ニュース: 事件 RSS feed
【疑惑の濁流】ちらつく「わいろ」「政治」 西松建設“裏金”はどこに流れた (4/4ページ)
7月、バンコクのアピラック知事=不祥事にからみ11月19日付で辞任=が不正の有無について調査に乗り出す方針を表明したのだ。
しかし、これが事件化する見通しは暗い。
アピラック前知事は辞任前、「(調査の結果)不正は見当たらなかった」と言明。バンコク都庁側も「不正はなかった」との見解を表明したのだ。
さらに、現地の政情が不安定で、当局の調査も不十分なまま中断されているうえ、現地サイドの捜査協力が得られるとは考えにくい状況だからだ。
タイで不正受注したという高原容疑者の供述を裏付ける証拠は乏しく、立件は困難視されているのが現状だ。
なぜ日本に持ち込んだ?
もうひとつ、大きなナゾがある。
外国での受注工作に使われるはずの裏金の一部が、会社上層部の指示で国内に持ち込まれたのはなぜなのか−という疑問だ。実は、今後の捜査の焦点は、ここにありそうなのだ。
西松の裏金は海外の受注工作に利用されると同時に、国内でも何らかの「工作」に充てられていた可能性があるのだ。高原容疑者の弁護人によると、高原容疑者は会社の指示で日本に持ち帰った裏金の一部を、「上層部に渡した」と説明しているからだ。
検察OBはこうみている。
「特捜部が注目しているのは、国内に持ち込まれた裏金が政界に流れていないかどうか、だろう」
民間の信用調査機関によると、同社は明治7年の創業で、設立は昭和12年。主に大型土木工事を手がけている。
従業員数約3600人、資本金235億円余。総売上高4000億円(平成20年3月期)の西松建設は、平成5〜6年のゼネコン汚職事件の際、仙台市長などへの贈賄罪で副社長が検察に摘発された過去がある。
談合との関係も深い。かつて関西の談合組織を支配し、「ドン」とも呼ばれた故平島栄氏が同社の相談役を務め、和歌山県発注の下水道工事談合事件(平成18年)でも検察の捜索を受けた。
「談合の背後に政治家や首長の『天の声』があったケースは、これまでいくつも明らかになっている。政治への資金提供と談合はコインの表裏のようなもの。談合の疑惑がつきまとうゼネコンの裏金が、政界に流れた可能性は否定できないだろう」
検察幹部はこう話すのだが、それが“憶測”ではなく“事実”としてあぶり出されるまでには、まだ時間がかかりそうなのである。