岩手

　◇地元関係者、一様に驚き

　小沢王国本丸にも捜査のメス－－。準大手ゼネコン「西松建設」（東京都港区）による違法献金事件。新政治問題研究会と未来産業研究会の二つの政治団体から献金を受けていた民主党県第４区総支部（奥州市）や党県連事務所（盛岡市）にも４日、東京地検特捜部の家宅捜索が入り、関係者に衝撃が走った。

　特捜部の係官１２人が、小沢一郎民主党代表が総支部長を務める奥州市水沢区袋町の第４区総支部へ徒歩で現れたのは午前１１時５５分ごろ。約３０人の報道陣が待ち構える中、黒色のスーツに身を固めた係官らは２班に分かれて事務所に入った。午後４時２０分ごろに捜査が終了し、押収資料が入った段ボール約３０個を車２台に分けてすばやく運び出した。

　同党県連事務所の盛岡市大通のビルにも正午前、係官十数人が家宅捜索に入った。約６時間後、書類などが入った段ボール約３０個をワゴン車に積み、運び出した。対応した女性事務員は「内容はよく分からない」などと話した。

　県内の党関係者などからは驚きや説明責任を求める声が上がった。０７年まで県連代表を務めた達増拓也知事は県議会終了後、報道陣に対し、「（家宅捜索は）なぜなのかよく分からない」と首をかしげた。

　民主党県連の佐々木順一幹事長は「県連にまで来るとは思っていなかった」と驚きを隠さないが、「捜査が進んだ段階で真相が究明され、疑いが晴らされるものと考えている」と話した。自民党県連の千葉伝幹事長は「一連の捜査を注視したい」と今後の展開を見守りつつも「今後の県政で、しっかりと内容を県民に説明すべきだと思う」と述べた。

　公明党の小野寺好代表は「それなりの裏付けがあって捜査が入ったはず。過程を明らかにすべきだ。『権力行使だ』と開き直ったような発言はどうなのか」と小沢氏の会見を批判した。

　共産党県委員会の菅原則勝委員長は「会見は、疑惑に答えていない。小沢氏は自ら明らかにすべきだ」。社民党県連合の伊沢昌弘幹事長は「一連の捜査に問題ありとするなら、関連する帳簿を全面公開し、身の潔白を証明すべきだ」と説明責任を求めた。

　次期衆院選への影響について、達増知事は「（民主党への影響を）意図して今回の逮捕捜査が行われたとすれば、とんでもないこと」と憤慨。一方で、他党からは「代表を辞めるなどしっかりした対応を取らないと支持を失うのでは。選挙へマイナスの影響は出るだろう」（小野寺代表）との声も出た。

　◇釜石の支援者動く　大久保容疑者、秘書採用背景

　政治資金規正法違反容疑で逮捕された大久保隆規容疑者が当時の自由党の小沢一郎党首の秘書に採用された背景には、釜石市の支援者らの強い働きかけがあったことが複数の関係者への取材で分かった。

　大久保容疑者は９９年の同市長選に２期目の市議を辞職して立候補し落選、職を失った。関係者によると、大久保容疑者は市長選で応援してくれた自民党の衆院議員の秘書を希望したが断られたため、心配した支援者の水産加工業関係者らと当時の野田武義前市長に近い市議が本人を連れて上京。小沢党首側に引き合わせたという。水産加工業関係者らは大久保容疑者の祖父が漁船漁業をしていた関係もあり、支援していた。

　当時の後援会関係者の一人は「小沢党首側にも釜石に拠点がほしかったのだと思う。最初は県議選に出る予定で自民党の推薦状も得ていた人物が自民党を出た小沢さんの秘書になったのでとても驚いた覚えがある」と振り返った。【鬼山親芳】

　◇「寄付は最近知った」　議会追及、当時県連代表の知事

　４日の県議会一般質問では当時の民主党県連代表だった達増拓也知事の責任を追及する声が上がった。

　一般質問で無所属の及川敦議員は、県連が西松建設のＯＢが設立した二つの政治団体から０３年から０６年に１１００万円の献金を受けていたことを指摘。「知事は献金を認識していたのか。知らなかったとすればそれはなぜか」などと追及した。

　達増知事は「県連に寄付があったことは最近の報道で知った。収支の一つ一つを把握することは物理的に不可能だった」と釈明。政治献金の返還については「小沢代表は会見で、指摘を受けている（政治）団体からの献金は、献金の原資または献金する側に違法性が確定された段階で返還すると述べている。県連でもそれに準じた対応がなされるだろう」と述べた。

　また知事は、自身の政治資金管理団体などについて二つの政治団体からの献金やパーティー券の購入実態は「確認したが、ない」と話した。【念佛明奈】

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

　◇民主党県第４区総支部への西松建設関係の政治団体からの献金◇（単位は万円）

　　　　　　　　　　０３年　０４年　０５年　０６年

新政治問題研究会　　３００　３００　３００　１００

未来産業研究会　　　１００　１００　１００　１００