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シンポジウム「一刻も早く日本人妻等の救出を・日本人妻の斉藤博子さんは訴える」参加報告

ひらのゆきこ2008/04/29
1ヶ月間、山を歩き野宿をしながら川を渡って中国に入った日本人妻の斉藤さん。「北朝鮮で生き残った人たちは日本政府が助けにきてくれると信じています。どうか1日も早く日本の土をを踏ませてあげて下さい」と訴えました。
北朝鮮 人権 NA_テーマ2

目次
P1.一刻も早く日本人妻等の救出を
・「歯がゆい」と議連会長
・北朝鮮帰国者問題について
・日本人妻の思い
・なぜいま日本人妻の救出が必要なのか
・斉藤博子さんのお話
・堂々と日本に帰りたい
・斉藤さんは、日本人妻の思いを次のように語りました

P2.拉致報道に比べ、報道が少ない日本人妻問題
・拉致問題と日本人妻の問題はリンクしている
・人の往来の自由なくして国交正常化なし
・本物の歴史をつくるために、家族が声をあげてほしい
・見て見ぬふりをすることはできない
・後戻りせず、着実に一つずつ前進することが大事
・早くしなければ日本人妻がいなくなる


一刻も早く日本人妻等の救出を
 4月19日午後、東京都港区の港勤労福祉会館で、北朝鮮帰国者問題を考えるシンポジウム「一刻も早く日本人妻等の救出を−日本人妻の斉藤博子さんは訴える」が開催されました。主催は脱北帰国者支援機構です。

 1959年から始まった北朝鮮への帰還事業で、在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡った日本人妻の帰国を促す活動を続けている超党派の国会議員による「日本人妻等自由往来促進議員連盟」は15日、福田首相宛に日朝交渉で日本人妻問題を取り上げてほしい、などとする要望書を提出しました。

「歯がゆい」と議連会長
 シンポジウムに先立ち、同議員連盟会長の稲葉大和衆議院議員が挨拶をしました。稲葉議員は、日朝政府間の付き合いが実現しておらず、自由に往来出来ていないことについて、「歯がゆい」と語りました。日本は拉致問題を抱えており、北朝鮮は全部解決したと明言していることから解決の糸口はつかめないが、日本人妻など北朝鮮にいる人たちが自由に日本と往き来できる国と国の関係をつくっていきたい、と述べました。

 (福田首相宛に)要望書を書いたが、日本人妻はすでに70歳、80歳を超えている人もいる。命さえ永らえていれば必ず日本に帰ってこられると我慢している人たちの思いを考えると、1日も早く帰国を実現するのが日本にいる我々の務めであるとし、みなさんからも我々の背中を押してほしい、と呼びかけました。

 最初に、北朝鮮帰国者問題について、脱北帰国者支援機構代表の坂中英徳さんと、同機構の相談員神田真実さんのお話がありました。次に、北朝鮮から脱出した日本人妻の斉藤博子さん(66)のお話がありました。休憩をはさみ、コーディネーター・河明生さん、パネリスト・斎藤博子さん、石原進さん(外国人政策研究所理事)、神田真実さん、坂中英徳さんによるパネルディスカッションがありました。

シンポジウム「一刻も早く日本人妻等の救出を・日本人妻の斉藤博子さんは訴える」参加報告 | <center>北朝鮮から脱出した日本人妻の斉藤博子さん(66)</center>
北朝鮮から脱出した日本人妻の斉藤博子さん(66)
北朝鮮帰国者問題について
 1959年から始まった北朝鮮帰還事業で「どれほどの人が北朝鮮に渡ったのか」という神田さんの質問に対し、坂中さんは、帰還事業は「民族大移動だった」との認識を示した上で、93,340人(日本人6,730人を含む。日本人妻は約1,800人)が北朝鮮に渡ったと答えました。現在どのぐらいの日本人妻が存命しているのか、という質問に対しては、(希望的観測として)200人〜100人ぐらい、と答えました。年代的には、60代後半から、70代、80代、90代です。

日本人妻の思い
 日本人妻の思いについて、坂中さんは、日本人妻が帰国運動の一番の犠牲者、と述べ、日本人妻は北朝鮮の公民とされ、出国が認められず、最もむごい扱いを受けてきた、と語りました。その事実は日本では知られておらず、迫害や飢饉の中で、ただ一つ日本に帰りたい、という祖国への思いが生きる支えになっている、と語りました。

 1990年代に43人の日本人妻が里帰りしたが、その人たちは選ばれた人たちであり、多くの人たちは選ばれなかったこと、次は選ばれるかもしれないと思いながら、無念の思いを抱いて亡くなった人や、死んだら頭を日本海に向けて埋葬してほしいと言い残して死んでいった人もいた、と語りました。存命している日本人妻は、日本の土を踏んでから死にたいという切実な思いを抱いており、もし日本に帰れず、北朝鮮で死んだら恐ろしくて夜中に目がさめる、と涙ながらに訴える人もいると語りました。

