岩手県立病院無床化 一時凍結論けん制 県政与党会派
伊藤院長は内科医が足りない千厩病院について「納豆の糸で引っ張っても倒れそう」と語り、医師不足が基幹病院や地域病院でも深刻化している実態を説明。無床化計画には「基幹病院が余裕のないまま当直応援している中、地域医療を守るため、県立病院の院長会が議論して出した苦渋の選択だ」と理解を求めた。 一方で、増加する医師の退職には「患者の苦情や訴訟、医師の待遇などの問題のほか、医師を理解してくれない住民との関係もある」と勤務の過酷さ以外にも理由があることを指摘。「医師はバッシングに不慣れで、『病院に来ないでくれ』とコンビニ受診抑制を患者に訴えられないのが現実だ」とも話した。 勉強会は会派が医療局に協力を要請して開催。局幹部も出席し、昨年暮れまでに県立病院の常勤医25人が退職したことなどを報告した。 無床化計画は開会中の2月定例会で議論の的になる見込み。県議の半数を超える他会派の26人が一時凍結を求め、病院事業会計の当初予算案否決の可能性も取りざたされている。 勉強会を公開にしたことについて、会派の佐々木順一代表は「県議会が現場の医師からも声を聞いていることを県民にアピールする狙いもある」と説明した。 これに対して他会派の議員は「民主系にも無床化の4月実施にちゅうちょする議員もいる。(マスコミの利用は)会派内をまとめ切れていない証拠だ」と指摘した。 ◎「地元での負担検討」/計画延期条件県と共同運営も視野/住田町長 岩手県医療局の新しい経営計画で、無床化対象の地域診療センターを抱える住田町の多田欣一町長は24日、「医療局が計画の4月実施を先延ばしするなら、町が応分の負担をすることも考える」と述べ、県と町による診療センターの共同運営も視野に入れていることを明らかにした。県町村会の要望活動で訪れた県庁で河北新報社の取材に答えた。 多田町長は医師不足が深刻な県立病院経営に関して「われわれも厳しい状況は理解している」と説明。その上で「県との一部事務組合設立まで踏み込むつもりはないが、(診療センター運営で)地元としても財政的、人的に負担することは検討してもいい」と話した。 入院ベッド維持のための夜間診療体制については、地元の開業医が支援する方法などを想定し「(無床化計画を)1年とか2年とか凍結すれば、開業医が夜間当直する場合の問題点なども整理できる」と語った。 ただ県と医療局は無床化の4月実施を進める方針で、多田町長は「このままでは地元が支援する方策を検討する余裕もない」と批判。この日は、町村会として稲葉暉会長(一戸町長)らと達増拓也知事に対し「県民医療の確保・充実に関する決議」を提出した。 無床化の延期などを要望したが、達増知事は「医師不足は危機的状況で、県全体の医療を守るために何とか理解してほしい」と4月実施は変更しない方針を示した。
2009年02月25日水曜日
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