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いても、たっても

2009年3月10日

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「仕組み」の経済学

 「神は細部に宿る」といわれる。だが、悪魔も細部に宿るのである。とりわけ、国会議事堂の周辺に生息する魑魅魍魎(ちみもうりょう)が、細部に様々な仕掛けを行ってきた結果、この国の惨状がある。

 官僚はあらゆる法律に対し、政令、省令、通達といった裁量と恣意(しい)のチェーンの中で介入し、立法の趣旨をゆがめていく。被害を被った国民が官僚の責任を追及しようにも、税金で弁護できる官僚機構との50年戦争を覚悟しなければならない。かくて、非効率、無責任、利権拡大の組織が肥大し続ける。

 立法の趣旨を政令などでいとも簡単に否定し去る官僚の手法は、野党議員に指弾された法制局長官や、内閣に反旗を翻した人事院総裁の対応でも明らかになった。

 一点集中で郵政改革を実現した小泉氏や、多くのやりたいことと、やれる能力のはざまで病に倒れた安倍氏、唯一やりたかった洞爺湖サミットを実現して退陣した福田氏と異なり、今の麻生首相は、やりたいことではなく、居座ることが目的となっているように見える。

 国民の意思を代表すべき首相は、使用人に過ぎない官僚を使い切るべきにもかかわらず、今や使い切られているようだ。国会で与党幹部が、論語の「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼(おそ)れず」を引用し、首相への応援演説を行ったが、不幸なことに愚者もまた「惑わず、憂えず、懼れない」のである。賢愚の判断は、民主国家では国民に委ねるしかない。

 この国の政治家は「民、信なくば立たず」という言葉が好きだが、民意を問うことなき3代目では、立つことはもちろん、居座っていてもいけないだろう。(四知)

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