なるほど、と思える効果が確認された。街に次世代型路面電車(LRT)を整備したら、高齢者が外出する機会が増えたという。
運輸政策研究機構(東京)が、わが国初のLRTが整備された富山市で約千二百人にアンケートした結果だ。約四分の一の人が外出する頻度が増えたと回答し、特に高齢者では三割に上った。
もとはローカル線のJR富山港線だったが、市が三年前にLRTに衣替えした。駅の数を増やし、日中は一時間に一本程度だった運行本数も十五分ごとになり、格段に便利になった。さらに、段差がなくて乗り降りしやすいといった低床車両のLRTの特性が、特に高齢者に外出を促す効果を生んだ、と機構は説明する。
全国から富山に注目が集まるが、富山港線はもともと、岡山県のJR吉備線と同時にLRT化が構想された経緯がある。岡山が進まないうちに富山が先行した形だ。
現在、岡山市が策定中の都市交通戦略では、LRTの導入が柱に据えられた。高齢社会を迎えた中で、車から公共交通などへのシフトを図るという。
だれしも、いつまでも車の運転ができるわけではない。生活の質向上や健康維持などに、高齢者が気軽に外出できる仕組みづくりは不可欠である。利用しやすい公共交通の整備は、福祉政策ともいえるだろう。