されている(関連サイト:オーストラリアにおける退去強制制度(PDF))。

 しかし、日本の入国管理はこれまでも、中国残留孤児や夫人らの養子達を強制送還するなど、頑なな移民拒否政策を採り続けてきた。親の入国あるいは滞在が不法だったというだけで、日本を追い出される子ども、父母が日本から追い出される子どもは、フィリピン、ペルーなどの国籍の人々を含めて、これまでにも少なくなかった(先生!日本(ここ)で学ばせて!―強制送還される子どもたち)

 強制送還された子どもは貧困におかれ、日本の中学1年生が現地の小学校1年生になるなどの人権侵害を受けた。子どものみの在留が認められたケースでは、父母が日本から追い出されることで、学業や生活の維持に苦労をしてきた。

カルデロン家、父を強制収容 「恣意的干渉」と弁護士 | <center>東京地方裁判所・司法記者会での会見で。母・サラさん、娘・のり子さん</center>
東京地方裁判所・司法記者会での会見で。母・サラさん、娘・のり子さん
 子どもの権利条約(9条1項など)では「子どもの最善の利益優先」と「子どもがその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する」ことなどを締約国に迫る。日本政府のいわば、出入国管理法に基づく退去強制は子どもの利益などに優先する、とする解釈は、国連・子どもの権利委員会から、1998年、2004年の2度にわたって批判されてきた(アムネスティ・インターナショナル)。

 カルデロン家父母の場合も、入国と滞在以外にこれといった不法行為はない。父は職場に信頼され、母は地域になじみ、娘の友人は少なくない。にもかかわらず入管は依然として、いわば「父母が自主的に退去すれば、娘のみは在留特別許可を認める」という方針を変更しない。

 記者会見で、のり子さんは「すぐにでもお父さんを帰して欲しい」と訴え、渡邊彰悟・弁護士は「家族に対する恣意的な干渉」と抗議した。支援者らは最悪の事態に備え、この間、2万筆署名や蕨市議会意見書代表され、一家に寄せられた数多い市井の善意に応えるべく、救援基金を発足させた。


資料:のりこ基金立ち上げとご支援のお願い

2009年3月9日
弁護士・渡邊彰悟

1.本日カルデロン一家の父アランと母サラが東京入国管理局に出頭しました。

2.本日の手続において法務省入国管理局による強制退去が一層現実的なものとなってきたと判断せざるを得ない状況になりました。

3.カルデロン一家は最後まで法務大臣に対して一家全員に対する在留特別許可をお願いしたいと考えています。この決断に現在も変更はありません。法務大臣にはぜひとも再考をお願いしたいと考えています。

4.この間、非常に多くの方から“(のりこの)里親になってもいい”、“支援をしたい”というありがたい申入れをいただきました。ただ、この間、家族3名全員での在留を希望している家族としてはこれまで、お申入れに対して正面からお答えすることができませんでした。これまでのお申入れに心からの感謝を申し上げます。

5.ただ、現時点においてこのような状況を迎え、のり子の今後の日本での生活を支えるための経済的な基盤が必要になることは明らかです。そこで、のり子の「就学費と生活費の援助」と、「のり子の本邦においての生活を援助」を目的としてのりこ基金を立ち上げます。

 今後、ご支援は下記基金宛にお送りいただきますようにお願いを申し上げます。皆さんからの支援によって、のり子の日本での継続的な就学・生活を支え、ひいては家族を支援したいと考えます。
 心から、皆さんからの支援をお願いいたします。よろしくお願いします。

<のりこ基金> 
ゆうちょ銀行からお振込みの場合:10070 31787101 ノリコキキン
その他銀行からお振込みの場合: 店名:008(ゼロゼロハチ)店番:008
   口座番号:普通31787110
   口座名義:のりこ基金(ノリコキキン)


関連サイト
カルデロン・アラン・クルズ一家に在留特別許可を!
「夫妻の退去強制は人権侵害」アムネスティ・インターナショナル日本
先生!日本(ここ)で学ばせて!―強制送還される子どもたち
オーストラリアにおける退去強制制度(PDF)

NPO法人 在日外国人教育生活相談センター・信愛塾(横浜)
APFS(ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY)
難キ連(難民・移住労働者問題キリスト教連絡会)
RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)
カルデロン一家 入管 両親の自主帰国求める:東京新聞 2009年3月10日
罪のない少女の涙はつらい:宮崎日日新聞 2009年3月10日
◇ ◇ ◇

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