北朝鮮を脱北して帰国した日本人妻の親族と偽って中国人4人が不法入国したとされる事件で、出入国管理法違反容疑で逮捕された中国人男女が、この日本人妻以外にも「帰還事業」で北朝鮮に渡った在日朝鮮人らの脱北を手引きしていたことが関係者の証言でわかった。大阪府警は、この男女らが脱北を請け負うブローカーだった疑いもあるとみて、中国での活動の実態についても調べる。
また、府警のDNA型鑑定で、いずれも同容疑で逮捕された日本人妻の斎藤博子容疑者(67)と、長女になりすましていたとされる40代とみられる氏名不詳の女、次男になりすましていたとされる自称・金哲権(キム・チョルグォン)容疑者(38)との間に血縁関係がなかったと立証されていたことも判明。府警は9日、斎藤容疑者と中国人4人を同容疑で大阪地検に送検する。
捜査関係者や脱北者支援団体によると、脱北を手引きした疑いがあるのは、斎藤容疑者の長女になりすましていたとされる女と、その夫とされる池青松(チー・チンソン)容疑者(46)。在日朝鮮人ら数人が脱北する際、2人に中国東北部の民家を提供され、かくまわれたと支援団体に証言。2人は生活の面倒をみるなどしていたという。
支援団体幹部は朝日新聞の取材に「2人のことを証言した在日朝鮮人らは、北朝鮮での暮らしぶりなどを詳細に答えており、今回の事件のような『なりすまし』で脱北してきた可能性は低い」としている。
斎藤容疑者が01年に脱北した際も、2人が約半年間、吉林省にある民家でかくまったとされる。この際、斎藤容疑者が「『北朝鮮に残っている家族の脱出と日本入国を手伝うから、親族として日本に行かせてくれ』と持ちかけられた」と府警に供述していることが新たに判明した。