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2009年3月9日

◎工業団地への誘致 企業連携で魅力を高めたい

 金沢市は四月から、金沢テクノパークへの企業誘致を進めるため、既存の進出企業の人 脈を生かして売り込みを図る。景気後退で企業の設備投資がしぼむ中、あらゆるつてをたどって誘致を実現しようというわけである。これを機に、工業団地に進出している企業同士や周辺企業との交流、連携活動を一層活発にして工業団地全体の魅力、吸引力を高めていく努力も強めたい。

 金沢市内では昨秋、いなほ工業団地の工事も完了し、竣工記念式に併せて進出企業の交 流会が催された。同工業団地はプラスチック用金型製造、機械部品製造、産業用電子機械製造などの企業十四社の進出が決まっている。これら異業種の企業が情報を交換し合い、業務上の協力関係を築いていけば、新たな製品開発やビジネス展開の可能性も広がる。

 さらに、業務上の相互協力にとどまらず、工業団地ぐるみで環境保全に取り組むことも 時代の要請沿う活動として推奨される。例えば小松鉄工団地協同組合は昨年、県の「地域版環境ISO」の認定を受けた。個々の組合員企業にとどまらず、工業団地全体として環境行動計画を策定し、省エネや二酸化炭素(CO2)削減などに取り組むものである。

 環境活動としては、産業廃棄物の再資源化を徹底して排出をゼロに近づける「ゼロエミ ッション」活動もあり、工業団地として積極的に取り組みたい。ゼロエミッション化を達成した工業団地の代表例として栃木県の小山工業団地が知られる。その取り組みをリードしたのは建機メーカー・コマツの小山工場である。廃棄物処理に関するコマツのノウハウを石川でもっと広げてほしい。

 金沢市は環境と景観に関する協定を進出企業と結び、工業団地の緑化に努めているが、 企業の環境活動は企業市民としての地域貢献活動とも言え、それに熱心な企業が多ければ、工業団地のイメージも社会的評価もおのずと高まることになる。景気悪化で企業誘致が困難さを増していればなおさら、既存企業の連携や社会貢献活動などで活力にあふれた工業団地であることが大切であろう。

◎尖閣諸島に安保適用 平和維持に欠かせない

 米政府は、尖閣諸島が攻撃された場合、日米安保条約五条の対象になるとの公式見解を 日本側に伝えた。尖閣諸島への条約適用は、周辺海域の平和維持に欠かせない。米国の見解は、日米同盟がオバマ政権下でも正常に機能している証しといえよう。

 昨年十二月上旬、中国の海洋調査船が尖閣諸島南東の日本領海を侵犯した。中国はオバ マ政権の誕生をにらんで日米同盟の「瀬踏み」をしたのだろう。米政府は今後も機会あるごとに同様の見解を示し、中国をけん制してほしい。そうでないと、中国や台湾船による日本領海へのさらなる侵入をあおることにもなりかねない。

 昨年十二月、福岡・太宰府市で開催された日中首脳会談で、麻生太郎首相は領海侵犯に ついて、「非常に遺憾」と抗議した。温家宝首相は、尖閣諸島は中国固有の領土とした上で、「話し合いを通じて適切に解決したい」と述べたが、麻生首相は「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史上、国際法上、問題ない」と応じた。

 麻生首相は、先月の衆院予算委員でも前原誠司氏(民主)の質問に対し、尖閣諸島に第 三国が進攻してきた場合、「日本固有の領土である以上、日米安全保障条約の対象だ」と答弁し、米国側に確認する考えを示していた。

 米国の公式見解は、こうした経緯を経て示された。中国は日米同盟の固い絆を再確認し たと言える。麻生首相が中国に言うべきことをきちんと言い、米国の公式見解を引き出す努力をしたのは正しかった。

 日本国内には「米国は中国に外交的な配慮をしている」と不安がる声もあるが、安保条 約五条は、日本有事の際に米国に防衛義務が生じることを明確にしている。米政府が尖閣諸島への五条の適用を明言している限り、中国の示威行為に過剰反応する必要はない。

 不安があるとすれば、民主党が政権を取った場合、どのような方針で臨むのかはっきり しない点だ。尖閣諸島周辺で、今回のような「挑発」が再び起きたとき、麻生政権と同じように対処できるのか、大いに気になる。


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