違法献金事件で揺れる小沢民主党に世論が厳しい反応を示した。一方、麻生内閣への支持も相変わらず低調だ。総選挙前に不信の嵐が吹き荒れるままでいいか。信あっての政治。その原点が怪しい。
週末実施された各メディアの世論調査からは、おおむね同じような結果が出た。西松建設の巨額献金事件で公設秘書が逮捕された小沢一郎代表の辞任を求める声が六割。小沢氏の説明では納得できないが八割に上り、民主党支持率は下落した。それでいて内閣や自民党支持率は急上昇とはいかず、「支持政党なし」が急増した。
民主党の鳩山由紀夫幹事長は「国民には説明責任が尽くされていないという気持ちが強いのだろう」と語った。巨額な献金を提供してくれる政治団体の実態を、小沢氏が「せんさくしないのが大多数だと思う」との言葉で片付けようとしても、理解を得られないのは当たり前だろう。
有権者の怒りや疑念は、単に違法献金への説明責任を果たせたかという問題にとどまらない。
前回の総選挙公約で、公共事業受注企業からの献金禁止を誓ったのは、ほかならぬ民主党だ。「古い自民」の象徴とされる政官業の癒着打破を旗印に掲げながら、党首サイドとゼネコンの関係が疑われる事態に多くの国民はあきれている。本質はここだ。
政権交代の可能性も指摘される折だから、なおさらだ。不信の震源地となった小沢氏は責任を免れない。世論調査の数字は無視できず、自発的辞任を求める声が党内で強まるのも致し方ないだろう。
今回の調査は自民党にも厳しい結果を突きつけた。ライバルの「敵失」にもかかわらず、迫る総選挙の投票先では民主の後塵(こうじん)を拝した。麻生太郎首相の評価も含めて、有権者が冷静に判断している表れではないか。
自民、民主にとって見過ごしてはいけないのは、政権選択の総選挙を控えながら「第一党」の座が「支持政党なし」であることだ。党首の資質もあわせて、失格の烙印(らくいん)を押されているに等しい。有権者との信頼関係を築けずにいる現実を直視すべきだ。
巨額献金事件では二階俊博経済産業相ら自民党議員側への捜査波及が取りざたされる。「返り血」を恐れて、様子見を決め込む両党の姿勢は疑問だ。国会で一連の事件の真相究明を図り、政治資金規正法の抜け道をふさぐことが、信頼回復へ欠かせない一歩である。
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