河村建夫官房長官が8日、「政府高官」は漆間巌官房副長官だと明らかにしたのは、参院予算委員会でこの問題を追及する構えでいる民主党を前に、政府側から発言者を明らかにして早期の事態収拾を図る狙いがある。だが民主党など野党が反発を強めているのに加えて、身内の政府・与党内からも漆間氏の更迭論が出ている。麻生太郎首相は苦しい判断を迫られそうだ。【高塚保】
首相は7日に河村氏と協議のうえ、発言した政府高官は漆間氏だと公表すると決めた。その際、民主党が漆間氏の国会への参考人招致を求めれば応じる方針も確認した。首相官邸サイドは「発言は一般論で、実際に捜査に影響を及ぼしていない」との説明で乗り切れると見ている。官房副長官は各省との調整能力が期待され、旧厚生省、旧自治省などのOBが起用されてきた。首相は北朝鮮問題などで信頼を置く警察庁出身の漆間氏をあえて肝いりで起用しただけに、更迭は避けたいとの思いもある。
民主党の鳩山由紀夫幹事長は8日、記者団に「内閣のど真ん中にいる元警察庁長官が話したという事実は大変重い」と指摘。「内閣のど真ん中と検察の間で会話のやりとりがあったとしか思えない。『一般論だ』と言っても、一般論でそのような話が生じるわけがない」と、追及する姿勢を強めている。
政府・与党内でも「参院予算委員会での審議に影響が出る前に漆間氏を更迭すべきだ」との声が出ている。与党幹部は「首相が9日にもスパッと更迭すべきだと思う。そうすれば素早い対応をしたことにもなる」と語る。
政府・与党内から更迭論が出る裏には首相周辺が「漆間さんは大した仕事もしていない。この際代えた方がいい」と語るように、事務方トップとしての漆間氏の能力に疑問符がついていることもある。漆間氏は9日に定例記者会見などで発言の真意を説明する意向だが、説明次第では、さらに更迭論が高まるとみられる。
毎日新聞 2009年3月9日 東京朝刊