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年金:記録見つけ支給…厚労省「過去の生活保護費返還を」

 宙に浮いた年金を巡り、記録が見つかって支給される年金を生活保護受給者が受け取る場合、それまで受給した保護費全額分の返還を求められるケースがあり、生活保護者の支援団体が批判の声を上げている。中には保護開始前に受け取れたはずの年金まで返還させられることもあり、支援団体は「国の過失が大本なのに理不尽だ」と批判している。【野倉恵】

 これは、07年7月の年金時効撤廃特例法施行後の07年12月、厚生労働省保護課が「生活保護受給者の『年金記録問題への対応』について」と題した通知を自治体に出したため。

 通知は、記録訂正でさかのぼって支給される年金のうち、過去5年間分について「生活保護費相当分は原則、全額返還の対象。それでも余る分は保護費から差し引く」などとしている。5年以上前に支給されたはずの年金については、金額によって保護の打ち切りを検討し、保護を続ける場合は保護費を減額するなどとしている。

 例えば、7年前から月15万円の生活保護を受ける人に過去10年分800万円の年金記録が見つかった場合、直近5年分の年金400万円は返還させられ、なお400万円残るため生活保護を打ち切られるか、全額が収入として扱われ今後の保護費から差し引かれる。

 通知により、実際にこうしたケースもあった。05年11月から生活保護を受ける60代の女性は昨年、03年2月からの5年間に漏れていた未支給分の年金29万円を受けた。このうち05年10月以前の分については保護期間ではなく、本来なら自由に使えたにもかかわらず、自治体から29万円全額の返還を請求され、不服審査請求をした。

 厚労省保護課は「社会保険庁の記録管理がずさんだったのは申し訳ないが、自由に使える時期に受け取る年金が(返還対象に)含まれても、現行制度では時期に応じて収入を分けられないためやむを得ない」と弁明する。

 生活保護受給者らを支援する「全国生活と健康を守る会連合会」事務局は「保護を受ける前の時期の年金が返還対象になったり差し引かれるのは問題。記録漏れなど国の過失で支給できなかった責任が不問にされ、臨時収入と同一にみなしていいのか。国には被害者の視点が欠けている」と話している。

毎日新聞 2009年3月1日 2時30分(最終更新 3月1日 2時37分)

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