教科書改善の会は本日、沖縄戦集団自決教科書検定問題での文部科学省、教科書会社の対応を批判する下記のコメントを発表しました。また、現在発売中の「正論」2月号に、11月15日に当会が開催した緊急シンポジウム「沖縄戦を子供たちにどう伝えるか」の内容が27ページにわたって掲載されています。併せてお読みいただければ幸いです。
平成19年12月27日
沖縄戦集団自決をめぐる教科書検定問題に関するコメント
改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会
(教科書改善の会:代表世話人 屋山 太郎)
昨日(12月26日)、教科用図書検定審議会(会長・杉山武彦一橋大学教授)は、沖縄戦集団自決をめぐる高校日本史教科書記述の変更について、検定決定後の教科書会社6社による教科書記述の訂正申請(本年11月)と再申請(同12月)、および検定の結果の内容について公表しました。
発表によれば、沖縄戦集団自決には「日本軍の強制」や「命令」について直接的な根拠がないとして認めない一方、「軍の関与」については集団自決の要因として容認した内容となっています。
すでに専門家の間で否定された「軍の強制・命令」説に基づく教科書会社の訂正申請を、根拠がないとして退けた検定審の見識は評価すべきであり、本来ならば、検定意見撤回を求める一部の動きに便乗して実証性を欠いた訂正申請をした教科書会社6社の姿勢こそが強く非難されるべきだと考えます。
しかしながら、「軍の関与」については、検定審でも事実認定でないとして承認しましたが、これは諸般の事情があるとはいえ、教科書記述としての正確さを損なうものであり、教科書会社側と文科省・検定審側との間ではかられた一種の「政治的取り引き」ではなかったかと疑われます。また、背景説明として新たに付け加えられた教科書記述も著しく偏った内容が見え、これは対立した見解がある場合は両論併記を旨としてきた検定方針を逸脱したものといえます。
本年11月30日に「教科書改善の会」が渡海文部科学大臣あてに提出した「要望書」にも明記した通り、教科用図書検定規則第13条によれば訂正申請は、誤記・誤植や明白な事実の誤りなどに限られ、検定後の書き換えは認められておらず、教科書会社による自主訂正はもちろんのこと、検定審で議論すること自体も本来は違法行為です。
それゆえ、検定終了後の不法な政治介入に対処した検定審のこの間の努力に私たちは敬意を表するものの、結果として教科書検定の中立性や正確さを損なう事態となり、こうした違法行為を認め続けるならば、今後、検定後の教科書会社によるどのような記述変更も可能となり、文科省は自ら定めた検定制度を崩壊させかねない禍根を残したといえます。
こうした自主訂正を認める形での変更は、渡海大臣も認めたように沖縄県民大会を受けて検討が始まりました。この県民大会の参加者数は主催者発表の11万人ではなく、私たちの関係者が会場の航空写真をもとに数えたように2万人以下であることが判明しており、以後の教科書記述の変更の動きは誤った情報に基づいたものでした。一度決定した検定結果を、このような政治的圧力によって再検討もあり得ると示唆したのは渡海大臣であり、私たちは改めてこの大臣の姿勢に強い抗議の意を表明します。
しかし、私たちは県民大会に集まった沖縄県民の思いを、それがたとえ扇動に基づくものであれ、真摯に受け止めなければならないと考えます。多くの沖縄県民の胸中には、自身やその家族が犠牲になった沖縄戦について、本土側の無理解があるとの不満が渦巻いており、また、集団自決という事実自体が教科書で否定的に扱われて、沖縄戦での犠牲も軽視されるのではないか、といったと疑念が背景にあると思われます。
私たちは、こうした沖縄県民の疑いを払拭し、沖縄戦に対する国民的コンセンサスを築いていくためにも、歴史教科書には本土防衛の盾となった沖縄戦の尊い犠牲について感謝と共感を示す記述が必要だと考えています。
これは、沖縄戦での尊い犠牲のうえに今日のわが国の平和があることを忘却したことから沖縄と本土の感情の離間を招いていることへの日本国民としての率直な反省であり、決して集団自決を軍の強制や関与によるものとして史実を捻じ曲げることではありません。
以上の趣旨から、今回の沖縄戦集団自決をめぐる教科書検定について、下記5項目のコメントを公表します。
記
1.教科書検定が、根拠のない沖縄集団自決「軍命令・強制」説に依拠しない方針を示したことは評価でき、文科省・検定審の努力には敬意を表する。
2.一方、「軍の関与」について検定審で自主訂正を承認したのは、諸般の事情があるとはいえ、教科書会社と文科省・検定審との間ではかられた一種の「政治的取り引き」ではないかと疑われる。これは教科書検定の中立性や正確さを損なうものであり、検定制度に大きな禍根を残したという点では甚だ遺憾である。
3.今後は、教科用図書検定基準などの法令に基づく検定意見を堅持し、文科省および検定審は二度とこうした異常な事態が生じないよう「今後、検定終了後の自主訂正を認めない」方針をあらためて示すこと。
4.中学校の歴史、高等学校の日本史の学習指導要領改訂にあたっては、これまで沖縄戦における沖縄県民の犠牲に対して感謝と尊敬の念を欠き、沖縄と本土の感情が離間していたことを率直に反省し、沖縄戦の尊い犠牲に対する感謝と共感の念をはぐくむよう記述すること。
5.また、沖縄戦に限らず、先の大戦の全般に対する従来の著しく偏向した歴史認識や教科書記述に対して、日本国民として先人に深い感謝と尊敬の念を抱く国民的コンセンサスの形成を目指し、「教科書改善の会」は今後も教科書改善運動に全力で邁進することを誓うものである。
<文責 教科書改善の会 事務局>
▼沖縄シンポの内容が収録された「正論」2月号