 半世紀が経っても救出が実現されなかったが、日本政府を恨むことなく、必ず日本政府が助けてくれるとひたむきな思いで生きている、と日本人妻たちの思いを代弁しました。日本人として亡くなっていった日本人妻たちと同じように、存命の妻たちも救出してくれるのを待っており、死ぬ前に日本の土を踏みたいという祖国への思いを抱いていることを知ってほしい、と訴えました。

なぜいま日本人妻の救出が必要なのか
 現在、6人の日本人妻が日本に戻っているそうです。なぜいま日本人妻の救出が必要なのか、という質問に対し、坂中さんは、日本国民なのだから日本に帰りたい、日本で死にたい、と思っている人たちを助けないのはとんでもない、と述べ、その人たちを助けるのは国家の責任であり、救いの手を差し延べないのは、国家ではない、と断じました。

 この問題について、北朝鮮を批判しても彼らはなにも答えないので、日本政府に訴え、外交チャンネルにのせてもらう。北朝鮮は日本との国交正常化を実現するのが最大の望みであり、日本人妻は北朝鮮外交の切り札となり得ることから、これを使わない手はない、との考えを示しました。

 今後の取り組みについては、全員帰ってきてもらい、自由に往来するために、国交正常化を実現すること、人と人の交流を実現することを政府に要請し、国会で議論をしてもらうこと、北と会うたびにこの問題を話し合うこと、などであるとしました。国交正常化交渉の中で日本人妻の問題が取り上げられたことはなく、日朝関係が行き詰まっている中、この問題が新たなアプローチになる、との認識を示しました。

斉藤博子さんのお話
 斉藤さんは、日本に帰ってきた経緯について語りました。斉藤さんのお話によると、ある日、ぜんぜん知らない男の人がきて、中国に行って日本に電話をかけてみないかと言われたそうです。帰国者や日本人妻がどこに住んでいるかを知っていて、そのような話を持ちかけてくるブローカーのような人がいるそうですが、斉藤さんは、日本に帰ることはまったく知らなかったと語りました。

 1ヶ月間山を歩き、野宿をしながら川を渡って中国に入り、日本の家族に電話をしたら電話が通じなかったそうです。北朝鮮から中国に逃げてきた人をブローカーの人が売り飛ばすという話を聞いていたので、大変怖かったと語りました。連れて行かれた先で、日本に帰ることもできるから日本に行って見ないか、とはじめて聞いたと語りました。

 北朝鮮では、日本人妻たちはお互いの名前を知らずに過ごしていたそうです。名前ではなく、だれだれのおばさん、とか、大阪のおばさん、とか、その家の名を呼べば、日本人だとわかったと語りました。その人たちと会うのは1ヶ月に1回で、(国から支給される)お金をもらいに行った帰り、外に出てから、このごろ日本から手紙がきませんか、とか、いいことありませんか、といった短い会話のやり取りをする程度であったそうです。

堂々と日本に帰りたい
 斉藤さんは、あの人たちの名前だけでも聞いておけばよかったと語りました。日本にいる家族に様子を伝えることができるからです。脱北者は北朝鮮に家族がいるので、家族のことをとても心配している、と述べ、お金だけが助けてやれる、と苦しい胸のうちを吐露しました(斎藤さんはスーパーなどで一生懸命働きながら、北朝鮮の家族に仕送りをしています)。

 斉藤さんは、脱北者の人たちは、氷の上を歩いて中国に渡った人や、川を渡りきれずに死んだ人もいた、と述べ、こんな苦労をせず、堂々と日本に帰ることができるようにしなければなりません、と訴えました。北朝鮮ではなんの情報も入ってこないので、拉致問題のことも日本に来てから知ったそうです。日本人妻問題が解決することで拉致問題も解決につながる、と述べ、1日も早く解決してほしいと強く訴えました。

斉藤さんは、日本人妻の思いを次のように語りました
 「日本人妻たちは、3年したら里帰りができるといわれて北朝鮮に渡りました。3年が30年経ち、40年経っても日本に帰ることはできませんでした。私は、みなさんを信じています。北朝鮮では待っています、いつか帰ることができることを……。時間がありません。国民のみなさんに力を貸してほしいのです」

 「3年したら里帰りができると朝鮮総連が言いました。日本が助けなければだれが助けるんでしょうか。勝手に行って勝手に帰って来る、という批判があるかもしれません。帰ってきても、親もだれもいないかもしれません。でも、日本人妻はかわいそうです。3年経ったら里帰りができるということは大きな希望でした。帰ることができず、亡くなった人もいました」

 「(北朝鮮での暮らしは)日本にいるときよりももっとひどいものでした。たとえ、存命している人が1人になっても日本人妻を助けてください。生きていれば日本政府が助けにきてくれると信じています。生き残った人たちに日本の土を踏ませてあげてください。人道的見地から日本人妻を助けてあげてください」

(次ページに続く)

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