昨年12月初めに流行入りした今シーズンのインフルエンザは、今年1月19~25日の週で山場を迎え、終息しつつある。季節性インフルエンザと呼ばれ、日本などの温帯では毎冬に流行する。流行の程度を決める要素を知るのは感染症対策を考える基本となる。そこで、ウイルスは乾燥した環境を好むため、湿度が注目されてきた。
庄司内科小児科医院(仙台市)の庄司眞院長は90年、空気(1気圧、1立方メートル)に含まれる水蒸気量をグラム数で示す「絶対湿度」と天気予報に登場する「相対湿度」、ウイルスの6時間後の生存率を調べた。その結果、絶対湿度が5グラム以下になると流行が拡大することを突き止めた。この研究をもとに宮城県地域医療情報センターは02年、インフルエンザ流行予測地図の公表を始めた。絶対湿度が11グラム以下になるとインフルエンザが始まり、7グラム以下で流行が拡大するとして、市民に注意喚起している。
米オレゴン州立大の研究チームは過去のデータを再分析し、2月10日付の米科学アカデミー紀要に発表した。それによると、相対湿度と感染率の因果関係は低いが、絶対湿度との因果関係は高かったという。相対湿度は気温に左右され、ウイルスの感染力は絶対湿度が鍵を握っていることを示している。研究チームは「室内の空気の加湿が被害軽減にとって有効だ」と指摘する。
発生が懸念されている新型インフルエンザについて、庄司院長は「新型ウイルスに対し、人は免疫を持たない。湿度に左右されずに、感染が拡大するだろう」と指摘。「季節性の流行予測と関係なくインフルエンザ患者が出たら新型の発生を疑う必要がある」と話す。【関東晋慈】
毎日新聞 2009年3月10日 東京朝刊
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