Print this Post Article Lists Back

【コラム】ソフトウェア至上主義

 世界的な景気低迷が本格化した昨年第4四半期(10-12期)の企業実績から、一つ面白い事実を発見した。サムスン電子、ソニー、東芝、日立といった韓国と日本の大手電機メーカーは実績が急激に悪化している一方で、マイクロソフトやIBM、アップルなど米国企業は、予想よりもはるかに実績が良い、ということだ。

 サムスン電子は昨年第4四半期決算で創業以来初となる赤字を記録した。ソニーも14年ぶりに営業赤字に転落したほど苦戦した。日立は昨年4-12月期の最終赤字が4000億円に迫り、日本唯一のメモリ半導体メーカー、エルピーダは営業損失が売上額に匹敵するという最悪の状況に見舞われた。

 その反面、マイクロソフトは、昨年第4四半期に41億ドル(現在のレートで約4000億円、以下同)の営業利益を計上した。情報技術(IT)コンサルティング企業のIBMは、昨年第4四半期の純利益が世界の景気が頂点に達した2007年第4四半期をさらに10%程度上回った。韓日のメーカーと同じく携帯電話・MP3プレーヤー・ノートパソコンを手がけるアップルを見ると、さらに驚かされる。アップルは赤字に陥っている競争相手の企業をあざ笑うかのように、売り上げ102億ドル(約9953億円)、純利益16億ドル(約1561億円)という史上最大の実績を達成し、ウォール街を仰天させた。米国のIT企業の実績だけを見ると、「世界的な金融危機の震源地は本当に米国なのか」という思いすら浮かぶ。

 しかし、これら二つの企業群の間には決定的な違いがある。赤字を出した企業は、LCD(液晶ディスプレー)テレビや半導体・携帯電話といったハードウェアを主に生産しているが、黒字を出した企業はソフトウェア企業だったり、ハードウェア製品を生産していながらも、ソフトウェア的な能力が優れている。クリエイティブなビジネスモデルと技術を基盤とした市場支配力が極めて強い上、「無工場」企業のため毎年数兆ウォン規模の設備投資を行う必要もなく、そのため不況になるほどその真価を発揮する、というわけだ。

 実際、全世界は「IT」だ「インターネット」だとうたっているが、ソフトウェア産業の競争力に関する限り、米国をしのぐ国はない。例えば世界のソフトウェア企業トップ100に米国企業は82社も含まれるのに対し、他国の企業はドイツ・日本・イギリスといった先進国ですら3-4社に過ぎない。もちろん、韓国はただの1社も入っていない。

 問題は、米国のIT企業がソフトウェアの競争力にものを言わせ、携帯電話やMP3プレーヤー、テレビといったハードウェア市場を攻略し始めたことだ。IT融合・複合化のトレンドに乗り、こうした技術支配力の転移現象は益々はっきりしている。最も代表的な例がアップルだ。アップルはここ2-3年で最も革新的な製品といわれる携帯電話「iPhone」を直接生産していない。直に手がけるのはソフトウェアの運用システムやデザインだけで、生産については、韓国人が一枚下だとみなしている台湾の企業に委託している。それでも、iPhoneの発売からわずか1年で世界トップ10に入る携帯電話メーカーへと跳躍した。また、これとは別に革新的な製品に挙げられる「グーグルフォン」も、台湾企業が生産を委託されている。それどころか、グーグルは自社のソフトウェアを無料で提供し、能力さえあれば誰でも「グーグルフォン」を作れるとアピールしている。

 ソフトウェアが製造技術を圧倒するこうした現象は、韓国にとっては極めてありがたくないメッセージを世界市場に発信する。「iPhone」や「グーグルフォン」に熱狂する世界の消費者に向け、「ソフトさえあれば、(ハードの)製造は誰がやろうと関係ない。今や製造技術は重要ではない」という恐るべきソフトウェア至上主義を伝える、というわけだ。依然として製造技術の競争力に基盤を置く韓国企業にとっては、致命的といえるだろう。

チョ・ヒョンレ産業部次長待遇

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る