★サマーナイトドリーム★A

March 09 [Mon], 2009, 21:38



「瞳、好きなもの頼んでいいから」

翔はいつもそう。お店でもそう言ってくれる。
どうしてそんなに、好きなもの、って言ってくれるんだろう。

でも、このお店はそんな安い値段じゃなかった。
ドリンクだけでも、500円は軽く越えてしまってる。


翔の友人が、おつまみを出してくれた。

「あ、これはツレのおごりだから、心配すんな」

翔は、本当に仲良しなんだなぁ、この人と。

私は、夜の街に本当に疎かったので、こういう世界は良く知らない。
翔に教えてもらいたいと思った。
でも、教えてもらうほど、後戻りできそうもない気がして本当は躊躇してた。

そして、私がいつも飲んでるカクテルと同じカクテルを出してくれた。

・・・頼んでもないのに?


本当に、何のつもりなんだろう。


「こいつ、女の子連れてきたの、初めてなんだ。祝わせてくれよ。」

そんな気がしないし・・・本当にそうなのかな。
でも、・・・どうなんだろう。
男の人って本当に本音なのか、建前なのか良く分からないや。

それでも嬉しかった。
翔と一緒にこうしてご飯食べれるんだもんね。

もう、今日しかないのかもしれないし、楽しまなきゃだね。

私、明日から又仕事だもん。

あのショーパブのカクテルもおいしいけど、こっちもやめられない気がした。
こっちはもっと、素材の味が生きてる気がした。


でも、どっちも翔がいるから好き。
比べられないもん。

翔は相変わらずジュースだけ。
お酒飲んだところを見たことはなかった。

今日は、バナナジュース。
お子ちゃまみたいだ。

いつもは、グァバジュースとかなのに。

結局、子供みたいに甘いものが好きなのかぁ。
よし、分かった。



てか、本当は気が引ける。
自分の仕事場になんて来られたりしたら、
きっと私なんて、仕事になんかなりゃしないんだろうなぁ...


翔はよく平気だな。


そのうち、まばらだったお客も段々増えてきた。













そんな時だった。







「あれ?・・・・・・翔???どうしてこんなとこにいるの???」

と違う女性が声をかけてきた。

ほら、やっぱり。

「おう、久しぶり、元気にしてた?」

やっぱり、ダンス仲間なのかな。
凄く色っぽいし、オーラがある。

髪の毛はロングで、縦ロール。
でもそんなきつきつに巻いてなくて。
適度に露出された肌。


全然私とは違う。


私は、構わずに出された料理を食べ続けた。


そのうち、私も翔に紹介された。

「え?翔彼女できたの?」


その女性はちょっと驚いたみたいだった。


その女性は、機転が利くし、話はうまいし、よく笑うし。
何だか凄く華がある感じだった。


「私もね、昔は翔と一緒にね、踊ってたことあるよ。
でも翔はやっぱり、プロ向きだったかな。
私は今も、趣味では踊ってるけど。
翔と近くなりたいっていうか、
近くに居たいっていうかなんていうか。

あの頃翔は私たちの憧れだったから。
今も変わらないけどね。

あなたは、ダンスとか興味ある?」

「私は、新体操とか、バレエなら、中学生の頃までやってました。ダンスは、やっぱり観るだけですね。」

そんなの初耳、と翔は言う。

「やっぱりでも、瞳さんはそういうのいいかもね。女の子らしいし。」

何だか、話に入っていけないような気がした。


その女性は、瑠美。

本当は、翔と瑠美さんは昔はとてもいい仲だったんじゃないかな。
今は違っても。


「瞳さん、今日は逢えて嬉しい。本当はずっと翔から、瞳さんの話を聞いてたの。またこっちに遊びに来てくれたら嬉しい。もっと瞳さんのことを知りたいから。」

にこやかで、悪意のない笑顔が、本当は怖かった。

でも、闘いはこれからなのかな。

ずっと瑠美は私たちと同席だった。

瑠美はこの近くに住んでいるらしかった。けど仕事が忙しいせいで、中々ショーパブに遊びに行けないから、この店にずっと通って、翔の帰りを待ち続けていたらしい。


「本当は、ダンスはまだ趣味だけど、翔に負けたくないから、いつかは・・・って思ってはいるけど。でも翔には勝てないなぁ。翔は昔から才能あったからね・・・見てて凄く羨ましかった。」

本当に瑠美さんは元気のいい女の人だった。
瑠美さんは、ファッション関係の仕事しているらしい。
でも、お洒落だからそんな感じ。

翔に似合いそうなのは、瑠美さんみたいな人だと思ってしまう。

なんだかこんなとき、才能を持たない私は、埋もれてしまいそうになる。

ここは、翔の仲間関連のお店だから仕方ないと諦めようと思った。


でも、そんなことに関係なくこのお店の料理や、飲み物は文句なしにおいしいと思った。
料理も凄く色も多彩で綺麗だった。


お腹いっぱいになった頃、また、大きなデザートが出された。

トロピカルパフェ。
トロピカルフルーツがたくさん載っている。

凄い色とりどりでお洒落なデザート。



私は何も喋れてない。
瑠美さんのペースにはめられてばかりだった。

飲みたかったはずのカクテルも、半分以上残してしまった。
それを瑠美さんが綺麗に飲み干してくれたから良かった。
でも、なんか、宣戦布告なんじゃないかと思ってしまう。



ねぇ、これから、何が起きるの?
私にはまだ知らないことがいっぱい。


翔もさっきから無言で食べ続けてる。
彼女のペースにはまってしまってる気がする。







「送るから、帰ろう」






「待って、翔」
瑠美さんが甘い声で呼び止める。

「今日は、久々に逢えて嬉しかった。ありがとう。私が払っておくね」

「ああ、サンキューいつも悪いな」


私は瑠美さんに頭を下げて、手を振った。

なんて素敵な人なんだろう。


「ごめんな、瞳。瑠美は昔からああいう奴だから、気にしないでくれ。」

本当は凄く気になって仕方ないけど、
「ううん、気にしないよ、だってとても素敵なお姉さんだもん」

と明るく言ってのけた。








































































帰る途中で、翔が半端じゃなく悲しそうな顔をしたのを、私は見逃さなかった。





































































































































家につくころには、もう、12時まわりそうだった。



本当にたくさんの話を聞いた。


翔はたくさんの人にはぐくまれて育ってきたんだということ。
私は知らないことが多すぎた。





























































































































































だけど、やっぱり翔の悲しそうな顔が気になって。。。。離れない。































































































































































































































P R
プロフィール
名前:月野 瞳
誕生日:9月29日
現住所:神奈川県
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