毎日新聞が6、7日に実施した全国世論調査(電話)で、民主党の小沢一郎代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件を受け、民主支持層の間に「小沢離れ」が広がっていることが浮かび上がった。民主党が事件で受けたダメージの大きさも数字は示す。「政権交代への有権者の期待感は変わっていない」という強気の弁も聞かれるが、党内は一様に深刻に受け止めた。【上野央絵、古本陽荘】
調査結果を政党支持別に分析すると、小沢氏の事件に関する説明に納得できるかどうかを尋ねた質問への回答は、自民支持層では「納得できない」が89%と圧倒的。「支持政党はない」と答えた無党派層も83%が「納得できない」と答えた。また、民主支持層も「納得できる」は27%にとどまり、「納得できない」の64%が大きく上回った。
小沢氏が代表を辞めるべきかどうかに対して、民主支持層は「辞める必要がない」が半数を超える52%。事件の全容が明らかになっていない今の段階では、進退について結論を急ぐべきではないという判断がうかがえる。
ただ、「辞めるべきだ」も41%。捜査の進展に伴う小沢氏の説明が尽くされない場合、民主支持層の間でも辞任論が広がることが予想される。自民支持層、無党派層の「辞めるべきだ」との回答は、それぞれ68%、59%だった。
「麻生太郎首相と小沢氏のどちらが首相にふさわしいか」を聞いた質問では、民主支持層で小沢氏と回答したのは2月の前回調査比17ポイント減の38%、「どちらもふさわしくない」が17ポイント増の59%。小沢氏を離れた層がそのまま「どちらもダメ」に移行したようだ。
無党派層は麻生首相が横ばいの3%だったのに対し、小沢氏は7ポイント減の8%で、ともに1ケタになった。ここでも「どちらもふさわしくない」が9ポイント増の85%で圧倒的に多い結果となった。
一方、次期衆院選で勝ってほしい政党を尋ねた質問、衆院選が今実施された場合の比例代表の投票先を尋ねた質問では、無党派層の「民主離れ」が顕著。民主との回答はそれぞれ前回調査比13ポイント減の35%、昨年12月調査比15ポイント減の16%だった。
政党支持率を男女別に見ると、女性で自民と民主が逆転。前回調査は自民19%、民主21%だったが、今回は自民21%、民主15%となった。男性でも自民が3ポイント増の23%、民主が5ポイント減の32%で、差が縮まった。年代別では、前回は20代だけ自民が民主を上回ったが、今回は20代のほか、60代、70代以上も自民の方が高かった。
厳しい数字を突きつけられた民主党には、「踏みとどまった」との楽観論と「事件が直撃した」との悲観論が交錯した。今後、捜査が自民党にも波及しそうな中、大勢が推移を見守る構えだ。
「政党支持率は自民と並んだが、比例でまだ勝っている」
鳩山由紀夫幹事長は事件の影響を認めながらも強気の姿勢を崩さなかった。また、輿石東参院議員会長は「今週末が一番のヤマだった。自民党側の捜査が報道され始め、今後、回復するのでは」と期待感を示した。
中堅議員からは「政権交代の基調は変わっていない。参院選勝利を導いた小沢代表の下でマイナスをプラスに転じていくしかない」との声も。鳩山氏を中心とするグループの若手議員も「党内が一気に小沢辞任論に行くほどではない」との見方を示した。
これに対し、小沢氏に距離を置く中堅議員は「早く辞めた方がいい。小沢氏が裁判の結果が出るまで辞めないとすれば選挙に間に合わない」と指摘。党幹部の一人も「小沢氏が粘れば粘るだけ、選挙で落ちる候補者が増える」と頭を抱えた。
ただ、「小沢氏辞任を求める世論が高まったところで『小沢降ろし』はなかなか出てこない」(幹部)のが党の現状。党内では「調査結果を受け、小沢氏本人が選挙への影響などをどう判断するかにかかっている」という見方が強まっている。
毎日新聞 2009年3月8日 東京朝刊