生活困窮者支援を目的の一つとする定額給付金について、給付窓口となる全国の市区町村の9割が、住まいを失った非正規社員やホームレスなど、住民登録の困難な人に対する通知方法を検討していないことが毎日新聞の調査で分かった。厚生労働省の統計では、「住居喪失者」は2万4000人以上いるとされ、景気の悪化でさらに増えると予想される。3億円規模の給付金が生活困窮者に届かない恐れが強まっている。【まとめ・篠原成行】
総務省が1月28日付で通知した「定額給付金給付事業費補助金交付要綱」では、「市区町村は受給申請に必要な書類を、2月1日までに住民登録を完了した住民に配布する」としているが、住居喪失者への通知義務は定めておらず、通知方法も示していない。
今回の調査は要綱通知後の2月初旬、各都道府県を通じて実態を調べた。その結果、住居喪失者への配布方法について「何らかの対応を検討中」としたのは全国1804市区町村のうち横浜市、千葉県船橋市、神戸市、岐阜県多治見市など12市にとどまり、少なくとも1573市町村(87%)は検討していなかった。東京、茨城、山形、兵庫、奈良の5都県は「各自治体の方針は把握していない」と回答した。
検討中と答えた12市のうち、具体的な通知方針を示したのは埼玉県蕨市と大分県国東市の2市。蕨市は「ネットカフェに1カ月以上滞在している人には、店舗を住所として給付する」、国東市は「住民登録のない人に対しても、指定した地区の全戸に郵便物が届くタウンメールを使う」と回答した。
岐阜市の担当者は「住民登録してない人への対応まで手が回らないのが実情」、広島県福山市の担当者は「住居喪失者を確認しようとすると市の負担が増える」と話した。
総務省定額給付金室は「給付金は住民登録に基づく事業なので、通知は自治体に任せている。住民登録がなければ給付できなくても仕方ない」としている。
実施までの過程をすべて地方に丸投げした施策で、自治体が混乱するのは最初から予想できた。国の政策なのだから、「住民登録に基づく事業で、通知は自治体に任せる」という言い方には、自治体も納得しないだろう。
毎日新聞 2009年2月22日 東京朝刊