昨年一年間の全国の自殺者数が三万人を超える見通しであることが分かった。警視庁と道府県警の調査を共同通信が集計した結果である。警察庁の自殺者数統計は十一年連続で三万人を上回ることが確実となった。
集計によると、昨年の自殺者数は約三万二千人で、警察庁の最終発表ではさらに若干増加して、約三万三千人だった前年と同程度になるとみられる。
世界的な金融危機による不況の影響はまだ読み取れないが、自殺と景気は密接に関係している。今後の増加が心配である。自殺者が初めて三万人を超えた一九九八年は、金融危機で銀行や証券会社が次々と破綻(はたん)した翌年に当たり、中高年男性の自殺が多かった。
世界同時不況に見舞われた現在も九八年ごろとの類似が指摘されている。警察庁は早めの対策が打てるよう今年から月別データの公表を始めた。一月の全国の自殺者は二千六百四十五人だった。これまで月別をまとめていないため前年同期の数字と比較できないが、厚生労働省の人口動態統計では昨年一月は二千三百五人で三百四十人増加している。
政府が〇七年に決定した「自殺総合対策大綱」は、専門家への相談やうつ病の治療など社会的支援の手を差し伸べることで防止が可能としている。
秋田県は九五年から長年にわたり自殺率(十万人当たり自殺者数)が全国最悪だったが、県を挙げて対策に取り組むことで減らすことに成功している。特別の策があったのではない。悩みを受け止める「いのちの電話」や倒産企業の相談に乗るなどの地道な活動と継続的な啓発の成果という。
悩みを抱えた人たちが地域で孤立せずに暮らせるよう多様な相談体制の充実が急がれる