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医療基本法:患者の権利擁護も…検討会が制定求める報告書

 未曽有の人権侵害を起こしたハンセン病問題の教訓を医療施策に生かすため厚生労働省が設置した「再発防止検討会」(座長、多田羅浩三・放送大学教授)は6日、「医療基本法」(仮称)の制定を求める報告書をまとめた。医療法や医師法に分かれて規定されている患者の権利関係の条文を一本化して整備し、医療提供者の権限や国の責務も明記する。近く舛添要一厚労相に報告書を提出し具体化を要請する。

 報告書は、現行法の患者に関する条文について「権利擁護の観点から導き出されたものというより、国の医療行政を円滑に進めるための医療提供者への行政取り締まり法規の性格が強く、患者と医療提供者との信頼関係を損なうことにもなりかねない」と指摘。「医療法や医師法の一部改正では患者の権利擁護の位置づけは困難で、関係諸法規を再編成すべきだ」としている。

 法制化では(1)患者の尊厳とプライバシーの尊重(2)自らの意思による治療内容の決定(3)医療機関に対する診療記録の開示請求--など患者の諸権利に加え、患者・家族が医療提供者に協力する義務や、医療提供者が国に医療体制の充実を求める権利、患者の被害回復制度を整備する国・地方自治体の責務なども盛り込むべきだとした。

 検討会は、国の「ハンセン病問題に関する検証会議」が05年3月にまとめた最終報告書で、再発防止策を具体化するための機関の設置を求められたことを受け、06年3月から15回の会合を重ねた。【江刺正嘉】

 ◇解説…医師側の権利も盛る

 ハンセン病問題を巡る厚生労働省の「再発防止検討会」が6日、医療基本法(仮称)の制定を求める報告書をまとめたことで、元患者や薬害・医療被害者が長年求めてきた患者の権利を体系化した法律が制定に向けてようやく動き出した。

 「ハンセン病問題に関する検証会議」最終報告書(05年)で最重要課題とされた再発防止策は患者の権利の法制化だ。90年に及ぶハンセン病隔離政策を招いたのは法整備の遅れが原因との反省からだ。しかし、検討会では委員18人中8人を占める日本医師会など医療団体の代表から「法制化を認めれば医療崩壊に拍車がかかる」との意見が相次いだ。

 検討会の論議は丸3年に及び難航したが、元患者や薬害エイズ原告の委員が粘り強く法制化を訴えた結果、医療団体代表も「医療提供者の権利も定めた基本法的な内容なら賛同できる」との意見を述べるようになった。国の財政措置を報告書に明記することで、医療団体側も了承した。

 検討会の座長代理の内田博文・九州大法学研究院教授は「主な医療団体が参加して法制化に合意したことは画期的」と評価する。患者と医療者との相互不信を解消するためにも厚労省は報告書の提言を一日も早く実現する責任がある。【江刺正嘉】

毎日新聞 2009年3月6日 22時24分(最終更新 3月7日 1時18分)

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