平成19年12月27日
沖縄戦集団自決をめぐる教科書検定問題に関するコメント
改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会
(教科書改善の会:代表世話人 屋山 太郎)
昨日(12月26日)、教科用図書検定審議会(会長・杉山武彦一橋大学教授)は、沖縄戦集団自決をめぐる高校日本史教科書記述の変更について、検定決定後の教科書会社6社による教科書記述の訂正申請(本年11月)と再申請(同12月)、および検定の結果の内容について公表しました。
発表によれば、沖縄戦集団自決には「日本軍の強制」や「命令」について直接的な根拠がないとして認めない一方、「軍の関与」については集団自決の要因として容認した内容となっています。
すでに専門家の間で否定された「軍の強制・命令」説に基づく教科書会社の訂正申請を、根拠がないとして退けた検定審の見識は評価すべきであり、本来ならば、検定意見撤回を求める一部の動きに便乗して実証性を欠いた訂正申請をした教科書会社6社の姿勢こそが強く非難されるべきだと考えます。
しかしながら、「軍の関与」については、検定審でも事実認定でないとして承認しましたが、これは諸般の事情があるとはいえ、教科書記述としての正確さを損なうものであり、教科書会社側と文科省・検定審側との間ではかられた一種の「政治的取り引き」ではなかったかと疑われます。また、背景説明として新たに付け加えられた教科書記述も著しく偏った内容が見え、これは対立した見解がある場合は両論併記を旨としてきた検定方針を逸脱したものといえます。
本年11月30日に「教科書改善の会」が渡海文部科学大臣あてに提出した「要望書」にも明記した通り、教科用図書検定規則第13条によれば訂正申請は、誤記・誤植や明白な事実の誤りなどに限られ、検定後の書き換えは認められておらず、教科書会社による自主訂正はもちろんのこと、検定審で議論すること自体も本来は違法行為です。
それゆえ、検定終了後の不法な政治介入に対処した検定審のこの間の努力に私たちは敬意を表するものの、結果として教科書検定の中立性や正確さを損なう事態となり、こうした違法行為を認め続けるならば、今後、検定後の教科書会社によるどのような記述変更も可能となり、文科省は自ら定めた検定制度を崩壊させかねない禍根を残したといえます。
こうした自主訂正を認める形での変更は、渡海大臣も認めたように沖縄県民大会を受けて検討が始まりました。この県民大会の参加者数は主催者発表の11万人ではなく、私たちの関係者が会場の航空写真をもとに数えたように2万人以下であることが判明しており、以後の教科書記述の変更の動きは誤った情報に基づいたものでした。一度決定した検定結果を、このような政治的圧力によって再検討もあり得ると示唆したのは渡海大臣であり、私たちは改めてこの大臣の姿勢に強い抗議の意を表明します。
しかし、私たちは県民大会に集まった沖縄県民の思いを、それがたとえ扇動に基づくものであれ、真摯に受け止めなければならないと考えます。多くの沖縄県民の胸中には、自身やその家族が犠牲になった沖縄戦について、本土側の無理解があるとの不満が渦巻いており、また、集団自決という事実自体が教科書で否定的に扱われて、沖縄戦での犠牲も軽視されるのではないか、といったと疑念が背景にあると思われます。
私たちは、こうした沖縄県民の疑いを払拭し、沖縄戦に対する国民的コンセンサスを築いていくためにも、歴史教科書には本土防衛の盾となった沖縄戦の尊い犠牲について感謝と共感を示す記述が必要だと考えています。
これは、沖縄戦での尊い犠牲のうえに今日のわが国の平和があることを忘却したことから沖縄と本土の感情の離間を招いていることへの日本国民としての率直な反省であり、決して集団自決を軍の強制や関与によるものとして史実を捻じ曲げることではありません。
以上の趣旨から、今回の沖縄戦集団自決をめぐる教科書検定について、下記5項目のコメントを公表します。
記
1.教科書検定が、根拠のない沖縄集団自決「軍命令・強制」説に依拠しない方針を示したことは評価でき、文科省・検定審の努力には敬意を表する。
2.一方、「軍の関与」について検定審で自主訂正を承認したのは、諸般の事情があるとはいえ、教科書会社と文科省・検定審との間ではかられた一種の「政治的取り引き」ではないかと疑われる。これは教科書検定の中立性や正確さを損なうものであり、検定制度に大きな禍根を残したという点では甚だ遺憾である。
3.今後は、教科用図書検定基準などの法令に基づく検定意見を堅持し、文科省および検定審は二度とこうした異常な事態が生じないよう「今後、検定終了後の自主訂正を認めない」方針をあらためて示すこと。
4.中学校の歴史、高等学校の日本史の学習指導要領改訂にあたっては、これまで沖縄戦における沖縄県民の犠牲に対して感謝と尊敬の念を欠き、沖縄と本土の感情が離間していたことを率直に反省し、沖縄戦の尊い犠牲に対する感謝と共感の念をはぐくむよう記述すること。
5.また、沖縄戦に限らず、先の大戦の全般に対する従来の著しく偏向した歴史認識や教科書記述に対して、日本国民として先人に深い感謝と尊敬の念を抱く国民的コンセンサスの形成を目指し、「教科書改善の会」は今後も教科書改善運動に全力で邁進することを誓うものである。
<文責 教科書改善の会 事務局>
▼沖縄シンポの内容が収録された「正論」2月号
扶桑社の中学校歴史・公民教科書を継続発行するフジサンケイグループの教科書会社、育鵬社のホームページが開設されました。
http://www.ikuhosha.co.jp/
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